岡村 理栄子 院長の独自取材記事
岡村皮フ科医院
(小金井市/東小金井駅)
最終更新日:2025/06/11

JR中央線東小金井駅から徒歩で約7分、住宅地の一角に位置する「岡村皮フ科医院」は、1998年に開業。長らく地域住民の皮膚の健康を支え続けてきた。待合室は窓越しに日差しが入り、温かな雰囲気。アットホームで広々とした診療室で、皮膚の悩みや不安について気軽に相談できる。岡村理栄子院長は約半世紀にわたり皮膚科に携わるベテラン医師で、「目先の治療だけではなく、患者の将来まで考えて親身にアドバイスすること」をモットーに、診療に加え、全国の学校で子どもの皮膚をテーマとした講演活動も行う。特に子どもへの診療を得意としている岡村院長に、注力している診療やその思いについて聞いた。
(取材日2025年2月25日)
病気を目で見ることができる皮膚科の魅力
先生が医師をめざしたきっかけは何ですか?

高校3年生の時に読んだ、原爆に関するノンフィクションの本がきっかけです。読書が好きで子どもの頃から本ばかり読んでいたので、できれば出版社に就職したいと思っていたんです。でもこの本を読んだ時、原爆でひどいやけどを負ったり、毛髪が全部抜けてしまったりして苦しんでいる人がいるのに、「自分はなんてのほほんと生きているのだろう」とショックを受けたんです。そこで何か自分にできることはないかと考えて、東京女子医科大学に入りました。皮膚科を選んだのは、病気を目で見ることができるからです。エックス線撮影で疾患を診ることのできる放射線科と迷ったのですが、やはり人とコミュニケーションを取ることができるのは皮膚科だなと思って。子どもが好きなので、医院での診療の他、学校保健や子どもの皮膚疾患に関わる活動もしています。
学校に出向いて、皮膚トラブルの講演をされていると伺いました。
全国の小・中学校、高校でアトピー性皮膚炎や感染症、紫外線対策、ニキビ、ケガなど子どもの皮膚に関する講演を行っています。私のテーマは「おしゃれによる皮膚トラブル」です。今は小学生でもお化粧をする子どもが増えていますが、子どもは皮膚が薄いので、化粧品によってかぶれたりニキビができたりすることもあるんですね。化学物質を多く含むヘアカラー剤は、使い続けるうちに急にアレルギー症状を引き起こすこともあります。大人になってちゃんと説明書を読んで、自分の意思でおしゃれをするほうがいいという話をします。
子どもの教育に関して、他にどんな活動をされていますか?

学校医を皮膚科専門の医師が担っていることは少ないですが、感染症やアトピー性皮膚炎など、子どもが学校教育の中で知識を得たり、対処法を学んだりしなければならない疾患が実はたくさんあるのです。近年、皮膚科の医師として学校で啓発する必要がある疾患に、性感染症があります。梅毒やヘルペスなどにかかる中学生、高校生もいるので、それがどんな病気なのかを知らせる教材作りに携わり、各学校に配布しています。中高生が性感染症にかかったとき、産婦人科や泌尿器科を受診するのは抵抗があるかもしれません。ですから講演会では「皮膚科に来てもいいんですよ」と呼びかけています。
患者一人ひとりに合わせたアドバイスに注力
子どもと関わるお仕事が多いのはなぜでしょう?

まず一つに、東京女子医科大学の皮膚科では小児が専門だったということがあります。そこで小児皮膚科の経験を積みました。もう一つは単純に子どもが好きだからです。小児科医になろうかとも考えたのですが、私は大学4年生で学生結婚をして5年生の時には子どもが生まれていたので、子育てをしながら小児科の医師をするのは無理だと諦めたんです。でもやっぱり子どもはかわいいです。すでに私の子どもたちは成人し、孫も高校生になりましたが、小金井市はベッドタウンなので、近所に子どもがたくさんいます。子育ての悩みを誰にも相談できない保護者が増えていますから、当院が何でも相談できる場になれたらいいなと考えています。
最近、注意しなければならない皮膚疾患にはどのようなものがありますか?
体温の調節に必要な通常の範囲を超えて、発汗が異常に増加する多汗症です。当院にも、手のひらや脇の下にたくさん汗をかいてしまうことを悩んで受診に来られる患者さんが増えてきています。年齢的には、14歳前後に一番汗をかきやすくなりますのでお子さんの受診が多いのですが、多汗症は保険で治療を受けることができるようになり、必要に応じて塗り薬を処方しています。手汗の場合は、夜寝る前に左右の手のひらに均等に塗り広げ、起床後に流水でよく洗います。毎日塗り続けることで効果が期待できます。脇汗の場合は、神経からの汗を出す指令をブロックさせ発汗の抑えを図る塗り薬を処方します。お薬を塗る際の注意点など丁寧に説明させていただきながら、様子を見ていきます。汗が気になる方は、お気軽にご相談ください。
アトピー性皮膚炎の治療にも注力されているのですね。

