安藤 広幸 院長の独自取材記事
安藤クリニック
(多治見市/多治見駅)
最終更新日:2024/04/08
多治見市土岐川沿いの穏やかな風景の中にある「安藤クリニック」。4代目の安藤広幸院長は名古屋大学医学部の出身。同院は明治時代に院長の曽祖父が同県旧岩村町(現・恵那市岩村町)に開院し、祖父の代に現在地へ移転してきた。県外からも老若男女問わず受診する、歴史あるかかりつけ医だ。一番の特徴は県内でも数少ない「肛門外科」を標榜し、お尻のトラブルを改善に導いていること。また、多様な相談を受け入れる一般内科診療、専門家による内視鏡検査に注力する消化器内科診療も実施しており、肛門外科で異変が見つかれば、同院で大腸内視鏡検査をノンストップで受けることもできるという。ちゃめっ気のある笑顔が印象的な院長に、肛門外科を受診するメリットや内科・消化器内科診療についてまで詳しく聞いた。
(取材日2018年8月22日)
明治時代から4代続く町のかかりつけ医
先生は4代目院長だと伺いました。
はい。現在の恵那市にあたる岩村町に初代が開設し、2代目の祖父の時に多治見市に出てきたんです。僕が大学を卒業した1985年に今の建物になりました。以前の建物は、看護師と医師の家族が一体になっているような感じでしたね。昔の商人の家は、番頭さんも家の一員みたいに近い存在でしたが、それと同じ感じです。自宅と医院が隣り合い、僕が小さい時などはちょっと熱を出すと、母に「お父さんのところで注射打ってもらっておいで」と言われ、歩いて注射を打ってもらいに行ったことも。当たり前のように白衣姿の祖父や父を見て育ち、医療が常に身近にありましたから、気がつけば僕も医師になっていました。
規模も大きいですが、スタッフは何人おられるのですか?
内科、消化器内科、肛門外科を標榜しており、医師、看護師、受付などを含めて21人です。多いといわれるのですが、1985年の移転時は今よりも大きく、40床ある病院だったんです。2000年頃に病床19床の医院となったので、かつてよりスタッフが少なくなったのですが、入院設備があるということは夜勤スタッフも必要ですから、医院にしたらかなり多い人数だと思います。特に僕が何も言わなくても自ら動いてくれるベテランぞろいで、助けられていますね。本当に感謝しています。ちなみに事務長と僕以外は全員女性です。
どんな患者さんが来られるのですか?
肛門外科という少々特殊な科があるので、長野県の南木曽や、岐阜県内でも下呂などの遠い地域からも来られます。年齢は1歳から99歳まで。最近は、1~2歳の子の便秘が多いですね。それから小学生くらいでも週に2回くらいしか出ないという子も。うんちが出なくて切れ痔のひどいお子さんは実は多いです。朝食抜きなど、やはり食生活に問題があるのかもしれません。ダイエットしている女性からも痔の相談を受けることもあります。食べる量が少なく、便のボリュームがないと蠕動(ぜんどう)運動が止まってしまうのですが、それで便秘になって排便時に肛門に負担がかかり、痔になるのです。するとうんちをしたくないからとより食べなくなり、ますます便秘になるという悪循環になってしまうので、注意が必要です。それから当院は内科・消化器内科も診ていますので、痔の相談で来たのをきっかけに、内科にかかる方、内視鏡検査を受ける方もいらっしゃいます。
お尻の診察から大腸内視鏡検査への移行もスムーズ
こちらの内科、消化器内科診療についても教えてください。
一般内科の診療日は月・金の午前。風邪や花粉症、インフルエンザ、糖尿病などの生活習慣病の他、頭痛や吐き気、めまいなどさまざまなお悩みに対応しています。皆さんの全身の健康を守りたいという想いでいますので、些細な症状でもご相談いただきたいですね。消化器内科診療については、胃と大腸の内視鏡検査に注力しています。検査の実施日は月・木・金・土。当院には病院で20年近く技術を磨いてきた内視鏡の専門家がいますので、負担の少ない精密な検査を受けていただくことができます。また、肛門外科を受診された方に異常が見つかった際に、ノンストップで大腸内視鏡検査を行えるのも当院の強みでしょう。肛門外科・消化器内科がそろうからこその、スピード感ある対応で病気の早期発見につなげます。
それは頼もしいですね。ただ、女性など肛門外科の受診に抵抗感がある人もいるのではないですか?
