野川 深雪 院長の独自取材記事
クリニックみらい国立
(国立市/国立駅)
最終更新日:2025/09/01

国立駅から徒歩2分の「クリニックみらい国立」は、糖尿病の治療に注力する医療法人社団ユスタヴィアが多摩センターや立川などで展開しているクリニックの一つだ。院長の野川深雪先生をはじめ、糖尿病、甲状腺、腎臓、循環器などを専門とする医師が集い、合併症の治療も院内で行っている。日本では非常にまれな1型糖尿病患者の比率が多いのも同院の特色だ。管理栄養士や運動療法を専門とするスタッフなども在籍し、食事や運動の指導もきめ細かに行っている。「不安を抱える患者さんが心穏やかに治療に向き合えるクリニックでありたい」と語る野川院長に、同院における診療の特色などを詳しく聞いた。
(取材日2025年3月21日)
地域に根差し1型・2型糖尿病の治療を専門的に行う
まず、医師を志した理由や院長に就任するまでの道のりを教えてください。

子どもの頃は熱を出すことが多かったのですが、かかりつけの先生がとても良い方で、いつも私を励ましてくれたんです。一方、両親は町田市で歯科医院を営んでいて、人手が足りないときは受付や掃除などを手伝うのも好きでした。歯科の道と迷った時もありましたが、最終的には「優しく寄り添ってくれた先生のようになりたい」と医学部に進学しました。大学卒業後は大学病院、東京都立豊島病院、総合新川橋病院などに勤務。2012年からは多摩センターの本院で非常勤医師として働き、2019年には当院の院長にと声をかけていただきました。ちょうど子育てが落ち着いてきたタイミングだったので快諾し、今日に至ります。
たくさんの糖尿病の患者さんに頼りにされているクリニックですね。
開業当初は当法人理事長の宮川高一先生を講演会や書籍で知った方が遠方からお越しになることも少なくなかったようです。その後、近隣の方々に認知されるようになり、ご家族やご友人を紹介してくださる方も増え、今ではお近くにお住まいの方が大半を占めています。ご高齢の方が多いのですが、大学進学のために上京してきた10〜20代、健診で指摘された30〜50代など患者さんの年齢層は幅広いです。また、糖尿病には大きく分けて自己免疫疾患である1型糖尿病と生活習慣病の2型糖尿病があり、1型糖尿病は有病率約0.1%という珍しい疾患です。当院では約15%の患者さんが1型糖尿病で、土曜などは連続して診察することもあるというのも特徴的かもしれませんね。
こちらの診療の特色をお聞かせください。

当院には日本内科学会総合内科専門医もいますし、7人の医師はいずれも経験豊富なスペシャリスト。風邪や腹痛などのよくある病気はもちろん「どこに相談したら良いかわからない」といった悩みにも対応しています。中でも力を入れているのが糖尿病で、医師のうち5人が日本糖尿病学会糖尿病専門医の資格を保有。糖尿病は合併症も心配ですが、糖尿病性腎症、甲状腺疾患などを専門とする医師もいて、循環器内科や神経内科にもシームレスに院内で対応しているのも特色といえるでしょう。また、8人の看護師はいずれも糖尿病の生活指導における専門的な知識を持ち、管理栄養士や運動療法に関する資格を有するスタッフも在籍。栄養指導や運動指導なども一人ひとりに合わせてオーダーメイドで実施しています。
健康診断やがん検診にも注力し、大病の予防に努める
糖尿病は厳しい栄養指導が必要なのでしょうか。

