長島 宇大 院長の独自取材記事
赤羽駅前心療内科
(北区/赤羽駅)
最終更新日:2022/11/30
「患者さんが自分らしく生きていくための、お手伝いができればいいなと思っています」そう話すのは「赤羽駅前心療内科」で院長を務める長島宇大先生。患者の声に真摯に耳を傾け、つらい気持ちを優しくほぐしてくれる。穏やかで温かみある人柄に惹かれる患者も多く、来院する人の中で患者同士の紹介も多いのだという。クリニックは赤羽駅を出て、徒歩1分。ビル入り口に描かれている、4つ葉のクローバーのマークが目印だ。「それぞれの葉には、誠実・希望・愛情・幸運の気持ちが込められているんですよ」と院長はほほ笑む。治療の主軸となるのは、カウンセリング。心理検査と対話を通じ、症状の根本的原因を突き止め、解決するための方法を探していく。自分自身が持つ力を発揮するための心のケアの方法について、詳しく話を聞いた。
(取材日2015年2月5日)
カウンセリングを主とした自分を知るためのクリニック
じっくり、丁寧にお話を聞いてくださるクリニックと評判ですね。
心の悩みを根本から解決できるように、一歩掘り下げて話を聞くことを大切に診療しています。今は副作用も少なく、正しく服用することできちんと効果が見込める薬が開発されていますから、心療内科における一つの治療法として薬物治療はやはりあると思うんです。統合失調症や気分障害では、再発を防ぐために薬を併用する必要がありますし、また投薬によって症状の緩和が期待できる場面というのも多くあります。ですが悩んでいる原因がその方の考え方や行動といった、他のところにある場合、ただ薬で症状が良くなったというだけでは、また何かしらの壁にぶつかったときに、同じような症状を繰り返してしまうかなと思いますので、できたらそういったところまで掘り下げて話を聞くことができるようにしたいと思っています。カウンセリングのみで通っている方もいます。
通常診療ではどのようなことを行うのでしょうか?
症状や悩みによって、カウンセリングや薬物治療のほかにも心理検査があります。その方の性格や行動パターン、また悩みの原因を知るための検査となります。有名なものですと「ロールシャッハテスト」という言葉を聞いたことがありますでしょうか。これも心理検査の一つで、インクのしみを見て自由に連想してもらうことで、心の葛藤や欲求、ご自身では意識していないような部分を見ていくことができます。また、症状を診た上で必要があれば臨床心理士によるカウンセリングを行うこともあります。
自分自身を知ることで、心の悩みを解決する方法が見えてくるのですね。
最近はテレビのCM、インターネット上での啓発活動をきっかけに、「もしかしたら自分も心の病気なのではないか」と来院される方も増えています。ですが少し注意が必要なのが、やはりこうした心理検査をきちんと行い、さらに学生の時や子どもの時にどんな経験をしていたのかという点まで丁寧に話を聞いて、今までの生活全般を見ていかなくては問題の原因や治療法を正しく知ることができないということです。
特定の病気に似た症状であっても、原因や治療法が異なるケースがあると?
例えば「仕事でどうしてもミスが多いので、発達障害ではないか」「会社でコミュニケーションがうまくとれないから、コミュニケーション障害ではないか」と悩まれている方が実は増えていますし、検査した結果実際にそうだったという方もおられます。ですが能力的にはまったくそうした傾向もないのに、不安感や緊張感が非常に強かったり、他の理由があってその能力がうまく発揮できないという方もいらっしゃるんですね。うまくできないからご自身でも苦手意識を感じるようになって、それが劣等感を強めてしまい、ますます能力を発揮できなくなってしまう……という悪循環に陥ってしまう方も少なくありません。そうした方に対しては、発達障害やコミュニケーション障害の治療ではなく、もともと持っている能力を生かすためにはどうしたらよいか、その方法を考えるための治療が必要になります。
「できて当たり前」なことは一つもない
考え方を変えることで、本来の能力を発揮することにつながるのですね。
「自分にはできない」と思い込んでしまっているだけで、本当は素晴らしい能力をお持ちの方、たくさんいらっしゃるんですよ。この「できない」という気持ちを修正していくために、患者さんができていることを、一つずつ客観的に評価していく作業を行っていきます。専門的には認知療法、認知行動療法ともいわれるものになります。最初は「確かにできているけど、それは大したことじゃない」「これくらいは誰でもできている」と考えてしまうかもしれません。ですがいつもの行動の中から、できていることを一つずつ評価していくことで、「こんなことができているんだな」とご自身の中でもだんだんと認められるようになってきます。「できて当然」なことなんて、一つもありません。そうした気づきから、少しずつ自信を取り戻していただければと考えています。
女性の心の悩みにも応えられていると伺いました。
月経前や妊娠・出産後、また更年期の時期は、女性ホルモンのバランス変化に伴い、どうしても気持ちが不安定になりやすいんですね。理由もなく急に悲しくなったり、イライラが非常に強くなってしまったり。口調もつい強くなってしまって、人間関係が少しぎすぎすしてしまうといったことで、悩まれている女性の方もたくさんいらっしゃるんです。特に月経に関係する諸症状については漢方薬が有用なので、その方の体質や症状をみながら処方します。
漢方薬を使用するメリットについて教えてください。
漢方は中国の古代からの歴史をもつ生薬ですが、女性の漢方の利用は長く、月経に伴うさまざまな症状の治療に利用されてきました。そうした歴史もあって、幅広いシーンで活用できます。漢方自体がもともと自然界にあるものを原料としていることもあり、副作用が少ないこともメリットの一つになります。
より自分らしく生きるためのサポートを続けたい
治療後の自立支援にも積極的に取り組まれているそうですね。
やはり患者さんに良くなってもらうことももちろんなのですが、”その人らしい生き方”ができるようになることが最後のゴールだと私自身は考えています。つい仕事を引き受けすぎてしまう、完璧を求めすぎてしまう、ついネガティブに考えこんでしまうといった”考え方の癖”を心理検査を用いながら理解し、心身に負担をかけることなく、仕事を続けられるようにするための方法を一緒に考えていきます。そうして患者さん自身の中でいろんな思いを消化できたときに、壁を越えることができるといいますか、「また同じようなことが起こったとしても、私はきっと大丈夫」と言えるような強さを持つことができるんですよね。そんな患者さんの姿を見ることができたら、私自身も本当に励みになります。お手伝いの一環として、臨床心理士による通常のカウンセリング、復職サポートのためのカウンセリングも行っています。
心の悩みを抱えている方をサポートするため、周りの人ができることがあれば教えてください。
お一人ずつの置かれている環境や状況によっても違いますが、やはり患者さんを理解することが大事だと思います。周囲の人は、患者さんの「変化」に戸惑う気持ちがあって、なかなか受け止めきれないこともたくさんあるでしょうし、心配だからこそ、いろいろとしてあげたいことも出てくるかと思います。ですが、その気持ちが少し強くなりすぎて、患者さんが追い詰められてしまうということもあります。まず、患者さんの立場になって、理解してあげる姿勢が大切だと思います。
最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
気持ちがつらくなってしまいがちな方は、自分に厳しくしてしまうことが多いように感じます。その上スランプに陥ってしまうと、思考もネガティブになってしまいがちなので、余計に自分を追い詰めてしまいます。そういう時は「ここまで精一杯やった」と言って、ほんの少し、自分に対する厳しさを和らげてあげることができると随分違ってくるのかなと思います。でも一人で悩んでしまうと、なかなかその一言が出てこないものですから。家族や仲の良いご友人に相談するような気持ちで、心療内科に一度相談に来てください。