櫻井 薫 先生の独自取材記事
こばやし歯科クリニック
(江戸川区/新小岩駅)
最終更新日:2026/04/15
新小岩駅から徒歩14分の場所にある「こばやし歯科クリニック」。ビルの3フロアを使った広々とした空間で総合的な歯科診療を行っているクリニックだ。同クリニック最高顧問の櫻井薫先生は長年、東京歯科大学老年歯科補綴学講座の主任教授を務めてきた。現在は、補綴歯科や老年歯科の分野で培ってきたすべての経験をプライマリケアに注ぎ、中でも口腔機能低下症の予防と治療に注力している。「おいしく食べられる口を守り、健康寿命を延ばしたい」と語る櫻井先生に、どのような医療を実践しているのか詳しく聞いた。
(取材日2026年3月31日)
口腔機能低下症の提唱者として地域医療に貢献
まず、歯科医師を志した理由やご経歴を教えてください。

祖父、父ともに東京歯科大学の卒業生で、子どもの頃から、自分も同大学で学び、歯科医師になるものと思って育ちました。同大学大学院修了後は米国タフツ大学に留学して総義歯学を修め、帰国後、母校に戻ってからは歯科補綴学第一講座(現・老年歯科補綴学講座)に長年勤務し、主任教授として人材育成にも携わりました。補綴とは歯が抜けたり欠けたりした時に修復することを意味します。私は多数の歯をなくした方に対する入れ歯治療を強みとしてきました。おのずと患者さんの中心はご高齢の方となります。また、長年高齢者歯科に取り組む中で、新病名として口腔機能低下症が認められるようエビデンスの蓄積などに尽力し、2018年の診療報酬改定で認められる運びとなりました。
なぜ、口腔機能に興味を持つようになったのでしょうか。
得意とする入れ歯治療では、多くの難しい症例を解決してきました。ところが、どんなに優れた入れ歯を作っても、患者さんが良く食べられないケースもあります。どうしたら問題解決できるかと考えた末にたどりついたのが、口腔機能でした。患者さんの噛む力、唇を閉じる力、頬の力、舌の力、飲み込む力などが衰えていると、快適な食事はできません。食べられない物も増えて栄養が不足し、全身にも影響を及ぼします。さらに、口は単に栄養を摂取するためだけの器官ではありません。味や温度を感じ、人と会話をし、笑うことで感情を表現するのも口です。生活の質の根幹を成す複合的な器官ともいえるでしょう。より健康で豊かな人生のために口腔機能の維持は欠かせないのです。
口腔機能の低下は生き方も左右してしまうのですね。

個人の生き方だけではなく、社会全体に与えるインパクトも無視できません。政府による「経済財政運営と改革の基本方針」でも毎年、口腔機能管理、オーラルフレイル対策の記載が見られます。なぜなら、口腔機能が低下すると消費行動が落ちる、介護費用や医療費が増えるという調査もあり、超高齢社会の中で看過できない問題だからです。口腔機能低下症の診断は、口腔衛生、乾燥、咬合力、舌口唇運動、低舌圧、咀嚼、嚥下の7項目の評価に基づきます。このうち一つでも問題があった方は、年間8000円以上の医療費増につながっているという試算もあり、見過ごせないところでしょう。当院でも管理栄養士などとのチーム医療で、積極的に取り組んでいきたいと考えています。
管理栄養士と連携し、おいしく食べられる人生を守る
こちらでは口腔機能を向上させるためにどのような取り組みをしていますか?

