新垣 美郁代 院長の独自取材記事
新垣内科外科クリニック
(多摩市/多摩センター駅)
最終更新日:2025/06/23

多摩モノレール多摩センター駅から徒歩約5分。ビル3階にある「新垣内科外科クリニック」は先代の院長の時代から30年以上にわたり地域医療に貢献してきた。現在は2代目院長の新垣美郁代(あらがき・みかよ)先生が、専門とする消化器疾患をはじめ内科一般、外科、リハビリテーションなどに対応し、地域の人々の健康を支えるために努めている。経鼻内視鏡検査や超音波検査などにも対応。「学校の保健室のような気軽に立ち寄れるクリニックをめざしています」と優しい笑顔で話す新垣院長に、同院のことや長年住む多摩地域への思いなどについて話を聞いた。
(取材日2025年3月10日)
体のどのようなことでも、気軽に相談できるクリニック
先生は多摩市出身だと伺いました。

小学4年生の時から多摩市に住んでいます。2009年に父からクリニックを引き継ぎましたが、自分の育った街の身近なかかりつけ医として、地域の皆さんの健康をサポートしていきたいと思っています。昔は団地が多かったこの周辺にも、最近は新しいマンションが続々と建って、若いファミリー層も増えました。娯楽施設や会社も増えて、駅周辺も随分とにぎやかになりましたね。一方で、少し駅から離れると、昔はにぎわっていた商店街が閑散としていて、買い物に不自由な思いをされている高齢者もたくさんいるんですね。エレベーターのない団地の5階に住む高齢者もいて、丘陵地なので坂が多くて元気ではない人は出かけにくいという問題もあります。私は、長くこの地域に住んでいるからこそ理解しているそのような問題も意識して、皆さんに寄り添っていきたいと思っています。
幅広く診療されていますね。
専門の消化器疾患はもちろん風邪、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病といった内科一般に対応しています。やけどや打撲、捻挫、ちょっとした外傷の外科処置や、頸椎症、腰椎症、変形性膝関節症などの慢性疼痛には、けん引や低周波治療、マッサージなど、筋肉の緊張の緩和や血流の促進を図り、痛みの緩和をめざすリハビリテーションも提供しています。胃の内視鏡検査や超音波検査、エックス線撮影にも対応していて、いつもの生活習慣病で受診した時に、「ちょっと体が痛いのでそれも診てほしい」というように、1回の診察で複数の症状や悩みに対応できるのも当院の特徴の一つです。ほかに、訪問診療も行っています。
どのような訴えの患者さんが多いのでしょうか?

消化器の症状で受診する患者さんが多いですね。中でも最近増えていると感じるのは、過敏性腸症候群や機能性胃腸症です。これらの病気には処方薬もありますが、それを飲みさえすれば必ず改善に向かうわけではありません。薬を処方するかしないかといったさじ加減が重要です。その症状だけに対してたくさんの薬を出すのも良くありませんから、症状に合わせて薬の量を調整することも心がけています。また、当院では経鼻による胃の内視鏡検査も行っています。経鼻内視鏡は、鼻から細いファイバースコープを入れるので検査時の苦痛軽減が期待できます。慢性鼻炎の患者さんや鼻腔が狭い方などには、口からの検査にも対応しています。
患者の話をよく聞くことを大切に
他に力を入れていることはありますか?