当院に関して言うと肛門外科の患者層に男女差はないか、女性が少し多いくらい。痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)は産後になりやすいことも関連して女性のほうがやや多く、痔ろう(あな痔)は3対1程度で男性によく見られる印象です。ですが全般的な傾向としては、抵抗感のためか受診が遅くなる方、また、お尻から少しでも出血があるとがんなどの「大腸の病気」を心配され、大腸内視鏡検査のほうを肛門の診察より先に頭に浮かべる方が多いように感じます。ただ、自治体の大腸がん検診で毎年便潜血が陽性となる原因には、痔による出血が多く含まれているんです。つまり出血の不安から解放されるには、痔の治療が必要かもしれないのですね。痔の治療後に便潜血検査陽性となれば、それこそ、当院の大腸内視鏡検査の出番。肛門外科を出血の原因を効率良く精査するための入り口として、気軽にご利用いただければと思っています。
多くの人は痔の診療の内容を知らないので、怖がってしまう面もありそうです。
痔の治療は決して怖いものではありません。お尻を診るのも、大腸の検査でも実は取ってもらう姿勢は同じなので、実際には抵抗感もそこまで大きくないと思います。ただ、術後はやはり痛いです。経験した人はわかると思うのですが、ちょっとした切れ痔でもシャワーの水が当たったりするとすごく痛いでしょう? ですので、手術創があれば痛くないといえばうそになります。しかし中には、外に飛び出した痔核をその都度トイレで押し戻すのを何十年も続けている人もおられるわけで、それなら早く手術するべきだと思います。手術後は、「術後晩期出血」のリスクがあったり、うんちで傷が不潔になったりすることもありますから、1週間くらい入院していただくのが望ましいです。ただ、仕事や家のことなど個々のご事情もあると思うので、それらを踏まえて入院日数は適宜調整します。
痔はポピュラーな病気。重症になる前の受診が大切
痔は他の病気と比べて重要視されていない印象もありますね。
がんについては皆さん重要視されますが、痔も生活に支障を来す病気です。今は若くともひどい痔の方が結構おられます。例えば、狭義の痔核ではないのだけど、肛門ポリープ、できる場所によって見張りイボとも呼ばれるものがあります。切れ痔が切れ続けることでその近辺に形成されるポリープなんですが、ひどいとゴルフボールに近い大きさになって、それが出たり入ったりしてすごく痛い。そういう症状で苦労している人が、実はいっぱいいるのです。肛門外科へ来れば、スムーズに治療が進められます。解決方法がわからず、やみくもに時間を費やしている人が大勢いると思うと、そういう人に肛門ポリープの存在を啓発する方法を考えなければいけないと感じています。
医院ホームページで「お尻の症状」セルフチェックができるとか。
専門の方と協力して作ったもので、選択肢形式で答えていくと疑いがある病名が出てきます。あくまでも受診の目安になる程度ですが、肛門外科に来る心理的ハードルが下がり、スムーズな来院につながればと考えて用意しました。受診するかどうかの判断は、患者さんのお気持ちに委ねるしかないのですが、勇気を出して手術を受ければ、「こんなことならもっと早く来れば良かった」と感じる方はきっと少なくないと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
よくぞここまで我慢したというくらいまで痔を放置されている方が、残念ながら驚くほどおられます。近隣地域にお住まいなのに長年受診されず、重症化してから来られる方もいらっしゃいます。近くにいて救えないのは本当に残念です。年齢性別の別なく、痔は決して特殊でも恥ずかしい病気でもありません。程度の差はあれ、日本人の10人中8~9人が痔といわれるほどです。受診の目安として、軽度なら市販薬で対処できる場合もありますが、市販薬を2、3日使用しても改善の兆しがまったくなかったら、ましてや排便の度に押し戻すようなレベルになっているのなら、ぜひお越しください。また当院には肛門外科だけでなく内科、消化器内科もありますので、お尻のトラブルに限らず、皆さんの体に違和感があるときの相談窓口としてご利用いただければうれしく思います。