患者さんの年齢や生活環境を考慮して、一人ひとりに合わせたアドバイスをすることです。アトピー性皮膚炎は小さなお子さんに多い病気ではありますが、大人になっても症状が続く方や、大人になってから発症する方もいます。アレルギー疾患の一つで、皮膚のバリアー機能の低下も発症や悪化の大きな原因ですから、肌を洗う際はナイロンタオルは使わない、荒れた手で洗わないなど、注意すべき点は多々あります。また、スキンケアで重要なのが保湿です。保湿剤は一日に何度も塗る必要はありませんが、0回より1回、1回より2回のほうが効果が見込めます。ですから「どんなに忙しくても1日1回は塗ってください」とか、「ローションやスプレーのような塗りやすいタイプもあります」など、その方が実行しやすい方法を提案するように心がけています。
高い専門性と、何でも相談できる医院づくりが目標
アトピー性皮膚炎の治療薬が進化を遂げつつあるそうですね。

従来のステロイド薬加え、2023年、皮膚炎を起こす前段階で症状を抑えるための生物学的製剤の注射薬が、15歳未満の方にも使えるようになりました。薬によっては生後6ヵ月の赤ちゃんも使用できます。新しい薬だけに、副作用のことも考えながら、患者さんの症状に応じて使用上の注意を指導しながら対応しています。また、当院では、難治性のアトピー性皮膚炎に対しては、紫外線の免疫抑制を図る作用を利用して皮膚の症状を沈静化させることをめざすエキシマライトを活用しています。
ニキビ治療の患者さんも多いそうですが、治療のポイントは何でしょうか?
ニキビ治療は「続ける」ことがとても大切。初診では肌の状態を確認し、その2週間後に再診、そして3ヵ月間集中的な治療を行い、その後の維持期では再び悪化することを防ぐための治療を行います。長い時間をかけてニキビのできにくい肌へと導く、根気のいる治療なんですね。大人の女性は治療中もお化粧が欠かせないでしょうから、基礎化粧品やメイクアップ用品のアドバイスも行います。早めに治療を始めればそれだけ治療もスムーズになることが期待でき、良い結果につながることが期待できるんですよ。
子どものニキビ治療の特徴について教えてください。

子どものニキビは思春期のホルモンバランスの変化で皮脂量が増えることにより、多くのお子さんに発症し、小学校高学年くらいからできはじめ、18歳頃がピークとなります。痕が残らないよう、この期間のうちにしっかり治すことが大切です。ニキビを隠すためにお化粧するお子さんもいますが、かえって悪化してしまうこともあるので注意が必要です。当院では、お子さんの年齢や症状に応じて塗り薬や抗生物質クリーム、内服薬を処方し経過を観察していきます。お子さんの場合も、ニキビができたら放置せず、早めにいらしていただくことをお勧めします。
最後に、今後の展望をお聞かせください。
機材を充実させたことで、より専門的な皮膚科診療に取り組みたいですね。エキシマライトは、白斑や乾癬、アトピー性皮膚炎の治療に有用です。ルビーレーザーによるしみのケアやCO2レーザーによるほくろへのケアの要望も増えていますので、専門性をさらに追究したいです。親子2代、3代で通う患者さんも増え、帯状疱疹のワクチン接種など、皮膚科以外の問い合わせも多くあります。地域のかかりつけ医として、小金井市の医療行政に協力していきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはしみのケア/3000円~、ほくろのケア/3000円~