中村 益夫 院長の独自取材記事
中村医院
(調布市/西調布駅)
最終更新日:2024/09/20

西調布駅から徒歩5分。地域に根差した医療を140年近く続けてきた「中村医院」では、5代目となる中村益夫院長が喘息などの呼吸器の専門的な治療に加えて、生活習慣病をはじめとした幅広い診療を行い、地域のニーズに応えている。喘息の治療では、原因となる気道の炎症を治しきることを重視し、適切な治療を行うため、丁寧な説明と指導に力を入れている。「呼吸器の病気も生活習慣病も、継続して治療・管理することが大切です」と、話す中村院長に、患者のために実直な診療を行う同院の特徴や診療への思いなどを聞いた。
(取材日2024年4月4日)
地域のニーズに応じて幅広い診療内容を柔軟に提供
クリニックの特色を教えてください。

当院は1884年からこの地で診療を行っており、地域に根差した医療、地域に必要とされる医療をご提供してきました。私も専門分野にとらわれず、お困りのことを気軽にご相談いただけるクリニックをめざしています。調布市は子育て世代の転入も増えており、当院にもお子さんからご高齢の方まで幅広い患者さんがお見えになっています。もちろん、これまで培ってきた呼吸器の病気に対する知識と治療経験を生かし、喘息を中心に呼吸器系の専門治療にも力を入れています。お子さんはアレルギー疾患や小児喘息などで受診されることも多いですね。最近は20~40代の若い患者さんで、インフルエンザなどの感染症の後に肺炎になる方が増えています。ご高齢の方は高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病で定期的に通われる方が多く、当院で脳卒中や心筋梗塞へと病状が進行するのを防ぐお手伝いをして、健康で長生きする方を増やしたいと考えています。
2016年のリニューアルの際、衛生管理も重視されたと聞きました。
患者さんの年齢層が幅広いこともあり、院内での感染症対策をこれまで以上に徹底しました。医療機器の滅菌はもちろん、院内で使用する水はすべて殺菌したものを使ったり、1日の診療終了後に医院の内部全体を消毒できるシステムを導入したりしました。発熱患者さんは別棟の専用室に直接ご案内する体制も整えました。専用室では感染防護服を着用して診療し、必要であればPCR検査用の検体を採取して、早ければ翌日には患者さんに結果をお知らせできます。当院は呼吸器の慢性疾患でいらっしゃる患者さんも多く、今後も発熱患者さんの診療は、時間やスペースなどを分けて行う予定です。ご面倒をおかけしますが、発熱の症状がある方は電話で予約をしてからの受診をお願いしています。
生活習慣病などで定期的に受診される方も安心できそうですね。

喘息をはじめとした呼吸器の病気や生活習慣病などは、患者さんの状態を定期的に継続して診ていくことが重要です。このため、当院では感染症対策をはじめとして、安心して受診できるような環境づくりに留意しています。コロナ禍に入った2020年は、定期通院の患者さんの通院間隔が開いたり、高血圧の治療薬が切れてしまってから受診されたりといったケースも目につき、症状が急激に悪化されるのではと心配していました。喘息もご自分の判断で治療を中断されると病気が進行することにつながるので、定期的な受診と治療の継続をお願いしたいと思います。
呼吸器疾患は症状が治まった後の継続治療が重要
呼吸器の専門家として、得意な診療についてお聞かせください。

