渡辺 敏樹 院長の独自取材記事
ワタナベ眼科
(多摩市/聖蹟桜ヶ丘駅)
最終更新日:2024/06/18

聖蹟桜ヶ丘駅西口を出てすぐのショッピングモールの5階にある「ワタナベ眼科」。ドアを開けると広々とした待合室があり、検査室、診察室ともに十分なスペースを確保していて、ゆったりと過ごすことができる。院長の渡辺敏樹先生は2001年に開業して以来、近隣住民の目の健康を守ってきた。眼科一般の診療を幅広く行っているが、専門としているのは神経眼科だ。杏林大学医学部付属病院の杏林アイセンターで研鑽を積み、現在も非常勤で神経眼科の外来を担当している。先端的な医療の現場に携わりながらも、物腰はあくまでもやわらかく、取材陣の意図をくもうと優しく歩み寄り一つ一つ丁寧に答える姿に、日頃の診察スタイルが垣間見えた。どんな時に神経眼科を訪ねたらいいのか、診療で大切にしていることは何かなど詳しく聞いた。
(取材日2024年3月18日)
幅広い診療をしながら神経眼科にも強みを持つ
まず、クリニックの特色を教えていただけますか?

地域のクリニックとして結膜炎やアレルギーはもちろん、緑内障、白内障、糖尿病網膜症などの一般的な眼科疾患を多岐にわたって診ています。中でも日本人の失明原因の第1位である緑内障は自覚症状がないため、ドライアイなどの別のお悩みでいらして判明する例も少なくありません。だからこそ、小さなお困り事でも気軽にお立ち寄りいただければと思っています。特に「よくわからないけど目の調子が悪い」という時こそ遠慮せずに来てください。「眼底検査で異常はなかったのに見えにくい」「脳神経外科でも異常なしと言われた」というような時は、神経眼科領域の病気である可能性もあります。
神経眼科疾患にはどのようなものがありますか?
大きく分けて眼球運動障害と視神経の病気があります。眼球運動障害では目の位置がずれて斜視になるため、「物が二重に見える」といった症状が出ることがあります。原因は脳神経、目の周囲にある外眼筋、または脳神経と外眼筋の間にある神経筋接合部などさまざまなため、どこに原因があるかを鑑別しながら診療を進めていきます。一方、視神経の疾患で一番多いのは視神経炎です。 こちらも、脳腫瘍や副鼻腔の病変による視神経への圧迫ではないのか、多発性硬化症や視神経脊髄炎の一症状として出ているのではないかなど、多角的に考察して判断する必要があります。珍しいですが、目の奥の血管の炎症を迅速に抑えなくては失明に至る巨細胞性動脈炎のような症例などもあります。
神経眼科という分野はあまり聞きなじみがありません。

そうですね。脳神経外科、脳神経内科、膠原病内科などで診る疾患の知識も必要で、MRIの読影もある程度できなければいけないなど、眼科の中ではかなり特殊です。専門としている医師の数も少なく、マニアックな分野といえるでしょう。患者さんもたくさんいるわけではありませんが、どの診療科を訪ねても解決しない「医療流民」になりがちなのが神経眼科疾患の特徴です。大学病院を訪ねようにも、神経眼科の外来がある大学病院は多くありません。神経眼科では眼科的な検査だけで診断に至る疾患は少なく、MRIも含めてさまざまな検査を行い、病気の原因がどこにあるのか、諦めずに解き明かしていく根気は必要だと思います。私はこれまで神経眼科の患者さんを数多く診察してきた経験があり、そもそも大学病院での治療が必要かどうかといったことから診断いたしますので、ご相談ください。
患者の立場を忘れずに、寄り添ったコミュニケーション
先生が医師をめざした理由やご経歴をお聞かせください。

