アトピー性皮膚炎は症状が軽いうちに
専門的な診査診断が大切
長田こどもクリニック
(杉並区/荻窪駅)
最終更新日:2023/05/25


- 保険診療
乳幼児期に発症しやすいアトピー性皮膚炎。すべすべした肌に湿疹ができたり赤みが出たりすることで、不安に駆られる保護者も多いことだろう。アレルギー疾患を専門に診療している「長田こどもクリニック」の長田厚院長は、「皮膚にかゆみや乾燥などの症状が出たら、できるだけ早くアレルギーを専門的に診られる小児科を受診し、適切な診断を受けることが大切。早ければ早いほど治療も軽く済みます」とアドバイスする。最近では非ステロイド系の新しい薬も登場していて、より高い治療効果が期待できるという。アトピー性皮膚炎は、食物アレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患の誘因でもあるので、適切な治療を受けることが重要だ。アトピー性皮膚炎の治療法や日常での注意点などについて長田院長に話を聞いた。
(取材日2022年11月30日)
目次
非ステロイド系の薬も登場。症状に応じた薬の使用で、再発の防止をめざす
- Qアトピー性皮膚炎の治療について教えてください。
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A
▲薬の塗り方について、時間をかけて丁寧に説明している長田院長
当院では、症状のある時だけでなく、症状が消えて一見すべすべした皮膚になった場合でも外用剤を用いて再発の防止をめざす、プロアクティブ療法を行います。8段階のステロイド剤と3種類の保湿剤を常備して、炎症の度合いや箇所によって薬の強さや塗る量、回数などについて細かく指導しています。また近年、非ステロイド系の新しい薬も登場しました。当院ではステロイド治療の後のコントローラーとして非ステロイド剤を用いています。一つは炎症やかゆみなどを引き起こす信号を免疫細胞に送るJAK経路を抑えることで症状の改善をめざす薬で、もう一つは酵素の働きを阻害して炎症を抑えるための薬です。
- Qクリニックを受診するタイミングについて教えてください。
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A
▲自己判断せず、説明どおりに薬や保湿剤を使うことが治療の肝
アトピー性皮膚炎のそもそもの始まりは乳児湿疹です。乳児期に肌の乾燥やかゆみ、湿疹が見られたらできるだけ早いうちに受診して適切な診断を受けるようにしてください。早期であればあるほど治療も軽くて済みます。症状が軽ければ、ステロイド剤を使うことなく、入浴方法の改善やスキンケアだけで済むことも期待できます。自己判断で市販の薬を使い続けている方もいらっしゃいますが、肌に合わないものを使用することで、逆に症状が悪化してしまう恐れもあります。また、小児の湿疹や肌トラブルにはさまざまな種類がありますので、適切な治療につなげるためにも早期に受診しましょう。
- Qかかりつけの小児科を持つメリットを教えてください。
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A
▲カルテには、症状の経過やそれに適した薬の情報が記録されている
小児科診療では発育・成長を継続的に診ていくことが重要で、かかりつけの小児科であれば成長過程をしっかり管理できます。特にアレルギー疾患の治療では、頻繁な診療によって細かく経過観察していくことが必要です。アトピー性皮膚炎は皮膚の状態が刻々と変化していきますので、それに応じて細かく薬を変えるためにも、過去の治療経緯も必要となります。また、継続的に患者さんを診ていると、季節による体調の変化も把握できます。例えば、ある時期にある症状が出た時に、前年のカルテをめくって同時期に同じ症状の記録があれば、その疾患の発症傾向がわかり、体調管理や疾患予防に役立ちます。
- Qアトピー性皮膚炎は食物アレルギーを誘発するとも聞きました。
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A
▲アレルギー連鎖の起点となる皮膚症状は、早期治療が大切だ
アトピー性皮膚炎の方は皮膚のバリア機能が低下し、皮膚からさまざまなアレルゲンが侵入して、皮膚感作を起こしやすい状態になっています。生活環境の中には小麦抗原や卵白抗原などアレルギーを引き起こす食物抗原が漂っていて、それらの皮膚感作を避けるためにも皮膚のバリア機能を高めていくことが大切なのです。さらに、食物アレルギーだけでなくアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症と次々とアレルギー疾患が引き起こされることもあります。このアレルギーの連鎖はアレルギーマーチと呼ばれています。この連鎖を防ぐためにもアトピー性皮膚炎を早期に治療することが重要なのです。
- Q日常生活での注意点について教えてください。
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A
▲医師のアドバイスをもとに、日常生活での「乾燥」にも配慮を
アトピー性皮膚炎にとって乾燥は大敵です。入浴の温度は39度以下でお湯に入る時間は3分以内が目安。入浴後はしっかり保湿剤を塗ってください。せっけんは保湿剤の入っているものを選び、発泡性の入浴剤などは使用しないようにしましょう。皮膚に直接触れる下着は発熱作用などのある化学繊維のものではなく、綿素材のものを選びましょう。また、ベビースイミングなど水泳をした後は、シャワーをしっかり浴びて皮膚についている塩素を落とし、その場で保湿剤によるスキンケアを忘れないようにしてください。