シャントの悩みは早めに相談
痛みを抑え、より良い透析を
飯田橋 春口クリニック
(千代田区/飯田橋駅)
最終更新日:2023/08/29


- 保険診療
日本で人工透析を受けているのは約31万人。その数は右肩上がりで増え続けている。透析に欠かせないのは、シャントと呼ばれる、透析に十分な血液量が確保できるように動脈と静脈を直接つなぎ合わせた血管だ。このシャントのトラブルで、透析の成果が上がらなかったり、心臓への大きな負担となったりしているケースがある。シャントの診療に詳しい「飯田橋 春口クリニック」の春口洋昭院長に聞いた。
(取材日2015年4月9日)
目次
ちょっとした変化に早めに気づいて、適切な治療を
- Qシャントのトラブルはなぜ起きますか?
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A
▲患者の不安や悩みをじっくり聞く
シャントは本来の体にはない血流を作るものです。実に10〜20倍の血流が流れますが、体の中でこれほど早い血流のところはありません。シャントのトラブルは体がそれに反応することで起こります。反応の仕方は2つあり、血管を川に例えると、1つは川幅を広げて血液の流れを多くしようとするタイプ、もう1つは堤防を作って流れを止めようとするタイプです。前者は血管が太くなりこぶを形成することもあります。後者は血管の狭窄につながります。どちらにも偏らない人はトラブルは起きにくいということになります。さらに透析のために針を刺すことなどで血管はダメージを受けます。シャントのトラブルは特別なことではありません。
- Qどのような症状、影響がありますか?
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A
▲「シャントは透析患者の命綱」と語る春口院長
一番多いのが狭窄です。狭窄が進むと十分な血流を取ることができず透析ができなくなってしまいます。狭窄をそのまま放置しておくと、シャントに血栓が詰まって透析ができなくなります。また、見かけ上透析ができていても、いったん浄化した血液を再度浄化すると透析の効率が悪くなり尿毒素が蓄積します。これを再循環といいますが、この状態が続くと体調も悪くなります。シャントは血流が多ければいいというものではありません。流れすぎると心臓の負担が増し、動悸がする、高血圧が続くといった症状が出ます。またシャントがあることで本来手指に流れる血流が低下して指先が冷たくなることもあります。人工血管の場合は感染症の危険もあります。
- Q患者はどのように異常に気づくべきでしょうか。
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A
▲透析クリニックとのコミュニケーションも重要
注意深く見ていると変化に気づくことができます。こぶが大きくなったり、腕が太くなったります。しかし、毎日見ているご本人はこれらの変化に気づきにくいものです。そのため、ご家族や周囲の方が外見の変化を指摘してあげることがとても重要になります。次に、触った時にシャントのスリル(血流の感触)が変わります。聴診器でシャント部の音を聞くのも良いでしょう。透析の時にうまく針が入らなくなった、穿刺ミスが多くなったという時は血管が細くなったり、流れが悪くなったりしています。また、血管の圧力が高くなると、出血後に血が止まりにくくなります。シャントのトラブルは多面的に現れます。総合的に判断しなければなりません。
- Qシャントのトラブルにどのような治療がありますか。
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A
▲日帰り手術を毎日行っている
血管をつなぎ直したり、血栓や感染の部分を取ったりする外科的な治療と、もう1つは、血管内に風船を入れて血管を広げるインターベンション治療(PTA)です。当院では両方行っており、患者さんの症状や治療歴、希望などから判断します。当院では翌日の透析のために日帰り治療を基本としています。もちろん、手術規模や状況で入院を手配することもできます。PTAは通常造影剤を使用してレントゲンで見て行いますが、当院では超音波で見ながら治療しています。造影剤を使用しないため、造影剤の副作用がないなど安全性に配慮され、細かな部位に麻酔注射の針を届けることができるので、激痛を伴うPTAの痛みを和らげることが期待できます。
- Q普段のメンテナンスはどうすれば良いですか。
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A
▲まずは自分のシャントに関心を持つことが重要
自分の普段の状態を知っておくのが大事です。よく触ったり、音を聞いたり、見たり、と自分のシャントに興味を持って、変化があった時に気づけるようになっていただきたいです。また、透析では針を刺すので清潔を保つことも大切です。乾燥肌になったりすると細菌が入りやすいので保湿も重要です。重い物を持たないようにとも言われますが、日常で持つ荷物程度は問題ありません。ただ、圧迫すると血管が詰まりやすいので、手枕やハンドバックを手首近くに掛ける、腕時計をするといったことは良くありません。こぶがある場合は、場合によってサポーターなどで保護することも必要です。おかしいことがあったら早めに相談していただきたいと思います。