吉村 太一 先生の独自取材記事
よしむら耳鼻咽喉科・内科・呼吸器内科
(藤沢市/辻堂駅)
最終更新日:2025/02/27

神奈川県藤沢市の西部・湘南大庭地区に広がる湘南ライフタウン。最寄り駅である辻堂駅と湘南台駅を結ぶ幹線道路に面したビルの2階にあるのが、1997年に開業した「よしむら耳鼻咽喉科・内科・呼吸器内科」だ。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医である吉村恵理子院長が耳鼻咽喉科診療を、夫で日本呼吸器学会呼吸器専門医の資格を持つ吉村信行副院長が内科・呼吸器内科を診療する。さらに今春から息子の吉村太一先生がチームに加わり、耳鼻咽喉科診療は二診制が整った。「一流開業医をめざしてスタートした両親の変わらぬ姿勢を引き継ぎ、次世代のクリニックとして未来へつなげていきたい」と語る太一先生に、診療への思いや今後の展望を語ってもらった。
(取材日2024年12月4日)
地域に根差したクリニックを未来へとつなげるために
長く地域から親しまれているクリニックだと伺いました。

都内の病院に勤務していた母が、自宅に近いこの場所で開業したのが1997年。通勤時間が短くなることで、僕たち2人の息子と過ごす時間も増えるだろうと開業を決めたらしいのですが、思いのほか多くの方にご来院いただき、勤務医時代よりさらに帰宅時間が遅くなってしまったそうです。忙しく働く母の姿に、少しの寂しさとともに、誇らしさのようなものを感じていたのを覚えています。当初は週に一度、呼吸器内科を専門とする父による内科診療を提供していましたが、2007年の移転拡張前後に徐々にその枠を拡大。現在は耳鼻咽喉科、内科・呼吸器内科ともに午前も午後も診療しています。
そんな医療チームに新たに加わられたのですね。
これまでも単発で診療に当たることはあったのですが、2024年4月から常勤となりました。現在、耳鼻咽喉科は僕と院長、非常勤の先生方で二診制をとっており、その主軸を担っています。医学部を卒業後は藤沢市民病院や横浜市立大学附属病院、茅ヶ崎市立病院、横須賀共済病院など、湘南エリアの病院で臨床に必要な知識と技術を磨いてきました。いずれこのクリニックを継承することはかねてから考えてきたので、このエリアでの強固なつながりをつくることができたのも良い経験だったと思っています。
クリニックの特徴を教えてください。

やはり耳鼻咽喉科と呼吸器内科を併設していることでしょう。開業当初より、少ない時間数ながら呼吸器内科を併設したのは、上気道領域と下気道領域、つまり鼻や喉から気管支まで網羅した治療を提供したいと考えていたからと聞いています。英語で「one airway, one disease」という通り、鼻も気管もひと続きの気道、one airwayです。例えば咳を主訴に受診されるケースにも、副鼻腔炎によるものと喘息によるものがあるように、気道領域を共通点として、耳鼻咽喉科と呼吸器内科で重複する部分も大きいのです。もとは母と父の専門が偶然重なったことで始まった体制ですが、メリットも大きいと考えています。総合病院では両方の診療科を備えていることが多いですが、クリニックでこの2科を診療するケースは多くないのではないでしょうか。
耳鼻咽喉科と呼吸器内科を併設、がんやめまいの診療も
耳鼻咽喉科と呼吸器内科を併設することのメリットは?

