山路 健 先生の独自取材記事
山路医院
(足立区/北千住駅)
最終更新日:2025/11/18
各社路線が複数乗り入れる北千住駅の西口から徒歩約1分の場所にある「山路医院」は、膠原病・リウマチ診療を専門とするクリニックだ。山路健先生は順天堂大学膠原病内科の教授であり、同大学医学部附属順天堂医院の院長も務める。医局に所属するドクターを招いてチームを構成し、高い専門性を駆使して大学病院と同水準の専門診療を展開。医療において地域と大学病院をつなぐ役割も果たしている。同院の専門診療や大学病院との連携体制、そして将来構想などについて話を聞いた。
(取材日2025年8月6日)
膠原病・リウマチを専門に大学病院レベルの診療を展開
膠原病・リウマチを専門に診療されているのですね。

当院は父が60年以上前に開業し、内科・皮膚科・泌尿器科を診療してきましたが、2010年に診療科を変更しました。現在はリウマチ科に特化しより専門性の高い診療を行うことで、膠原病・リウマチ性疾患といういわゆる難病を抱えた皆さんのお悩みにお応えしています。私は現在院長を務める順天堂大学医学部附属順天堂医院で長年、膠原病・リウマチ性疾患を専門に診てきた経験があり、大学病院と変わらない質の医療を身近な場所で提供したいと考えたのです。膠原病・リウマチを専門とする医師は全国的にも少なく、多くの患者さんが遠方の大学病院まで通院せざるを得ない現状があります。地元で適切な診療を受けられることで、移動や待ち時間の負担を軽減し、早期診断と継続治療につなげることができるのです。
順天堂大学医学部附属順天堂医院と密に連携していらっしゃるとか。
私が順天堂大学医学部附属順天堂医院の院長と膠原病・リウマチ内科の教授を兼任していることもあり、医局との関係は非常に密接です。現在は医局から4人の医師が来てくれており、信頼できるチームで専門性の高い診療を提供できています。また、関節リウマチはもちろん、全身性エリテマトーデスやシェーグレン病、全身性強皮症、皮膚筋炎など多岐にわたる膠原病・リウマチ性疾患を診療し、必要があれば順天堂大学医学部附属順天堂医院での検査・入院治療へもスムーズに移行できます。市中病院ではリウマチのみで膠原病は診ないこともありますが、当院は両方に対応可能です。設備の整った大学病院と密に連携することで、診断から治療、経過観察まで、患者さんにとって最も適した場所と治療法を選択できる環境を整えたいと考えています。
大学病院へのスムーズな移行とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

カルテ連携により、大学病院での治療方針や検査結果、処方内容を当院からも確認できます。また、通院支援アプリを使えば、診察や検査の予約や確認、注意事項の通知もスマホで受け取れます。半年から1年に1度くらい大学病院を受診する患者さんにとって、高い利便性を享受できるでしょう。また、順天堂大学医学部附属順天堂医院には難病医療支援に特化した外来があり、合併症や偶発症、臓器病変の精査や、セカンドオピニオンの提供などを通して、難病を持つ方が安心して療養生活を送れるよう支援しています。私自身、順天堂大学医学部附属順天堂医院が東京都から受託している東京都難病相談・支援センターのセンター長も兼任。難病全般について可能な限り情報を収集して、難病患者さんやそのご家族のご相談に応じるほか、専門家を迎えての講演会や相談会も実施しています。こうした活動で得たことを、当院の患者さんにも還元できればと考えています。
一人ひとりの背景も考慮し、無理なく続けられる治療に
関節リウマチといえば、治癒が難しい病気というイメージですが。

この20年ほどで関節リウマチ治療は飛躍的に進歩し、早期発見・適切治療で病気を抱えながらも日常生活を問題なく送れるようになってきました。1999年承認の抗リウマチ薬「メトトレキサート」を中心に、2003年以降は生物学的製剤も次々と登場。治療の質は格段に向上してきているのです。当院では大学病院の外来で受けるのとほぼ同等の治療を提供でき、患者さんの症状や生活状況に応じて薬剤を選択しています。自己免疫疾患であるリウマチの治療薬はある程度の副作用が避けられないものも多くありますから、リスクとベネフィットのバランスを見極め、無理なく続けられる治療を優先することが重要です。
治療方針を決める際にはどのようなことを考慮されるのですか?
膠原病・リウマチ性疾患は治療期間が長く、副作用のリスクも伴います。患者さんごとの病態や体調、生活背景を踏まえ、長期的に安全に続けられる薬剤を選びます。強い薬ほど改善が期待できる一方で副作用のリスクも高まるため、必ずしも「一番強い薬」が最適とは限りません。また、金銭負担が大きすぎても治療継続が難しくなりますので、経済状況についても率直に伺うことがあります。さらに、症状が改善に向かっても、自己判断で薬を中止すると再燃の恐れがあり、患者さん自身が病識を持ち、継続治療の必要性を理解した上で取り組んでいただくことも大切です。医師と患者さんが二人三脚で病状を管理していくことが求められます。
地域医療におけるこちらのクリニックの役割はどのようにお考えですか?

当院は膠原病とリウマチの専門クリニックとして近隣住民や医療従事者からも周知されており、「膠原病・リウマチ性疾患は山路医院に紹介すれば何とかしてくれる」と認識されていると自負しています。必要時は大学病院での精密検査や入院治療に迅速に移行できる体制も整え、順天堂大学医学部附属順天堂医院の難病医療支援に特化した外来や、東京都難病相談・支援センターとも連携して、地域と高度医療の橋渡しを担うことを使命としています。また、若手医師が地域医療にふれながら専門分野を学べる場としての役割も大きいと考えています。若手医師が地域に出てその専門性を発揮する場は現状多くあるとはいえません。当院がそうした場を提供することにより、高い専門性を持ちながら、バランス感覚にも優れた医師が育つのではないかと考えています。
自院をモデルに、地域と高度医療をつなぐ拠点づくりを
先生が膠原病・リウマチ性疾患を専門に選ばれたきっかけは?

当時、膠原病・リウマチ性疾患はまだ治療が困難とされていましたから、新しい治療の研究・開発に携われたら、という思いもありました。しかし今は適切な治療を受ければ日常生活に支障のない寛解の状態をめざせる疾患になりました。健康は患者さんの生活に直結することですし、医師として大きな手応えとやりがいを感じています。
今後の展望を教えてください。
将来的には北千住駅前にメディカルモールを立ち上げ、順天堂大学関係者や各分野の専門性を持つ医師が集まる拠点をつくりたいと考えています。5階建ての施設に膠原病・リウマチだけでなく必要な診療科を集約し、大学病院とのホットラインも整備。地域の患者さんが高度医療を身近に受けられるモデルケースとして展開し、東京全体の医療ネットワーク強化にもつなげていければ良いですね。北千住は交通の要所で、都内有数の乗降客数の多さを誇ります。北関東や群馬方面からもアクセスが良く、近年は大学の誘致や若い世代の流入で活気づいています。この場所にそうした医療拠点を築くことは、大きな意義のあることだと思うのです。
では最後に、読者へのメッセージをお願いします。

膠原病・リウマチ性疾患は治らない病気と諦めてしまう方もいらっしゃいますが、早期発見と適切な治療で日常生活を不自由なく送ったり、趣味を楽しんだりすることが可能です。手のこわばりや関節痛、筋肉痛など原因不明の症状があれば、ぜひ専門の医師にご相談ください。当院では大学病院と同等の診療を身近で受けられます。必要以上に恐れず、正しい知識と適切な治療で病気と向き合い、趣味や日常を楽しめる生活を取り戻しましょう。