大学病院などでの診療経験を生かし、当院でも喘息の患者さんを数多く診ています。喘息は気管が慢性的に炎症を起こした症状を指し、治療には咳の苦しさや呼吸困難などの症状を緩和するためのものと、気管の炎症を抑えるためのものがあります。ご注意いただきたいのは「症状が落ち着いたとしても炎症が治ったわけではない」という点です。炎症がくすぶったまま放置すれば、気管が狭くなり、痰などが出やすくなるばかりか、咳をくり返して気管支が壊れることも多いのです。これにより、最初は軽症だった方も治りにくい喘息に進行してしまうことがあります。当院ではこうした点をきちんとご説明し、気道の炎症を抑えるのに役立つとされる「吸入ステロイド薬」を処方。適切な吸入方法も丁寧に指導しています。なお、肺気腫も同様に長期的な治療が必要な病気ですから、自己判断で治療をやめないようにお願いしています。
肺気腫の治療では何が重要ですか?
肺気腫は肺胞が壊れていく病気で、元に戻す方法はありません。ですから、それ以上悪くしないこととつらい症状を緩和することが治療の目的となります。治療では禁煙が必須で、必要な場合は息苦しさを改善するための薬も使用します。近年では肺気腫と慢性気管支炎を総称してCOPD(慢性閉塞性肺疾患)と呼んでいます。これは、タバコの粒子が慢性的に気管支に炎症を起こし、並行して肺胞の破壊が進んで肺気腫が起きるなど、2つの病気が密接に関連しているからです。COPDは軽症だと症状があまりないのですが、急に悪化して命に関わる状態になってしまうこともある病気です。そのため、軽症の時からの治療が大切です。また、COPDに限らず、病気によって呼吸器の機能が落ちると、運動しづらくなって運動能力や筋力の低下につながり、全身の健康にも影響します。症状が軽いうちに治療を始めるためにも、定期的に呼吸器の検査を受けることをお勧めします。
クリニックで呼吸器専門の医師の診察が受けられるのは患者さんにとってもありがたいと思います。

風邪も呼吸器のトラブルに関わることが多く、呼吸器にダメージを与える感染症も少なくありません。65歳以上の死因で上位となっている肺炎も呼吸器の問題です。ですから呼吸器の病気に関連する相談を、専門的な知見を持つ医師が身近なクリニックで対応できることは、当院の強みといえるでしょう。薬も内服薬のほか、点滴で行う薬もご用意できますし、指定難病の一つである特発性間質性肺炎に対する薬も処方可能です。また、定期的にエックス線による画像診断を行うため、肺炎を見逃すようなケースは非常に少ないと思います。
増加する肺炎や喘息を見逃さずに正しい治療につなげる
新たな検査機器を導入したとお聞きしました。

エックス線検査機器をAI機能つきに変えました。従来のもの比べて、画像が鮮明で肺炎などを見逃しにくくなり、さらに撮影した画像の中でAIが問題がある可能性を検出した部分が赤く表示されるため、判断の難しい症状でもしっかりと確認できます。加えて、数分かかっていた作業が数秒単位でできるようになったことで、短時間で精度の高い検査が可能になりました。もう一つ、モストグラフという呼吸抵抗測定装置も導入しました。主に喘息の診断に役立つ機械で、今まで使用していた呼気NO検査では所見が現れなかった方でも、モストグラフでは喘息と疑われる数値が出ることもあり、こちらも正しい診断・治療につなげるために用いています。
肺炎や喘息などがより精密に診断できるようになったのですね。
肺炎も喘息も、風邪が長引いて発症することがありますが、風邪の治療ではなく、肺炎の治療、喘息の治療を行うことが重要です。2023年の4月頃からマスクを外す生活になって風邪を引く人が増え、インフルエンザの方も増えました。インフルエンザや新型コロナウイルス感染症にかかると咳喘息になる確率が上がります。そのため喘息になる方も多い時期でしたので、正確な診断を短時間で行えるように努めてきました。肺炎も同様で、インフルエンザにかかった後は肺炎球菌にかかりやすくなります。肺炎と診断されれば、風邪には使われない抗生物質による治療が行えます。激しい咳や痰が出たり、息苦しさを感じたり、いつもの風邪とはちょっと違うなと思ったら、呼吸器を専門とするクリニックで検査と治療を受けていただきたいですね。新しい検査機器により、喘息や肺炎のほか、肺がんや心不全なども見逃しにくくなりました。
これからの目標や、地域の方へのアドバイスをお願いします。

私は5代目の院長になりますが、140年近く続く当院が大切にしてきた「患者さんを一人の人間として診ること」を診療の柱とし、今後も実直に地域医療を全うしたいと思っています。私自身も子どもの頃から「人の役に立つ仕事がしたい」という気持ちが強く、今は医師になって良かったと実感しています。調布市は他の地域から転入される方も多いのですが、交通量の多い道路が近くにあり、こちらに引っ越して呼吸器の調子が悪くなったという話もよく聞きます。そうした不調を感じたら、身近にいる呼吸器の専門家である当院を訪ねていただければと思います。