山口 真一 院長、山口 順一郎 副院長の独自取材記事
五ノ橋クリニック
(江東区/亀戸駅)
最終更新日:2025/06/05

亀戸駅から徒歩5分。明治通りと旧千葉街道が交わる場所に立つ「五ノ橋クリニック」は、30年以上にわたって地域に親しまれている整形外科クリニックだ。「かかりつけ医としてできることを最大限行いたい」との思いで日々診療に勤しんでいるのが、山口真一院長と、その息子の山口順一郎副院長。現在、2人で曜日・時間を分けて診療にあたっているが、いずれの診療日も多くの患者が訪れているという。2022年から同院で診療を行っている順一郎副院長は「重症患者の多い病院と違って些細な症状でも丁寧に診られるのは地域のクリニックならではのことです」と話す。親子二人三脚で地域住民の健康を支えている同院の診療について聞いた。
(取材日2025年4月8日)
生まれ育った地元で貢献したいと診療に加わった副院長
医師をめざしたきっかけと、これまでのキャリアについてお聞かせください。

【真一院長】母方の祖父が接骨院を営んでおり、その影響で整形外科の医師を志すようになりました。日本大学医学部を卒業後、整形外科に入局し、日本大学医学部附属板橋病院や埼玉県立小児医療センター、伊豆の稲取、横浜など各地の医療機関で診療をしてきました。外傷を扱う病院に長くいたので、手術も数多く手がけてきましたね。そのような中、祖父が亡くなり「私がここで整形外科医院をやります」と手を挙げ、1991年に開業しました。
【順一郎副院長】父の姿を見て育ったので将来は医師になるのだろうと自然と思っていました。小学生の時、野球で肘を痛めた友人が治療してもらったと聞いて、自分も父と同じ整形外科の医師になろうと。順天堂大学卒業後は順天堂大学医学部附属順天堂医院の整形外科に入局し、東部地域病院、越谷市立病院などでさまざまな整形疾患の診療に携わりました。越谷市立病院では脊椎疾患の治療、手術も多く手がけました。
順一郎先生は2022年からこちらで診療を始めたのですね。
【順一郎副院長】大学病院などで臨床経験を積み、日本整形外科学会整形外科専門医の資格も取得できましたので、今後は生まれ育った地元で診察していきたいと思い、ここに戻ってきました。今、院長が水曜の午前・金・土、私が月・火・水曜の午後に診察をしています。毎日患者さんがとても多く、父が30年も1人で診察してきたのはすごいなと改めて感心しました。私が小さい頃はリハビリテーション室でよく遊んでいて、その頃から通っておられる患者さんに「大きくなったねぇ」なんて言われることもあります。地元ならではのことですね(笑)。
【真一院長】若いだけあって副院長はパソコン関係に詳しく、これまでアナログだった部分が電子化され非常に助かっていますよ。電子カルテのメンテナンスもしてくれています。診療面については信頼してもうすっかり任せています。
患者さんはどのような方が多いですか。

【真一院長】整形外科は高齢の方が多いイメージを持たれるかもしれませんが、当院では60歳以上は4割程度。残りは近隣の会社に勤めている方たちとお子さんが占めています。小中学生の場合、成長過程特有の疾患のご相談が多いですね。整形疾患に悩む高齢者は、ほとんどの方が生活習慣病も抱えていらっしゃいます。そういった患者さんたちから「クリニックをいくつもかけ持ちするのが大変」との声も聞くので、週1回、内科の先生に来ていただいて診療しています。
DEXA法の骨密度測定器を導入し骨粗しょう症に注力
診療方針について伺います。