訪問診療にも力を入れています。訪問診療に限りませんが、私は医師だから病気を診ないといけないのでしょうけど、それ以前に人が好きなんです。その人の生活やご家族にも興味があるんです。それに、同じ高血圧症や廃用症候群であっても、そのバックグラウンドはさまざまですので、そんなところも気にかけることを大切にしています。それと、できないことを頑張ってくださいと伝えても、できないことはできませんよね。いくら正しいことでも、世の中には頑張ることに疲れてしまっている人もいます。私は、そのような人間の完璧でないところも好きですし、それを含めてその人の生きざまだと思っています。脱力系の診療かもしれませんが、患者さんの精一杯を受け止めることも大切にしています。訪問診療は、自分で通院できない方は利用できますし、自宅で体調が悪くなったときの相談先にもなりますので、対象になる方はぜひ利用を検討していただきたいと思います。
診療の際に心がけていることを教えてください。
言いたいことや伝えたいことをたくさん抱えている患者さんもいますので、意識して話に耳を傾けるようにしています。特に、消化器疾患はストレスが関係していることもありますし、どこかに話せる場所があることが、患者さんの安心のよりどころになるのかもしれません。それによって私ができることはごく限られていますが、話を聞くことは大事だと思いますし、「先生に話したら楽になった」と言ってもらえたらうれしいです。もう一つ心がけているのは、病気に直接関係なくても、ご家族に関する話はカルテに残しておくことです。患者さんは自分のことだけでなく、家族の悩みも話してくれることが多いので、後日「あの件はもう落ち着きましたか?」と聞くようにもしています。友人から相談を受けていた件がどうなったか気になるのと同じ感覚で、患者さんにも接しています。
最近、気になっていることがあるそうですね。

ACP(アドバンス・ケア・プランニング)がありますが、言葉だけが一人歩きしている部分もありますよね。一般的には、「病気や介護が必要になったときのことを前もって話し合い、文章にしておきましょう」と言われますが、本来の目的はそれだけではありません。例えば、一緒にテレビを見ているときに「私はここまではしなくて良い」という一言が、その人の希望を最も的確に表していることもあります。また、高齢だからといって、すべての治療を拒否しなければならないわけではありません。回復の見込みがある治療は受けつつ、人工呼吸器が必要になったときにどうしたいのかという話です。それに、ACPは一度決めたら変更できないものではありません。大切なのは、「周りがこう言うから」ではなく、「自分はこうしたい」という気持ちを伝えること。この基本を忘れないようにしていただきたいですね。
街を診るかかりつけ医をめざして
オンライン予約を導入したそうですね。

オンライン予約を導入したのは、待ち時間の偏りを解消するためです。特に、午前9時前には患者さんが集中し、長時間待つケースが発生していました。一方、10時半以降は比較的空いているため、この時間帯に予約枠を設けることで、混雑の分散を図りました。これまでどおり予約なしで直接来ていただいても構いませんし、スマートフォンの操作が苦手な方などには、医院側で予約を取る対応も行っています。長時間待ちたくない人などは、オンライン予約を活用してほしいと思います。また、最近スタッフが増えたこともあって、診察を効率化して、患者さんの待ち時間を減らすことにも努めています。
話は変わりますが、先生はなぜ医師を志したのですか?
実は、医学部に入る前にアメリカの大学で心理学を勉強していたんです。帰国後は臨床心理士の仕事に就きたいと考えていたのですが、当時は環境的に難しかったんですね。そのため、人と関われるのであれば医学部もありかなと思うようになり、医師の道に進みました。専門を消化器にしたのは、胃痛や腹痛は多くの人が経験のある症状で、患者さんの気持ちをよく理解できるような気がしたからです。また、消化器は検査で異常がなくても下痢や便秘などを繰り返す過敏性腸症候群など、精神的な面と密接な関係がある疾患も多いところにも興味が湧きました。患者さんはこう言っているけど、本当は違う思いがあるのかもしれないなど推察しながら診療にあたるという意味では、心理学を学んだ経験が生かされているかもしれませんね。
最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

これからも、かかりつけ医として家族ぐるみ、そして街ぐるみで診ることを大切にしていきたいです。家族のお話を聞くというのもその一つで、病気という患者さんの一部分だけでなく、その人そのものに関わっていきたいと思っています。そして、当院のコンセプトは「学校の保健室」。気軽にいつでも立ち寄れるクリニックになれたらうれしいですし、大きな病院で検査を受けることが患者さんの安心につながるのなら、そうすることも私の大事な役割だと考えています。患者さんの状態に合わせて、多摩南部地域病院や多摩丘陵病院、日本医科大学多摩永山病院などにも紹介できますので、どの診療科にかかれば良いのかわからない時や、体にちょっと気になることがある場合などには、いつでもご相談ください。