呼吸器内科の患者さんは喘息の方が圧倒的に多いのですが、その8割9割は鼻が悪く、鼻炎や副鼻腔炎も合併しています。鼻炎で耳鼻咽喉科に通院している患者さんが呼吸器内科にも来られることも少なくないのです。また、睡眠時無呼吸症候群は太った人に多いというイメージもありますが、これも鼻の悪い人に多い傾向です。例えば肥満気味の鼻炎の方に「いびきはどうですか?」と聞くと、「夜中に呼吸が止まっています」という話がでてくることがあり得ます。そこでスクリーニング検査をして危険水域ということになれば、内科の領域です。このような場合、患者さんからしてみれば、他院に行く手間も負担もありませんから、メリットなのではないでしょうか。検査スペースを挟んだ向こう側に行けば良いだけですから(笑)。
耳鼻科領域のがん診療も経験されたてきたそうですね。
神奈川県立がんセンターの頭頚部外科に勤務し、喉頭がん・咽頭がん・鼻腔がんなどのがん診療に携わってきました。全組織のがんのうち、耳鼻咽喉科領域のがんは5〜10%程度と大変希少です。頭頸部のがんは進行がんで見つかるケースも多く、初期段階でリスクを見逃さずしっかりと捉えることが大切になります。希少ながんだけに、実際の症例を見たことがあるというだけでも、診療において大きな強みになると考えています。飲み込みにくさや声がれ、喉の痛みといった気がかりが続いているようなら、一度状態をお見せいただければと思います。
めまいの診療にも力を入れていらっしゃるとか。

木曜午後に専門の枠を設け、めまい・平衡障害の分野で特に深い知見をお持ちの聖マリアンナ医科大学教授の瀬尾徹先生に診療していただいています。専門の検査機器もそろえており、一般的なクリニックでは原因を追求できなかっためまいの診断にも対応可能です。耳石が動くことで起こる良性発作性頭位めまい症(BPPV)に加え、内耳のむくみによるめまいに悩む方が多いでしょうか。これはいわゆる気象病として若い女性にも多い病態です。南海上に台風が発生すると発症が増え、長年経験していらっしゃる方は天気予報を見て「これは悪くなるな」とわかるようです。原因がわかるだけでも不安が解消でき、安心につながるので、お悩みの方はぜひご相談ください。
所見の診断とQOLにつなげる処置が耳鼻咽喉科の強み
診療の際に心がけていらっしゃることは何ですか。

数多くの患者さんに当たる中で最も大切にしているのは、主訴を治すということです。なぜ来院されたのか、受診するほどの辛さはどこにあるのかを探り、それを解消することで生活の質(QOL)を向上させることこそが役割だと、個人的には考えています。問診がより重要となる内科と異なり、耳鼻咽喉科は所見が勝負なところがあります。とにかく見てみなければわからない、逆に見ることでわかることが多いのです。だからこそ、一見主訴に関係のないところでも、診療の際にはひと通り見るようにしています。所見による診断と、処置で改善を図ることが可能である点は、耳鼻咽喉科の面白さとやりがいの一つだと思っています。
医師を志されたのは、やはりご両親の影響ですか。
強要されたことは一切ないのですが、気づくと自然に医師をめざしていました。幼い頃は忙しい両親に寂しさを感じたこともありましたが、やはり使命を持って診療に取り組んでいる姿に憧れのようなものを感じていたのかもしれません。耳鼻咽喉科を専門に選んだのは母の影響もありますが、診療科自体に面白さを感じたことも理由です。普段意識しないことですが、耳・鼻・喉はすべてつながっていて、それぞれ別の専門性があります。扱う範囲は狭いかもしれませんが、領域としては広く、深い学問があるのです。また、治療によってQOL向上に貢献できるのもやりがいの大きいところです。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

いわゆる世襲2世ではありますが、こうした形で思い入れ深い地域に貢献していけることを心からうれしく思っています。耳鼻咽喉科診療は二診体制が整ったことで、より多くの患者さんに対応でき、長年懸念となってきた待ち時間も解消されてきました。今後は、さらなる仲間を見つけて、クリニックの充実を図っていければと思います。勤務医時代とはまったく違う仕事の量と質に不慣れなこともまだまだありますが、花粉症や喘息といった比較的ライトな疾患に対し、時間をかけず解決策を提案していくことをめざしています。これまで両親が築きあげてきた皆さんとの信頼を未来へとつなげていくよう、頑張っていきたいと思っていますので、お困りのことがあればぜひ気軽に足を運んでみてください。