【真一院長】目標は、患者さんの痛みを1週間以内に半分以下にすること。もし自分が患者ならば、1週間2週間たっても痛みが変わらなければ、ほかの病院に行きたくなると思うのです。ごく一般的な疾患の場合、エックス線検査やMRI検査を行う前に問診と触診で診断の目安はつけられます。検査に行き、結果を待っている間も痛くて仕方ないという場合は、診断から想像できる範囲の薬を出すこともできます。ただ検査は非常に大事なので、問診や触診だけで終わらせることはありません。わずかな確率ですが、悪性腫瘍やがんが骨に転移している場合もあるので、そこはしっかりと見極めています。
【順一郎副院長】症状について患者さんのお話を丁寧に聞き、悪くなる前に早め早めに治療介入するようにしています。ご高齢の方でしたら、骨折する前に適切な治療を行って骨折の予防に努めたり、腰の痛みならひどくならないようにしたり、症状に即した治療を行います。
骨粗しょう症に力を入れていると聞きました。
【真一院長】当院は都内でも早くから骨密度検査を実施し、骨粗しょう症の治療に力を入れています。骨粗しょう症は骨がもろくなり、ちょっとしたことで骨折しやすくなる病態です。60歳以上の女性に発症しやすく、特に痩せ型の方に多い傾向です。今回、より精密な検査が可能なDEXA法の骨密度測定器を新たに導入しました。腰椎4ヵ所と大腿骨の骨密度を図り、その中でもっとも低い値によって診断しています。骨粗しょう症と診断された場合や疑いがある場合は、血液検査やエックス線検査なども行って、より専門的な診断をしています。飲み薬や注射療法など多くの治療法がありますので、患者さんの状態や年齢、生活背景なども考えて適切な方法を選択します。
診察の際、どのようなことを心がけていますか。

【真一院長】診察する時には、必ず患者さんと目を合わせてお話しするよう心がけています。パソコン画面にばかり集中して患者さんの目を見ないということがあってはいけないと思い、電子カルテ導入後もきちんと患者さんと向き合って診療するようにしています。また、高齢の患者さんの中には触診をしっかりすることで安心する方もおられますので、そういった方には特に丁寧な触診をしてリラックスできるよう配慮しています。
順一郎先生は、病院との診療の違いについて何か感じることはありますか。
【順一郎副院長】病院ではやはり、手術が必要なほどに進行した患者さんの診察が中心で、軽い症状はクリニックで診てもらってくださいと言われるケースが多いです。当院のような地域のクリニックは、そうした軽い症状や些細な悩みを親身になって診察する場であり、それそこが重要な役割だと考えています。ですので、どのような軽い症状でも丁寧に診察して、根本的原因からの改善をめざしていくことを大切にしています。
少しの痛みも我慢せず早期に受診を
高齢の患者さんの診療で気をつけていることはありますか?

【真一院長】ご高齢の患者さんの場合は症状の進行を食い止め、今よりも症状を悪化させないこと、そしてQOL(生活の質)を維持することを目標としています。診療を通じて安心感を提供することも意識しています。
【順一郎副院長】ご高齢の患者さんには、ゆっくり聞き取りやすいようにお話ししています。患者さんが混み合っているとつい早口になってしまいがちなのですが、できるだけゆっくりはっきりお話しするよう注意しています。
休日の過ごし方や健康維持の秘訣など教えてください。
【真一院長】体を動かすことが好きで、空手や柔道、キックボクシングをやっていましたが、キックボクシングのスパーリングで椎骨脳底動脈解離を患った後は、激しい運動はしていません。ただ、ゴルフはリフレッシュも兼ねてやっています。自宅に70kgのサンドバッグもあるので、それを打ってストレス発散しています(笑)。また、柔道整復師向けに、整形外科学についてのセミナーも多く実施していますので、新しい知見を得られるよう学術書を読むことも多いですね。
【順一郎副院長】子どもが2人いますので、休日は一緒に過ごしたりしています。診療中はずっと座ってばかりなので、患者さんに運動をするようにとお話ししている立場上、自分も運動しなくてはと思っているのですが(笑)。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

【真一院長】痛みが続く場合、我慢せずになるべく早く受診していただきたいです。その痛みが整形疾患ではなく内科疾患や腫瘍が原因であるケースもごくまれにありますので。そうした痛みに限らず何か不安や困り事を抱えている場合も、相談にお越しいただければ、しっかりと診察させていただきます。
【順一郎副院長】父の代から当院に長く通ってくださっている方、また、新しく受診された方、一人ひとり丁寧に診察してきたいと思います。何か痛みや違和感があれば我慢せずに気軽にいらしてください。我慢して症状が進行すると、治療により時間がかかってしまうこともありますので、些細なことでも早めにご相談ください。