野川 深雪 院長の独自取材記事
クリニックみらい国立
(国立市/国立駅)
最終更新日:2023/07/19
国立駅から徒歩3分の場所にある「クリニックみらい国立」は医療法人社団ユスタヴィアが展開するクリニックの一つ。2019年4月から院長を務めているのは野川深雪(のがわ・みゆき)先生。同院は糖尿病の治療に注力しており、1型糖尿病の患者が多いのが特徴だ。合併症の治療も自院で行うため、腎臓や心臓病の治療を専門にする医師も診療していることに加え、食事療法や運動療法を行う管理栄養士とリハビリテーション担当のスタッフも在籍。さらに同法人内で密に連携を取ることで、甲状腺疾患などにも対応している。患者が孤独に陥らないためのセーフティーネットとなる患者会も重視し、「不安を抱える患者さんが安心して治療に向き合えるクリニックでありたい」と話す野川先生に、クリニックの取り組みや診療の特徴などを聞いた。
(取材日2023年3月28日)
地域に根差し1型・2型両方の糖尿病治療を専門に行う
まずはこちらのクリニックに入職した経緯をお聞かせいただけますでしょうか。
私は1996年に東京医科大学を卒業後、大学病院や豊島病院、総合新川橋病院などに勤務してきました。こちらに入職したのはクリニックが開院した翌年の2012年です。私はもともと、多摩センターにある本院で非常勤の医師として働いていました。法人が展開するクリニックでは糖尿病の患者さんの診療が多く私の専門と一致していますし、糖尿病の治療を行っていくための体制も充実しています。大きな病院での勤務ですと、病院全体のバランスを取るため、スタッフが他の診療科へ異動する場合があったりと、何かと制限があって不自由に感じることもありました。それもあって常勤の医師としてクリニックでの診療に注力していこうと思いました。
先生は2019年4月から院長を務められていますね。就任の経緯は?
本院の多摩センターと、こちらに加えて、2019年6月に立川市に3つ目のクリニックが開院しました。今までは宮川高一先生が法人の理事長とクリニックの院長を兼任していたわけですが、規模がさらに大きくなるので、より全体に目を配りやすくしようと、各クリニックにそれぞれ院長を置くことになり、私の院長就任もその一環です。実は以前からお話はいただいていたんですが子育てがありすぐには難しく、子育てが落ち着いてきたタイミングのお声かけで快諾させていただきました。
こちらには糖尿病の患者さんが多いそうですね。
当院の開院当初は、講演などで宮川先生のことを知った患者さんや病院からのご紹介で遠くにお住まいの方も来院されていたそうです。それから徐々に近くにお住まいの方も来院してくださるようになり、また、そうして当院にいらしてくれた方が家族や友人を連れてきて当院に通院するようになったりと、今では近隣の方が大半を占めています。当院には先ほどお話ししたように糖尿病の患者さんが多いのですが、中でも1型の患者さんが多いのが特徴です。日本の糖尿病患者のほとんどは2型です。1型の割合は非常に少ないのですが、当院の糖尿病患者さんのうち1型の割合は約15%ほどいらっしゃるでしょうか。大学進学のため上京してきた10~20代の方、健診で指摘された30~50代の方、遠方の病院に通っていたけれどコロナ禍もあって近場のクリニックを探して来たという高齢の方など、幅広い年齢層の方が来てくださっています。
患者の安心感につながる取り組みを積極的に行いたい
糖尿病の治療を行う上で、こちらのクリニックにはどんな特徴があるのでしょうか。
人と機器が豊富であることが挙げられます。当院で働く医師9人のうち、5人は日本糖尿病学会が認定する糖尿病専門医の資格を持っていて、8人いる看護師も糖尿病の生活指導において専門的な知識を持っています。法人との連携により、幅広い診療が行えることも当院の強みの一つです。例えば糖尿病性腎症については長谷川亮先生が、甲状腺疾患については立川院の院長である金重勝博先生が診察を行うなど患者さんの悩みに広く対応ができるということも特徴です。加えて、食事指導でさまざまなアドバイスを行う管理栄養士、運動療法ではリハビリテーション担当のスタッフが在籍しています。特に運動療法では、ヨガやエアロビクス、筋力トレーニングの個人レッスンなども行っているので、その方に合ったアプローチの仕方が見つかりやすいかと思います。
