鼠径ヘルニアを正しく理解
自分に適した治療法を選択しよう
東京デイサージェリークリニック
(中央区/東京駅)
最終更新日:2024/05/15
- 保険診療
「脱腸」の俗称で呼ばれることも多い「鼠径ヘルニア」。子どもや高齢者が患う病気という認識はあるが、そもそもどのような症状があるのか、原因は何なのか、そして、どのような治療法があるのかはあまり知られていない。日帰り手術専門クリニックとして、これまで数多くの手術を手がけてきた「東京デイサージェリークリニック」の柳健(やなぎ・けん)院長は、「鼠径ヘルニアは病気ではありますが、良性疾患ですので早期に治療を行えば何も恐れることはありません」と話す。同院を開院した2014年以来、日々多くの鼠径ヘルニア日帰り手術を実施してきた柳院長に、鼠径ヘルニアの原因と症状、治療の選択肢について詳しく聞いた。
(取材日2024年4月18日)
目次
鼠径ヘルニアとはどんな病気なのか。原因や症状を正しく理解し自分に合った治療法を選択
- Qそもそも鼠径ヘルニアとはどのような病気なのですか?
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A
鼠径ヘルニアは、おなかの筋肉の弱いところから腸が腹膜とともに皮膚の内側に出てしまう病気です。その筋肉の弱いところ、つまり外に出るところが鼠径(そけい)部と呼ばれるため鼠径ヘルニアといいます。女性よりも男性のほうが鼠径部が弱い人が多いため男性に多い病気です。小児の場合、生まれつきの原因で発症し、成人では、加齢で筋肉が緩んでくる中年以降に多く見られます。成人の発症には腹圧が関係しているため、調理師さんや美容師さんなど、立ち仕事や重い物を持つ仕事に就いている人は、日常的に腹圧がかかりやすく発症のリスクが高くなります。自然に治ることはなく、外科手術以外で治療することはできません。
- Q鼠径ヘルニアの症状と放置するリスクを教えてください。
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A
鼠径ヘルニアの症状として、下腹部やももの付け根に膨らみがあるが、仰向けになったり押したりすると膨らみが戻る。おなかに力を入れたときに下腹部が痛む、長時間立っていると下腹部に違和感が出てくるなどが挙げられます。便秘やくしゃみ、咳など瞬間的に腹圧がかかることも関係していて、花粉症でくしゃみを繰り返すうちに腹圧がかかり鼠径部が弱くなることも原因の一つになります。進行すると腸が締めつけられ、腸の一部がおなかの中に戻らなくなる腸閉塞(嵌頓:かんとん)を起こし、緊急手術が必要になることもあります。痛みや膨らみを自覚したり、違和感があったりしたら、放置せず早めに受診することをお勧めします。
- Q治療方法にはどのような選択肢があるのでしょう?
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A
腸をおなかの中に戻し、メッシュという網目状の人工の膜で穴を塞ぎます。手術法には、足の付け根を2cmほど切開して行う前方切開手術と腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術にはTAPP法とTEP法という2種類の術式があり、TAPP法は腹膜の中に内視鏡と鉗子を入れ、中を直接確認しながら穴を塞ぎます。一方、TEP法は筋肉と腹膜の間を剥がして鼠径ヘルニアの穴まで腹腔鏡と鉗子を入れ、メッシュで穴を閉鎖しますので安全性がより望める手術です。前方切開法は手術時間が短く、高齢者やほかの疾患がある人を含めほとんどすべての鼠径ヘルニアに適応します。腹腔鏡手術は、痛みが少なく術後の早期回復が期待できるという利点があります。
- Qこちらのクリニックで行う日帰り手術の特徴を教えてください。
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A
日帰り手術のメリットは、仕事や家事を長く休まなくていいということでしょう。術後の痛みが少なく、早く日常生活に戻ることが期待できますし、入院を恐れて病院を避けていた人も気軽に受診しやすいのではないでしょうか。日帰り手術は経済的な負担も少なく、1週間入院する場合の3分の1程度の医療費で済むことがほとんどです。当院では、患者さんの心と体に極力負担をかけないよう、低侵襲の手術法を採用。完全予約制で、院内は個室を設けてプライバシーに配慮した動線にするなど、安心して診療を受けていただける環境づくりに力を入れています。また、オンラインの相談窓口を設け、遠方の方や受診を迷っている方に活用していただいています。