まず、口腔機能の検査をするために専用のスペースを設けました。通常は診察室で行われることが多いかもしれませんが、院内の栄養ケア・ステーションの隣に設置することで、スムーズに栄養指導にも移行できるようにしています。現在、多くの患者さんが3ヵ月に1回程度のメンテナンスで通院していますが、虫歯や歯周病と併せて口腔機能のチェックを受けることも推奨しています。患者さんは口腔機能低下症と聞いてもぴんとこないことも多く、代わりに説明でよく使うのがオーラルフレイルという言葉です。オーラルフレイル改善のための食事や生活習慣の指導を行うとともに、自宅でもできる舌や口唇のトレーニング方法などもお伝えしています。その中でも力を入れているのが、管理栄養士による栄養指導です。
栄養指導について詳しくお聞かせください。
当院が口腔機能の改善に力を入れているのは、誰もが生涯にわたりおいしく食事を楽しみ、幸せに生きられるようにしたいからです。そのためには口腔機能だけではなく、心の状態や環境も整えなければいけません。例えば、口腔機能が衰えて物が食べにくくなっている方が栄養を摂取するためには、食事内容に工夫が必要です。まだ研究が十分に進んでいない分野ではありますが、当院には、論文を執筆し、研究熱心な管理栄養士がいるので、安心してお任せください。理想を押しつけるだけではなく、患者さんやご家族が無理なく続けられる落としどころをつくることにも長けた、自慢のスタッフです。
口腔機能低下症は何歳くらいから注意が必要ですか?

高齢者に多い口腔機能低下症ですが、実は50歳くらいからリスクが高くなってきます。20代にも見られますが、子どもの頃にすでに口腔機能発達不全症を発症していた疑いがあります。口腔機能発達不全症は口腔機能低下症と同時に2018年に保険適用になった新しい病気です。18歳未満で、先天的な障害がないにもかかわらず、噛む・飲み込む・話す・呼吸するなどの口腔機能が発育不全を起こしている状態です。口呼吸、「お口ポカン」など代表的な症状がある時は、歯並びなどへの影響を軽減するためにも早めに受診してください。口の周りの筋肉や舌を鍛えるトレーニング(MFT)、正しい飲み込み・呼吸・発音のための指導、姿勢や食事の改善など多角的な治療を行っています。
口腔機能に注視しながら幅広い歯科診療を提供
こちらのクリニックの強みをお聞かせください。

地域密着型の歯科医院でありながら、一般歯科、小児歯科、矯正歯科、予防歯科、インプラント治療、根管治療、障がい者歯科など、さまざまな専門性を持つ歯科医師が集っているところでしょうか。総勢60人の歯科医師がいて26台のユニットが稼働。ほぼすべてのユニットにマイクロスコープがあり、先進のレーザー機器も導入しています。訪問歯科にも力を入れており、通院が難しくなった後も、自宅で口腔ケアや嚥下のリハビリテーションができるようにしているのもこだわっている点です。これからも、患者さんの一生に寄り添い、おいしく食べるための歯科診療を提供していきたいと思っています。
お忙しい毎日ですが、リフレッシュ法などはありますか?
休日はテニスをするなど、なるべく体を動かすようにしています。やはり、運動習慣と正しい食生活は健康維持に欠かせませんからね。食事については当院の管理栄養士にいろいろと教えてもらっていて、とても助かっています。新たに指定野菜に仲間入りしたブロッコリーも積極的に食べるようにしています。最近、スマホを見ながらの「ながら食べ」が増えているようですが、味覚を鈍らせるのでお勧めできません。また、人は視覚からおいしさを判断する傾向があるので、食材の色のコントラスト、器の質感、テーブルの明るさなどにもこだわりたいところです。集中力と視覚が、味の「解像度」を上げるといっても過言ではありませんからね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院では口腔機能に注視しながら、幅広い歯科診療を行っています。口腔機能低下症の予防と治療のためには、クリーニングや義歯調整などの口腔ケアも重要です。メンテナンス専用フロアで歯科衛生士によるクリーニングを提供するとともに、私のほかにも義歯に強い歯科医師が複数人在籍しているので、気軽にご活用ください。歯科技工士が常駐する院内ラボもあり、患者さんのニーズに合う義歯などを迅速かつ丁寧に仕上げています。おいしい食事を楽しみ、心身ともに健やかに生きるには、定期的に予防歯科に通うことも大事です。生涯にわたる「豊かな食卓」への唯一のパスポートであるお口の健康を、長い目でともに守っていけたらと願っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは矯正歯科/60万~100万円、インプラント治療(1本)/40万~50万円
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。

