川上 知孝 院長の独自取材記事
小見川診療所
(香取市/水郷駅)
最終更新日:2024/07/05
利根川近く、千葉県と茨城県の県境付近ののどかな住宅地にあるのが「小見川診療所」だ。2023年4月から川上知孝院長が同院を継承し、地域住民の「医療の窓口」として、総合的な内科診療や消化器内科を中心とした幅広い疾患や健康相談、香取市の特定健診やワクチン接種などに対応している。「『この程度の症状で相談していいの?』『本当に服薬って必要なの?』といった些細な不安や疑問などであっても、何でも気軽にご相談ください。その積み重ねが、心筋梗塞や心不全などの大きな疾患を防ぎ、健康で長くいられることにつながりますから」と真摯に、かつ温かい雰囲気で院長は語る。そんな院長に同院の診療スタンスや、地域患者への熱い想いを、余すところなく語ってもらった。
(取材日2024年6月7日)
地域住民の医療の窓口として、あらゆる声に耳を傾ける
地域密着型のクリニックとして幅広い症状に対応されているそうですね。
もともと勤務医の頃は内科の救急科外来も含め、消化器疾患や内科領域全般を診てきました。内視鏡検査は数多くの件数を担当し、消化器がんの治療などにも関わってきました。また、私が勤務していた大学では多くの内科疾患を学べる環境が整っていたのです。そのような環境で研鑽を積んだことに加え、当院の周辺にクリニックが多くはないこともあって、患者さまから連絡をいただいたら極力お断りしないように心がけています。そして、まずは自分で診察をし、緊急性が高いか、私自身が対応可能な範囲かどうかなどをある程度見極めるようにしています。もちろん中には心筋梗塞や心不全、重度の肺炎といった、専門性や緊急性が高い疾患の方もいらっしゃいますから、そういう場合は専門の医師や医療機関へ迅速に紹介させていただきます。
2023年4月にクリニックを引き継がれたとか。
残念ながら前任の先生とは一緒に診察ができず、十分な引き継ぎもかなわなかったため、患者さまにご迷惑をおかけしたかと思います。そんな中でもスタッフは全員以前から勤務している職員なので、患者さまも安心でしたでしょうし、私もかなり助けられました。前院長は泌尿器科や皮膚科、小児科なども診療していたようですので、私もできる限り、以前のご相談の内容などを踏まえながら対応していきたいと考えています。それと、やはり多いのは生活習慣病を抱えておられる世代ですね。生活習慣病は継続的な診察・治療が大切ですから、地域の皆さんが安心、信頼して通院していただけるように今後も努めていきたいと考えています。
地域の皆さんの「医療の窓口」になりたいとお考えなのですね。
開業医の大きな役割の一つに「医療の窓口」があると考えています。ですから、今抱えておられる生活習慣病や内科的な風邪などの内科疾患の他に、年齢を重ねたことによる腰痛や、農作業時に転んで腕をけがしたなどのご相談にも、対応したいと思います。患者さまにお伝えしたいのは、お一人で抱えこまないでほしい、ということ。気軽に、生活のこと、内科以外の「トイレが近い」「最近なかなか寝つけない」など気になる症状のこと、健康診断、特定健診のこと、ウェブで見かけて気になっている医療の情報など、何でもご相談いただけるような存在をめざしています。
患者の変化を見逃さず、納得の上で治療を進めていく
診療時間も延長されたとか。
平日は19時まで、土曜日は16時まで、第4土曜のみ13時まで受付、診療をしています。お仕事が終わって帰宅していると、すぐに18時くらいにはなってしまいますし、近隣を含めてこの周辺には遅くまで開けているクリニックはあまりありません。そうなると必然的に病院の夜間の外来に行くことになるわけですが、ここからだと片道50分から1時間ほどかかってしまうんです。でも病院もまた混んでいて……というのが現状ですから、それならば当院が時間を延長することで、患者さま・病院両方の負担を少しでも減らすことができれば、と考えました。
診療で大切にされていることは何でしょうか?