父が麻酔科の医師で、医療の現場は常に身近でした。眼科を選んだのは手術に興味があったからで、最初は網膜剥離などの眼底の病気の手術に実績がある教授のもとで研修を受けました。ところが、医師3年目に自分自身が病気になってしまいました。しばらく静養が必要でしたが、日中は次から次へと患者さんと接し、夜は当直を頻繁にこなすという、それまでの慌ただしい日々を見直すきっかけにもなりましたね。幸い病は克服しましたが、体力的な負担も考慮して神経眼科を専門とすることに決めました。そこで、かけがえのない恩師と出会うことができたのは、何よりの幸運だったと思っています。
恩師のどのようなところに感銘を受けたのですか?
何よりも、患者さん一人ひとりとじっくりコミュニケーションしている姿が、これまで多忙を極める現場にいた身としてはとても新鮮でした。そんな診療スタイルにまず魅了されましたし、「自分もそうありたい」と思いました。さらに、先生は芸術にも造詣が深く、著作もあって、先生の若い頃の当直日誌も文学的であったと聞いています(笑)。仕事と趣味の両面において充実した生活を送り、人生を謳歌している先生の姿を目にし、このような生き方もまた素晴らしいと感じました。先生の域にはまだまだ及びませんが、そういった人生の豊かさは患者さんと向き合う時にも役立ちますから。
患者さんと接するとき、どんなことを大事にしていますか?

まず、患者さんの話をよく聞いて、何を訴えているのか間違いなく理解し、できるだけわかりやすく説明するようにしています。といっても患者さんの時間を無駄にはできませんから、結膜炎やものもらいなど比較的診断に迷うことが少ない疾患はできるだけスピーディーに対応するようにしています。ただ、どうしてもたっぷり時間をかけて慎重にやりとりする必要がある例もあります。今も非常勤として勤務している大学病院では難病を告知することも少なくありません。そんな時は、患者さんの気持ちに寄り添い、十分配慮するようにしています。20代で大病をしたことで早期発見の大切さも身にしみていますので、不安な気持ちも他人事ではありません。
大学病院や他科クリニックとも連携し地域の目を守る
今後の展望についてお話しください。

これまでと同じように地域の方々のために尽力し、手術以外の幅広い眼科診療を提供していきたいと思っています。もし、手術が必要となったら専門としているクリニックや大学病院を紹介することも可能です。また、腫瘍などで目が見えにくくなる圧迫性視神経症などは脳神経外科や耳鼻咽喉科、ヘルペスウイルスによる帯状疱疹などは皮膚科との連携も欠かせません。目とは関係していなくても、患者さんが心身のどこかに痛みや不調を抱えているならば、整形外科や内科を紹介することもあります。医師会のネットワークも生かして、さまざまな病院やクリニックと連携してのチーム医療も強化していきたいですね。
お忙しい毎日かと思いますが、休日はどうお過ごしですか?
休日は妻と一緒に美術館巡りを楽しんでいます。ギリシャ神話を題材にした絵画やキリスト教の宗教画が好きです。中学‧高校とカトリック系の学校で過ごしたこともあり、聖書は身近な存在でしたが、そのストーリーに興味があります。事前に図録を購入し解説はある程度頭に入れておいて、美術館では作品そのものを眺めるようにしています。あとは、20年前に始めたウォーキングも趣味の一つです。家の周りを1時間かけて7000歩歩く程度ですが、これからも健康維持のために続けたいですね。また水泳も週2-3回しています。健康を支えてくれているのは、何といっても栄養バランスが完璧な妻の手作り弁当です。動脈硬化で引き起こされる眼科的症状も多いので、目のために今後もしっかりと健康管理を続けていきたいと思います
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

目の症状というのは、表現しにくいことも多々あるものです。そんな時は「なんだか見えにくい」だけでもいいので、ありのままをお話しください。診察室では緊張してしまい、思ったことの半分も伝えられないという方もいると思いますが、紙に書いてきていただいてもいいんです。読むのが面倒というようなことはまったくないのでご安心ください。いつ、どんな症状がどの程度あったのか、箇条書きメモでも構いません。逆に私が紙に書いて説明することもありますし、できるだけ丁寧に向き合っていきたいと思っています。内科にかかりつけ医があるように、眼科にもかかりつけ医は必要です。定期検診はもちろん、気になる症状があるならばできるだけ早く受診するようにしてください。