岡村 理栄子 院長の独自取材記事
岡村皮フ科医院
(小金井市/東小金井駅)
最終更新日:2024/07/09
小金井市にある「岡村皮フ科医院」の岡村理栄子院長は、約半世紀にわたって皮膚科一筋のベテラン医師だ。小児皮膚科に強い東京女子医科大学の講師を務めた経験もあり、子どもの皮膚疾患への造詣の深さ、治療経験の豊かさを持ち味としている。学校保健への貢献にも力を入れ、全国の小学校や中学校、高等学校で子どもの化粧による皮膚トラブルについての講演活動も長年熱心に行っている。親子2代、3代で通う患者も多いという同院。フレンドリーかつ地域への愛情あふれる話しぶりから「目先の治療だけでなく、患者の将来まで考えて親身にアドバイスする」という岡村院長の信念が伝わるインタビューとなった。
(取材日2024年3月27日)
母の目線で子どもの皮膚を守り続けて約50年
先生が医師をめざしたきっかけは何ですか?
高校3年生の時に読んだ、原爆に関するノンフィクションの本がきっかけです。もともと読書が好きで子どもの頃から本ばかり読んでいたので、できれば出版社に就職したいと思っていたんです。でもこの本を読んだ時、原爆でひどいやけどを負ったり、毛髪が全部抜けてしまったりして苦しんでいる人がいるのに、「自分はなんてのほほんと生きているのだろう」とショックを受けたんです。そこで何か自分にできることはないかと考えて、東京女子医科大学に入りました。皮膚科を選んだのは、病気を目で見ることができるからです。エックス線撮影で疾患を診ることのできる放射線科と迷ったのですが、やはり人とコミュニケーションを取ることができるのは皮膚科だなと思って。子どもが好きなので、医院での診療の他、学校保健や子どもの皮膚疾患に関わる活動もしています。
学校に出向いて、皮膚トラブルの講演をされていると伺いました。
全国の小・中学校、高校でアトピー性皮膚炎や感染症、紫外線対策、ニキビ、ケガなど子どもの皮膚に関する講演を行っています。私のテーマは「おしゃれによる皮膚トラブル」です。今は小学生でもお化粧をする子どもが増えていますが、子どもは皮膚が薄いので、化粧品によってかぶれたりニキビができたりすることもあるんですね。化学物質を多く含むヘアカラー剤は、使い続けるうちに急にアレルギー症状を引き起こすこともあります。小学生は友達がしているからという理由だけでお化粧をすることがありますから、大人になってちゃんと説明書を読んで、自分の意思でおしゃれをするほうがいいという話をします。最近はニキビに関する講演依頼が増えています。ニキビがテーマだと、先生方も驚くほど生徒から質問が出るなど、特に中高生の関心の高さを実感しています。
子どもの教育に関して、他にどんな活動をされていますか?
学校医を皮膚科専門の医師が担っていることは少ないですが、感染症やアトピー性皮膚炎など、子どもが学校教育の中で知識を得たり、対処法を学んだりしなければならない疾患が実はたくさんあるのです。近年、皮膚科の医師として学校で啓発する必要がある疾患に、性感染症があります。梅毒やヘルペスなどにかかる中学生、高校生もいるので、それがどんな病気なのかを知らせる教材作りに携わり、各学校に配布しています。中高生が性感染症にかかったとき、産婦人科や泌尿器科を受診するのは抵抗があるかもしれません。ですから講演会では「皮膚科に来てもいいんですよ」と呼びかけています。
患者一人ひとりに合わせたアドバイスに注力
子どもと関わるお仕事が多いのはなぜでしょう?
まず一つに、東京女子医科大学の皮膚科では小児が専門だったということがあります。私が大学で学んでいた当時、小児科と皮膚科が一緒になって学術団体が設置され、私も小児皮膚科の経験を積みました。もう一つは単純に子どもが好きだからです。小児科医になろうかとも考えたのですが、私は大学4年生で学生結婚をして5年生の時には子どもが生まれていたので、子育てをしながら小児科の医師をするのは無理だと諦めたんです。でもやっぱり子どもはかわいいです。すでに私の子どもたちは成人し、孫も高校生になりましたが、小金井市はベッドタウンなので、近所に子どもがたくさんいます。子育ての悩みを誰にも相談できない保護者が増えていますから、当院が何でも相談できる場になれたらいいなと考えています。
最近、注意しなければならない皮膚疾患にはどのようなものがありますか?