診療科目が幅広いのは、糖尿病の合併症を治療するためでしょうか。
そうです。糖尿病の患者さんは心臓の病気や腎臓病などさまざまな合併症が起こる可能性があるので、仮に合併症が起きた場合でも他院を紹介することなく、できるだけ当院で治療が完結するようにしたいと考えています。当院が内分泌内科、腎臓内科、循環器内科、神経内科も標榜し、多くの専門の医師が所属しているのはこのためです。
一旦休止していた患者会などの活動再開も考えているそうですね。
糖尿病の患者同士が情報を共有できる糖尿病教室や、集団で行う運動療法教室などを行っていたのですが、このコロナ禍で中止していました。そろそろ感染症も落ち着きつつありますので、頃合いを見て再開させたいと考えています。診察室ではなかなか話せない日常のちょっとした知恵を教え合うのにも、患者会は非常に有益なんです。当院ではスタッフたちが今の患者さんのニーズを拾い、患者会のテーマを決めていきます。例えば、糖尿病患者さんの中で結婚して子どもを産んだ方や子どもを希望する方が最近多いなと気づいたら、糖尿病を治療しながら出産をして子育て中の方を呼び、お話をしてもらうことも。医師とも診察室の中だけではなかなか雑談もできませんが、患者会を開催した後だと、くだけた話もしやすくなるでしょう。患者さんが孤独に陥らず、安心感を覚えてもらえるようなこうした取り組みを行っていきたいと考えています。
通常診療と併せて、健康診断で他の病気の早期発見も
ところで、先生はなぜ医師を志されたのですか?
子どもの頃から医療が身近だったからだと思います。私の両親は歯科医師で、町田市で歯科医院を営んでいました。人手が足りない時は私も院内の掃除をしたり受付を手伝ったりしていたので、自然と医療の仕事には親近感を覚えるようになりました。「親と一緒に診療しようかな」と考えていた時期もありました。ところが、私は子どもの頃に熱を出すことが多く、かかりつけの先生によくお世話になっていまして、その先生がとてもいい方で、いつも私を励ましてくれました。そんな経験を重ねる中で、「私がなりたいのは歯医者さんじゃなくて、お医者さんじゃないのかな」と思うようになっていったのです。
お忙しい中、休日はどのようにお過ごしですか?
子育てが趣味のようになっていますね。高校生の娘がいるので、掃除や洗濯などの家事をしながら彼女と過ごすことが多いです。個人的な趣味といえばピアノでしょうか。小学生の頃、正月の親戚の集まりの場でいとこが弾いている姿に憧れて私も始めたんですが、私はあまり練習が好きになれなくて(笑)。それでも高校の頃はバイオリンを弾くなど何かと音楽に親しむ時間が長かったように思います。娘も物心つく前から音楽教室に通っていてピアノが好きなようです。家にもピアノがありますが、私の下手なピアノ演奏を聞かせると悪い影響を与えてしまうかもと思い、今はもっぱら娘の演奏を聞くことを楽しんでいます。
最後に、読者にメッセージをお願いします。
通常の診療と併せて、市で行っている健康診断も活用していただきたいですね。糖尿病の通院で毎月血液検査をしているから大丈夫と思われる方も多いのですが、チェックしているのはあくまで糖尿病の数値。がんや心疾患などを早期発見するためには健康診断が必要です。コロナ禍で受診率が落ちてしまっていますが、そろそろ日常も戻ってくると思いますので、健診の習慣を取り戻していきましょう。当院では定期受診の日に健診日を合わせることもでき、通院の手間も省けます。また、帯状疱疹やインフルエンザのワクチン接種も行っていますので、こちらも戻りつつある日常生活に備えて接種を検討していただきたいと思います。