丁寧な診察を行い、患者さまのちょっとした変化を見逃さないようにすることですね。定期的に来てくださっている患者さまで「この方は不整脈はなかったはずだけど、どうして今はあるの?」と私が気づければ、大きな疾患につながってしまう前に対処できるかもしれませんよね。特に生活習慣病の症状は、患者さまご自身は自覚しづらいものばかりです。だからこそ定期的な通院による診察や検査を通じて、早期発見・早期治療につながるようにすることが大切だと考えています。このように、定期的な通院を意識していただきたいという考えもあり、予約制を導入いたしました。
患者さまが定期的に通院しやすくなりますね。
それに加えて、もし予約の時間にいらっしゃらなかったとしたら、「どうされましたか?」とこちらからお電話できます。そこで「畑仕事が忙しくてたまたま忘れていた」とお返事があれば「明日は来られますか?」と私たちも安心できますし、「体調が悪くて行けなかった」ということであれば、それはどうにかして診察を行うべきだと判断ができます。やはり診療も人と人とのやりとりですから、結局は患者さまとの対話が重要なのだと考えます。予約制を導入しているにもかかわらず、予約時間にお呼びできずご迷惑をおかけしておりますが、なぜ特定健診を受ける必要があるのか、なぜ服薬の必要があるのか、なぜこの日程で通院が必要なのか。他にも患者さまは言いたいことがたくさんおありでしょう。そのお気持ちやお言葉もしっかりと受け止め、その上で私も患者さまも納得できる医療を提供したいのです。
心身ともに健康で長生きしてほしいという想いとともに
患者さまの想いをたくさんお聞きしたいとお考えなのですね。
何でも話しやすい、敷居の低い環境にしたいと常々考えていますし、それがやはり病気の早期発見・早期治療につながると思います。私たち医師のように専門家ではないのですから、患者さまが正確で最新の医学的知識を持っていないことは当たり前です。だからこそ私たちは正しい、医学的根拠のある情報をお伝えしなくてはいけませんし、患者さまの疑問はすべて受け止められる環境をつくっておくべきだと思います。私の専門は総合的な内科領域と消化器内科ですが、ちょっとした不眠の不安など、心の面でもサポートしていきたい。心身ともに健康で、長生きしていただきたいというのが、私の根底にある思いです。
健康診断のほか、予防接種にも対応されているそうですね。
当院では血液検査、尿検査、心電図、腹部エコー検査、エックス線検査、骨密度測定などの検査が可能で、香取市の特定健診も行ってます。ワクチン接種ではインフルエンザワクチン、子宮頸がんワクチン、帯状疱疹ワクチンなど、BCGワクチン以外の接種を行っています。最近では「子宮頸がんワクチンを受けさせたいので、次回、娘を連れてきていいでしょうか?」という相談もあったりして、すごくうれしいんですよ。子宮頸がんワクチンの定期接種は小学6年生から高校1年生が対象ですから、まずはぜひ相談に来てほしいですね。帯状疱疹もワクチンを打っておけば発症しにくくなること、もしくは発症しても軽く済むことが期待できるのですが、接種せずに発症し、ずっと痛みと戦っている方を見ると心が痛んでなりませんでした。特定健診や生活習慣病だけではなく、ワクチン接種も、当院から積極的に発信していく必要があると考えています。
最後に、今後の展望や患者さまへのメッセージをお願いします。
何でも気軽に相談できる場所をめざしていきたいと考えていますが、そのためには皆さんのご意見やちょっとしたご希望を伺うことなども必要なのではないかと思います。今課題に感じているのが、通院のしづらさです。このエリアは車社会で、年配の方だとご家族の送迎も必要なのですが、そうするとますます通院から遠ざかってしまうことになりかねません。その解決策がないか模索中です。気軽に何でも相談できる、そういう場所をつくっていきますので、「本当にこんなことで受診していいの?」と迷うような段階だからこそぜひ遠慮なく受診してください。それが間違いなく、患者さまご自身や、患者さまのご家族の命を救うことにつながると思いますから。