喘息は継続治療がポイント
進化した適切な薬で発作の予防を
中村医院
(調布市/西調布駅)
最終更新日:2024/09/20


- 保険診療
日本の喘息患者は約700万人といわれ、その数が増えているという。1960年代には大人も子どもも人口の約1%だったが、最近の調査では大人は3倍の3%、子どもでは6倍の6%にもなっている。花粉症や食物アレルギーなど何らかのアレルギーや、 PM2.5や道路の粉塵などによる大気汚染、あるいはストレスが喘息を引き起こす要因になる。一方で、高い効果が望める新しい薬も続々開発されているという。適切な治療法とそのポイントについて、中村益夫院長に話を聞いた。
(取材日2017年3月27日)
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q喘息とはどのような病気なのでしょうか。
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A
気道が慢性的に炎症を起こしている状態が喘息です。気道が赤く腫れて狭くなったり、湿疹ができたりしているため、わずかな刺激に対しても、呼吸が苦しくなって、咳込んだり、息を吸うたびにゼーゼーという音がするのです。発作を引き起こす刺激には花粉やハウスダスト、PM2.5などの大気汚染、ストレスなどさまざまなものがあります。どれも何らかの抗原に対してアレルギーを起こしているわけで、アレルギーを持っている方がかかりやすい病気と言えます。
- Q治療のポイントを教えてください。
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A
近年「吸入ステロイド薬」というとても治療に有用な薬が出てきました。これについて正しい知識を持ち、適切な使い方をすることがまず大事です。でも薬を使って一時的に発作の症状が治まったとしても、炎症そのものがなくなったわけではありません。ですから、炎症がなくなって正常な状態に戻るまで、あるいは予防の意味で継続的に、薬を使い続けることが治療のポイントになってきます。自分の判断だけで薬をやめてしまい、また発作を起こすということを繰り返すと、リモデリングといって気道がさらに狭くなり、より発作を起こしやすくなってしまいます。医師の指導のもと、継続的な治療を行うことがポイントです。
- Q薬の指導は薬局でもしてくれますか。
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A
薬剤師さんに任せている医院もありますが、私は医師の指導のもとで投薬するのがよいと思っています。喘息治療では次々に新しい薬が開発されています。新しい薬は高い効果が期待でき、入院するような重症なレベルになることを防ぐこともめざせます。一方で、高価なものも少なくありません。なるべく患者さんの負担にならないよう、無理なく続けられるよう、その点は配慮しているつもりです。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診後、レントゲン検査、呼吸機能検査と採血
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問診では現在の症状や既往歴、家族の病歴、アレルギーの有無などを確認。次に聴診を行い喘鳴が聞こえるか確認。肺炎や心不全など他の疾患である可能性もあるので、まず喘息であるという診断をするために、さまざまな検査が行われる。採血ではアレルギー値の非特異的IgEや特異的IgEを計測、呼吸機能検査では肺活量と1秒量(1秒間に吐き出した空気の量)を計測。確定診断をつけるのは難しいので総合的に判断する。
- 2治療についての詳細な説明
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喘息と診断されたら、気道のモデルなどを見ながらこのような症状が起きる原因や、症状の程度に応じた治療について説明を受ける。治療の基本は高い抗炎症効果が期待できる「吸入ステロイド薬」で、発作や気道の炎症を抑えることをめざす。合わせて気道を広げ呼吸を楽にするため「気管支拡張薬」を使用することが多いが、最近は2つの機能を併せ持った合剤もあるという。症状の程度、これまでの病歴に合わせ、薬を選択してくれる。
- 3吸入療法の指導
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薬の期待できる効果を上げるため、吸入薬はきちんと吸いこむことが大事だという。吸入には通常の呼吸より力を必要とするので、指導も行ってくれる。正しく吸入すると音が鳴るようになっている吸入薬と同じ型の練習器で、必要なスピードと勢いを体感。吸い込む力が強すぎても食道に薬が入ってしまうため、ちょうどよい程度を学ぶ。練習は最初だけでなく治療の5週目、8週目にも行い、吸い方が正しいかどうかをチェックしてくれる。
- 4薬の効果、相性のチェック
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初診後、2週目に処方された薬による経過を確認。症状が収まっていれば、その後の通院は1ヵ月に1回程度になるという。医師の診断を受けながら、症状により薬の種類を変えたり、薬の吸入回数や量を減らしたりしていく。吸入薬や内服薬を使用しても発作を繰り返す場合はアレルギー物質をブロックするための抗体療法を行ってくれる場合もある。
- 5継続的な治療、診断
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喘息治療では継続性が大事だという。症状が治まったとしても慢性的な炎症が消えたわけではないので、自己判断で治療をやめてはいけないそうだ。定期的に必ず医師の診断を受けて、発作を予防するための治療を続ける。症状が軽い場合でも炎症が消えたのをしっかり確認できるまで、おおむね3ヵ月以上の治療が必要。入院、気管内挿管、点滴、発作の繰り返しなどの経験がある場合は、基本的に毎日吸入治療を続けたほうがよいという。