リラックスした気持ちで通う
体と心に配慮した「不妊治療」
臼井医院
(足立区/亀有駅)
最終更新日:2022/12/28


- 保険診療
出産年齢の高齢化により、年々不妊治療を受ける女性の数は増加しているという。生を授かった時から、限られた数の卵子を体内に持って生まれてくる女性。不妊により自分を責め、思い悩む人や、誰にも相談できないと感じている人は多いようだ。そんな女性たちが、少しでも気楽に相談に来られるクリニックをめざす「臼井医院」の臼井彰院長に、不妊治療の流れを取材した。
(取材日2015年7月8日/更新日2022年11月17日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qどのような状態を「不妊」というのですか?
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A
ご夫婦でタイミングを図っても妊娠の兆候が1年間ないことが不妊であると考える一つの目安です。不妊の原因は人によりさまざまなので、まずは検査でご自身とパートナーのお体の状態を知るところから、治療をスタートします。女性側の原因は子宮内膜症、子宮筋腫、子宮の形が悪いなどの子宮因子の他、卵管障害、排卵障害などがあり、男性側は精子の数や活動量が少ない、精子が作れないといった増精機能に障害があるケースが多いです。男女ともに原因が特定できないこともあります。女性は年齢が上がると妊娠率が下がるといわれていますから、35歳以上で女性の年齢が高い場合は1年を待たずになるべく早い段階で専門の医療機関を受診しましょう。
- Qタイミング療法の期間や費用はどのくらいですか?
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A
療法期間は原則6ヵ月で、保険診療の範囲内で行われますので、特に大きな費用がかかることはありません。医師が予測した排卵日に合わせて性交渉をしていただく治療で、これは1回でその日を狙うというものではなく、月経が終わった数日後には2日に1回行うようにするなど、回数を増やす必要があります。タイミング療法で大切なのはご夫婦で協力し合うことです。ただ、治療にいらっしゃる方の多くは、すでにご家庭でタイミングを図ってきた方ばかり。妊娠の兆候がなかった場合は、治療段階を上げ、人工授精へステップアップしていきます。
- Q排卵誘発剤は必ず使われるのでしょうか?
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A
通常どおりの排卵がある方に、排卵誘発剤を使うことはありません。誘発剤は卵巣の中の卵を刺激するので、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になるリスクが伴うからです。卵巣過剰刺激症候群になると、卵巣が膨れ上がり、卵巣の血管からしみ出した水分がおなかにたまります。これにより血管内で水分が不足するので血栓ができやすくなり、重症化すれば脳梗塞や心筋梗塞などに至る場合も。また、自然排卵周期での排卵は1つですが、誘発剤は多くの排卵を促すことから多胎妊娠の確率も上がるといわれています。こうしたリスクを避けるため、当院ではできるだけ薬は使わない方針を取り、自然排卵周期を利用した不妊治療に努めています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1考えられる不妊要因を探るための問診・検査を受ける
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初診時は医師による丁寧な問診を受け、その後甲状腺機能、乳汁分泌ホルモン検査のための採血へ。必要に応じて、卵管が詰まる原因となるクラミジアの検査をすることもある。後日、生理が来てから3~5日目のタイミングで卵巣機能検査など各種ホルモン検査を受ける。男性はなるべく早い時期に精子検査をすることが推奨される。
- 2子宮卵管造影検査で卵管の通過性をチェック
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卵子と精子が出合う通り道である卵管の状態を確認する検査で、月経後・排卵前に実施。出産経験の有無に関わらず行われる。医師が子宮内に造影剤を注入し、エックス線検査または超音波検査で卵管や子宮の形、卵管周辺の癒着や詰まりがないかなどをチェック。所要時間は10分程度で、同院では結果について映像をモニターに映して詳しく説明している。検査時には痛みを感じにくいように配慮も欠かさないという。
- 3体外受精をはじめる前の周期に検査を実施
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血液検査で数値を測り、治療方針を決める大切な指標となる卵巣の反応性を確認。卵巣年齢は実年齢とは関係なく個人差が大きいため、結果次第では医師が早めに体外受精に移る提案をすることもあるそうだ。費用は、すぐに体外受精に進む場合には保険診療で行われる。
- 4排卵日のチェックをし、治療方針を決める
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排卵に合わせて治療を進める不妊治療において、排卵日の推定は最も重要とされている工程の一つ。卵胞は排卵が近づくと大きくなる特徴があるため、検査では医師が超音波を用いて卵胞の成長度を確認する。必要に応じて卵巣から分泌されるホルモンの値を測定する血液検査を併用しながら、排卵日を推定。検査に問題がなければ、タイミング療法からスタートとなる。
- 5治療の段階を進める前に、ヒューナーテストを行う
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精子の活動力を調べるテスト。性交後4〜12時間での受診が必須で、子宮頸管に入った精子の数や、何%の精子が活発に動いているかを確認する。その結果が今後、「体外受精」と「人工授精」のどちらに移るかを見分ける目安になるという。活動力に問題がある場合は人工授精へ。状況に応じて早めに体外受精に移行することもある。同院では適切なタイミングを見極めた上で段階的に高度な治療へシフトし、1年以内の妊娠をめざす。