弓狩 健一 院長の独自取材記事
弓狩眼科医院
(府中市/府中駅)
最終更新日:2024/03/11

京王線・府中駅より徒歩3分の場所にある「弓狩眼科医院」。昨年3月のリニューアルの際に、高齢者の靴の脱ぎ履き、車いすでの来院に考慮しオールバリアフリーに、内装も暖色系に一新。清潔感と落ち着きのある雰囲気の中でさまざまな検査や治療を受けることができる。初代院長である父より世代交代し、数年前に院長に就任した弓狩健一(ゆかり・けんいち)先生は、穏やかな笑顔とやわらかな人当たりのドクター。大学病院勤務時代よりさまざまな手術を経験し、現在も後輩の手伝いに行きながら先進の技術や情報を取り入れる勉強家な一面も持っている。「患者さんが理解しやすい環境をつくりたいですね」と、優しくも頼もしく語る弓狩院長に、医師をめざしたきっかけや診察時の心がけなど、たっぷりと語ってもらった。
(取材日2020年2月20日)
祖父、父の背中を追いかけ、「目のホームドクター」に
眼科医師をめざしたきっかけを教えてください。

当院は父が1960年に開業したのですが、実はその前に祖父が岡山から府中に出てきて眼科診療を始めています。祖父は父が学生の頃に他界し、僕も直接会ったことがないので当時のことはよくわからないのですが、祖父が遺した書物を読んだり、小さい時から父にいろいろと話を聞かされたりしていたので必然的に医師への道を進んでいたかと思います。子どもの頃から眼科医師になろうということは漠然と考えていましたが、親戚で魚の研究や水族館の館長をやっている者が1人いて、僕も海に行ったり釣りをすることが好きだったので高校生の時にこれもやってみたい仕事だなと思ったりもしました。しかしやはり医学の道に進みました。実際医師になってからは忙しくてバタバタしていた時期もありましたが、自分の考えを持って患者さんと話せることや、それに共感して治療を受けてもらえることにやりがいを感じています。
先生の得意とする診療は何ですか?
あまり得意不得意をつくらないように、ということでいろいろなものに挑戦していました。一つのことに集中していなかったので専門的な分野がないのですが、手術に関しては角膜移植から網膜剥離までいろいろと経験させていただきました。大学卒業後、最初は日本大学医学部附属板橋病院、その後埼玉の病院に4年間。それから練馬光が丘病院に6年在籍しました。大学病院といっても個人の責任のもと、1人で診療をこなすような形態でしたので、とても幅広い経験ができたと思います。
長年手術をされていて、変わったと思うことはありますか?

ちょうど僕が卒業した年代は白内障手術でいうと眼内レンズが出始めた頃でした。ですから全摘出から眼内レンズ、それから超音波による手術、最近はレーザーで手術をするところもあり、その変遷を見てきたので、患者さんの負担が減って良い時代になったと思います。術後は絶対安静で1週間頭も動かせなかった時代から、日帰り手術が可能になりました。技術や機械が進歩しているのを感じますし、そんな変化にも順応し患者さんに負担の少ない治療を提供できるよう、日々の鍛錬は欠かしてはいけないと思っています。
「会話」と「見せること」を心がけ、日々診療にあたる
診療の際に心がけていることは何ですか?

こちらの考える治療だけを押しつけるのではなく、患者さんが何を気にされているのか話をよく聞くことを意識しています。診察室に入ると話しにくくなる患者さんも多いようですが、何度か通ってもらったり、検査の合間などに雑談をしたりして話を引き出すようにしています。また、こちらからも「その症状には○○科を受診すると良い」などとアドバイスすることで、信頼関係を築けるようにしています。話が長くなったり時間がかかったりすることも多いですが、今の時代、患者さんとの会話は必要不可欠だと考えています。あとは、これから手術となると不安になる患者さんも多いので、私と話すことで少しでも患者さんの気持ちを和らげられたらいいなと思っています。
妹さんとの2人体制とのことですが、メリットを教えてください。
祖父、父に続き僕の妹も眼科医師で、ほぼ常駐で手伝ってもらっています。難しい症例の患者さんや心配な患者さんについてお互いに意見を合わせ、相談しながら進められるので、1人で不安を抱えつつやるよりもありがたいし心強いです。判断する視点が2つあることで見落としも減らすことができますし、それ以外にも患者さんの話し相手になってもらったり、女性医師のほうが安心するという患者さんもいますのでメリットは多いですね。
最近、患者さんの気になる症状などはありますか?

コンタクトレンズのトラブルやアレルギーが増えていることです。レンズの動きが悪くなる、目やにが出るなど、コンタクトレンズを長く使っていると、どうしてもこういったことが起こりやすくなります。ですから使い方やケアについても、定期的にチェックをする必要性を感じています。また、ほかに気になっているのは若い人の緑内障です。もともと神経の弱い方などが気づかず過ごしていて、視野がうんと悪くなってからいらっしゃることもあります。緑内障は自覚症状がほとんどない、治療していても肌で感じるような実感がないのでついつい受診や治療を後回しにしてしまうケースが多いですが、最近は健康診断を受ける機会も増えていると思うので、そういった際にチェックが入ったら面倒がらずに受診していただくことが必要だと思います。
緑内障治療で工夫していることはありますか?
変化が見えるようなシステムで、患者さんにも理解しやすい環境をつくろうと努力しています。緑内障は気づかないまま症状が進むので、気がついたら視野の一部が失われていたという話はよくある話です。少しでも目に意識を向けてもらうために、当院ではOCTや自動視野計、広角眼底カメラを取り入れコンピューターですべて連動させています。経過観察を図でお見せでき、患者さんが変化を自覚したり、目に対する意識を高めたりするのに役立つので、緑内障管理はもちろん、加齢黄斑変性症にも使用しています。僕自身も結果や経過を目で見て明確にわかったほうが楽ですし、診断の根拠にもなっていると思います。
幅広い活動で、多くの人の目の健康を守りたい
地域貢献として行っていることはありますか?

現在、府中市医師会の活動で学校保健の担当をしています。学校とのつながりを考えるのはもちろんですが、現代に即した対応をすることの難しさも感じています。最近は、夜にインターネットの動画サイトを見るなど、生活習慣を要因とした近視のお子さんが増えています。お子さんの目は柔軟性があるので、長時間手元の同じところを見ていると適応しようとしてしまい、近視になってしまうことがあるのです。意識して遠くを見る時間をつくることも、目のために大切ですね。学校の先生と連携しながら、目を悪くしないように、症状を食い止められるように啓発活動も注力していきたいと思っています。
プライベートでの楽しみを教えてください。
ほどほどにゴルフをしたり、あとは医師会の釣り部の部長もやっています(笑)。年に3~4回みんなを誘って釣りに行くだけなのですが、そういうときは楽しくやったり、気の合う先生と話をしたりしています。また、釣りの道具の手入れも自分でやっています。結構道具には凝るほうなので、ついついいろんなものを集めてしまいますね。
ありがとうございました。最後に読者へのメッセージをお願いします。

当院は昔からある眼科クリニックですが、時代に即して新しいことに目を向け、知識を増やして患者さんと一緒に明るい未来をつくりたいと考えています。クリニックレベルでの検査機器は一通りそろっておりますし、お話もしっかりと伺います。視覚から得る情報は非常に多いですので、放っておくうちにすでに症状が進行してしまっていた、ということのないよう後回しにせず、小さなことでも心配であればぜひ相談にいらしてください。