確かに1990年代頃までは糖尿病の内服薬は3種類しかなく、厳しい食事制限がつきものでした。しかし、2000年以降は薬の種類が急速に増え、現在は「必要なカロリーを適切な食事で摂取する」というのが主流になっています。ただ、かつてのように何でも我慢する必要はなくなったとはいえ、「適切な食事」に関する擦り合わせはとても重要です。「ご飯は1杯しか食べていません」という方のお話をよく聞いてみると、ご飯茶碗ではなく丼だったということもありますからね。最近はスマートフォンで手軽に撮影ができるので、文字だけではなく写真でも食事を記録していただくなどして、きめ細かにアドバイスするようにしています。
健康診断やがん検診にも注力していると伺いました。
国立市の健康診断やがん検診も受けられる体制を整えています。糖尿病で通院するたびに血液検査もしていると、それだけで十分と誤解する方も少なくありません。しかし、すべての項目を調べているわけではないので注意を呼びかけたいと考えています。糖尿病の方は健康な方以上にがんにかかるリスクがありますし、早期発見・早期治療につなげていきたいです。実際、糖尿病で通院していたら心臓の病気が見つかり、循環器内科での治療を始めた方などもいます。また、がんの疑いがあれば連携している基幹病院への紹介なども迅速に行っています。特に会社で定期的に健康診断を受けていない方などは、積極的に利用してほしいですね。
常に患者さんに寄り添い、病気の予防にも積極的なのですね。

そうありたいと思っていますが、最初からどの患者さんにも受け入れてもらえるわけではありません。「俺は病院なんか来たくないんだ。好きなことやって、いつ死んでもいい」とおっしゃる方もいます。でも、少しずつ仲良くなってくると「先生の言うことなら聞いてやってもいい」と変わることもあります(笑)。そうなるとだんだん血糖値も気にし始めて、通院が楽しくさえなってくるんですよ。「俺のことに口出しするな!」と怖い顔をしていた患者さんが、にこやかにスタッフたちと話しているのを見ると、私までうれしくなります。誰にでもこれまでなじんできた生活習慣があり、改めるのは大変なことです。でも、信頼関係があれば突破口はあると実感する毎日ですね。
患者一人ひとりを肯定し丁寧に寄り添う
診療にあたって大切にしているのは何ですか。

患者さんに歩み寄り、できるだけ否定しないことです。まずは、どこか一つ褒めるというのも大切にしています。生活習慣が問題ばかりだったとしても、忙しい中に予約をして来院し、痛い思いを我慢して採血をした……その点だけでも「すばらしい」というのを伝えたいです。患者さんを肯定した上で、しっかりと話を聞き、わかりやすく伝えるべきことを話します。特に糖尿病ではライフスタイルにまで踏み込むからこそ、信頼関係は何よりも大事です。良かれと思って食事や運動を無理強いするのではなく、どれなら患者さんがストレスなく続けられるのかともに考え、ともに喜ぶようにしたいと思っています。
お忙しい中、休日はどうお過ごしですか。
子育てが趣味のようになっています。娘がいるのですが、休みの日は家事をしながら彼女と過ごすことが多いですね。小さな頃から習わせているピアノの演奏に耳を傾けるのもリフレッシュになっています。私も多少は弾けますが悪い手本になってしまうといけないので、もっぱら聞き役です。昔、親戚の集まりで演奏していた上手ないとこに憧れてレッスンを始めたのですが、あまり熱心なほうではなかったですね(笑)。それでも音楽は好きで、高校時代にはバイオリンにも挑戦しました。また、機会があったら練習してみても良いかもしれませんね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

昔ながらの「糖尿病は好きなものが食べられなくなってしまうのではないか」というイメージを持ったまま、検査や治療をためらっている方もいるでしょう。でも、今は何でも我慢しなくてはいけないということはありません。当院では患者さんのライフスタイルを丁寧に聞き取って、無理なく続けられるような食事指導や運動指導を行っているので、ぜひご相談ください。服薬も面倒な思いをしなくて済むように基本的には1日1回で済むように調整しています。運動を1人で続けられそうにない方は、待合室で実施している簡単な体操教室に通っていただくのも一つの方法です。また、帯状疱疹やインフルエンザのワクチン接種なども行っているので、気になることがあれば気軽に立ち寄っていただければと思います。