骨折による寝たきりを未然に防ぐために
骨粗しょう症の検査と治療
五ノ橋クリニック
(江東区/亀戸駅)
最終更新日:2023/03/10


- 保険診療
加齢や閉経後の女性ホルモンの減少などに伴って、骨がもろくなって折れやすくなる「骨粗しょう症」。その兆候を自覚するのは難しく、骨折予防のために定期的に骨密度をチェックし、必要に応じて骨密度に対するアプローチを始めることが肝心だ。江東区亀戸の「医療法人社団順立会 五ノ橋クリニック」は、地域のクリニックとして骨密度測定器を導入し、長年にわたって骨粗しょう症の検査と治療を数多く手がけてきた整形外科医院。今回は院長の山口真一先生に、骨粗しょう症の検査から治療に至る一連の流れについて詳しく聞いた。
(取材日2023年2月15日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q骨粗しょう症とはどのような病気なのですか?
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A
加齢に伴って骨に含まれるカルシウムなどが減ることによって、骨の内部がスカスカになってもろくなり、軽く転倒した程度、あるいはそれ以下の衝撃で骨折しやすくなる病気です。痛みもなく静かに進行するため、自らその兆候に気づくことは難しく、背中や腰の痛みをきっかけに医療機関を受診してみたところ、既に圧迫骨折を起こしていたといったケースもめずらしくありません。症状が進んで背骨や股関節を骨折してしまうと、寝たきりの生活になる可能性が高くなります。骨の代謝に大きく関わる女性ホルモンであるエストロゲンが閉経前後から大きく減少するため、50歳以上、特に女性の方は男性に比べて注意が必要です。
- Qどのような検査が必要なのでしょうか?
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A
まずエックス線検査で骨折や骨の変形などがないか、骨の状態を確認します。そして骨密度測定器を用いて行う「骨密度検査」と、血液検査で骨代謝の状態を調べる「骨代謝マーカー」を行います。骨密度検査では若い人の骨密度の平均値を100%として、骨密度が70%を切ると骨粗しょう症と診断されます。一方の骨代謝マーカーは新しい骨を形成する骨芽細胞と、古い骨を壊す破骨細胞のバランスなどを調べるもので、破骨細胞が多い人は骨密度低下のスピードが速く、骨折のリスクが高くなります。これら3つの検査結果を総合的に評価し、必要に応じて骨密度に対するアプローチを始めます。
- Q治療にはどのようなものがあるのですか?
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A
注射薬あるいは内服薬で行います。近年、効果が期待できる薬の種類が増え、注射薬を例に挙げると、注射の頻度も週2回、週1回、月1回、半年に1回、1年に1回とさまざまで、通院せずに自己注射で対応できるものもあります。治療法の選択にあたっては、骨代謝マーカーで得られた数値や血中カルシウム濃度を参考に、既往症なども考慮の上、患者さんの状態により適した薬を選択します。既に背骨の圧迫骨折を起こした人など、骨密度の低下が進んでいる人に対しては主に注射による治療を行い、骨密度がそれほど低くなく、まだ骨折を起こしていない人は内服薬で治療を始めるのが一般的です。注射と内服を併用して治療するケースもあります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診
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骨粗しょう症が心配というだけで受診する人は少なく、背中や腰などの痛みをきっかけに来院するケースがほとんどだという。痛む部位、何をしている時に痛いのか、そして、これまでに骨粗しょう症の検査を受けた経験があるかも含めてヒアリングする。男性に比べ女性のほうが圧倒的に骨粗しょう症のリスクが高いことから、同院では60歳以上の女性患者に対して、どんな症状で受診したとしてもほぼ全員に骨密度測定を推奨している。
- 2検査開始
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同院は、30年ほど前から骨密度測定器を導入。長年蓄積された検査のノウハウを生かし、手首の周辺、前腕部の橈骨(とうこつ)で測定している。若い人の正常な骨密度の平均値を100%とし、80%以下なら要注意で経過観察。70%を切っている場合は骨粗しょう症と診断される。骨代謝マーカーは採血後、専門機関に分析を依頼し、約1週間で結果が判明する。
- 3検査結果の報告
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骨密度測定、骨代謝マーカーの双方で得られたデータをもとに、骨粗しょう症の有無、現状での骨折のリスクについて説明する。現状で問題がないケースなら3~5年後、治療は不要だが注意が必要と指摘された場合は2年以内には、再度検査を受けることが望ましいという。併せて日光を浴びながらの散歩など、日常生活の中でできる骨形成に有用な運動法などもアドバイスする。
- 4必要に応じて治療を開始
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治療は注射と内服薬で行う。既往歴や常用している薬、副作用の影響等も考慮し、初めは内服薬からスタートする。結果の出方を見ながら、必要に応じて注射薬に切り替えることも。骨密度70%を上回ることを目安として適切な薬を適宜探りながら、地道に投薬治療を続けることが肝心。
- 5経過観察
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骨密度が60%台後半で治療を始めた場合などは、骨密度検査での結果によって内服薬をやめ、治療を終えることもめざせる。一方、いったん60%を切るほど低下したケースであれば薬の離脱はなかなか難しく、持病の一つと考えて付き合っていくのが良いだろう。週1回、月1回など注射の頻度に合わせた通院時に必要に応じて検査を行い、治療薬の見直しも含めて経過観察を続ける。