ネコノミをはじめ、蚊やハチ、毛虫、トコジラミなど虫刺されによる皮膚疾患が住宅街でも増えています。特に、赤ちゃんは免疫が不十分なので、刺されたところが大きく腫れてしまったり、液が出たりします。かゆくてかきむしってしまい、皮膚が剥げてそこにばい菌がつくと「とびひ」になることもあります。腫れが大きい場合は、虫の出す化学物質のヒスタミンだけでなく、虫そのものに対するアレルギー反応かもしれません。赤ちゃんが不快そうにしていたら皮膚科を受診してください。予防のためにお出かけの時は、夏でも長袖、長ズボンで肌が露出する部分を少なくし、親子とも虫よけ剤をつけ、少しでも虫を防ぎましょう。イカリジン製剤を用いた虫よけ剤は、赤ちゃんから大人まで使えるものです。虫よけ独特の臭いが少なく、服の上からも使えますよ。
アトピー性皮膚炎の治療で心がけていることは何ですか?
患者さんの年齢や生活環境を考慮して、一人ひとりに合わせたアドバイスをすることです。アトピー性皮膚炎は小さなお子さんに多い病気ではありますが、大人になっても症状が続く方や、大人になってから発症する方もいます。アレルギー疾患の一つで、皮膚のバリアー機能の低下も発症や悪化の大きな原因ですから、肌を洗う際はナイロンタオルは使わない、荒れた手で洗わないなど、注意すべき点は多々あります。また、スキンケアで重要なのが保湿です。保湿剤は一日に何度も塗る必要はありませんが、0回より1回、1回より2回のほうが効果が見込めます。ですから「どんなに忙しくても1日1回は塗ってください」とか、「ローションやスプレーのような塗りやすいタイプもあります」など、その方が実行しやすい方法を提案するように心がけています。
高い専門性と、何でも相談できる医院づくりが目標
「おしゃれによる皮膚トラブル」について、最近感じていることを教えてください。
長年このテーマで講演してきて気づいたのは、小学生のお化粧は、お母さんとの唯一のコミュニケーションになってしまっているのかもしれないということです。ですから、頭ごなしに「駄目」と言うのではなく、きちんと理由を説明するように心がけています。子どもの皮膚は薄いので、ちょっとしたことでかぶれやすいですし、一度かぶれてしまうと長引くこともあります。化粧品に含まれる微量金属、ビューラーやピアスなどの材料の金属が肌に触れることが、アレルギー性皮膚炎の原因となります。安い化粧品にはかぶれの原因となる物質が含まれていることが多いのですが、そうとは知らずに子どもの化粧を認めてしまっている親御さんもいるので心配です。皮膚は畳2畳分もある大きな臓器です。外見的な機能だけでなく、免疫や放熱といった機能も有する大切な臓器であることを親御さんにも知ってもらいたいですね。
ニキビ治療のポイントは何でしょうか?
ニキビ治療は「続ける」ことがとても大切。初診では肌の状態を確認し、その2週間後に再診、そして3ヵ月間集中的な治療を行い、その後の維持期では再び悪化することを防ぐための治療を行います。長い時間をかけてニキビのできにくい肌へと導く、根気のいる治療なんですね。大人の女性は治療中もお化粧が欠かせないでしょうから、基礎化粧品やメイクアップ用品のアドバイスも行います。そしてもう一つ、ニキビが気になったら早いうちにいらしてください。ケロイド状になったニキビにはステロイド注射による治療を行いますが、そもそもそこまで悪化させないことが肝心。早めに治療を始めればそれだけ治療もスムーズになることが期待でき、良い結果につながることが期待できるんですよ。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
機材を充実させたことで、より専門的な皮膚科診療に取り組みたいですね。エキシマライトは、白斑や乾癬、アトピー性皮膚炎の治療に有用です。ルビーレーザーによるしみのケアやCO2レーザーによるほくろへのケアの要望も増えていますので、専門性をさらに追究したいです。一方で、親子2代、3代で通う患者さんも増え、帯状疱疹のワクチン接種など、皮膚科以外の問い合わせも多くあります。当院もかかりつけ医の一角として、これからも小金井市の医療行政に協力していきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはしみのケア/3000円~、ほくろのケア/3000円~