全国のドクター9,103人の想いを取材
クリニック・病院 158,819件の情報を掲載(2024年3月29日現在)

  1. TOP
  2. 東京都
  3. 杉並区
  4. 荻窪駅
  5. 医療法人社団厚洋会 長田こどもクリニック
  6. 長田 厚 院長

長田 厚 院長の独自取材記事

長田こどもクリニック

(杉並区/荻窪駅)

最終更新日:2023/05/26

長田厚院長 長田こどもクリニック main

杉並区南荻窪の閑静な住宅街の中にある「長田こどもクリニック」。扉の向こうに広がるのは、思わず歓声をあげたくなってしまうほどかわいらしい空間。1969年に長田小児科として開業し、2001年からは長田厚(おさだ・あつし)先生が2代目院長として地域の子どもたちの健康を見守っている。長田院長は小児喘息やアレルギー疾患を専門としており、適切な診断と治療を頼りに遠方から足を運ぶ患者も多い。「子育ては人生最良の経験です。その大きな喜びを阻害する要素はできるだけ排除して差し上げたいですね」と穏やかな笑顔で話す長田院長に、小児科医療への思いやアレルギー疾患の診療などについて話を聞いた。

(取材日2022年11月30日)

子育ては人生最良の経験。大いに楽しんでほしい

待合室や診療室はとても楽しい雰囲気ですね。

長田厚院長 長田こどもクリニック1

お子さんたちにできるだけ楽しく通院してほしいと思い、各部屋に外国製のカラフルな壁紙を貼るなど、明るい空間になるよう工夫しました。間取りや動線にもこだわり、患者さん同士がすれ違わないよう、待合室から診療室へは一方通行の回遊式です。また、待合室は一般的な小児疾患用、湿疹と予防注射専用、1歳未満の乳児専用、発熱患者専用と4室用意していて、発熱患者専用の個室は入り口も別になっています。熱のあるお子さんは発熱症状を専門で診る外来で診察し、新型コロナウイルス感染症かどうかを検査して陰性であれば、ほかの感染症の検査を行います。診察後には室内全体を消毒していますので、どうしても時間がかかってしまい、新型コロナウイルスの感染者数がピークの時はなかなか大変でしたね。

今、どのような患者さんが多いのですか?

当院は1969年に父が開業し、2001年に私が引き継ぎました。50年以上たっていますから、親子3世代にわたって通っている方も多いですね。患者さんの主訴の約8割がアレルギー疾患です。私はこれまでに小児救急医療に長く携わり、呼吸管理や小児喘息を専門としています。小児喘息はアトピー性皮膚炎とも深く関わっているため、アトピー性皮膚炎も専門的に診るようになりました。患者さんの中には遠方から来られる方も多く、先日も福島から来られたり、大阪から連絡をいただいたりしました。ただ、以前と比べると小児のアトピー性皮膚炎の患者さんは減ってきています。アトピー性皮膚炎の発症予防には乳児期のスキンケアが重要ですが、それが浸透してきたおかげかもしれません。

小児科診療に対するポリシーを教えてください。

長田厚院長 長田こどもクリニック2

子育ては人生最良の経験で、大きな喜びです。その喜びを阻害するものは、できるだけ排除したり改善したりして差し上げたいと思っています。現代においては、インターネット上でも多様な情報が飛び交っています。中には間違った情報もあり、病気について誤解している方も見受けられます。思わぬ落とし穴にはまってしまうこともありますから、親御さん方には情報リテラシーをしっかり持っていただきたいですね。私自身も科学的データに基づいた適切な情報を、わかりやすくお話しするよう心がけています。小児医療も日に日に進歩していますから、常に新しい情報をお伝えし、さまざまな悩みにお応えして、子育てをサポートして差し上げたいですね。

アトピー性皮膚炎の治療ではプロアクティブ療法を実践

力を入れている診療について教えてください。

長田厚院長 長田こどもクリニック3

一つは小児喘息です。喘息の治療では、鼻の症状の有無や気管、呼吸音の変化を定期的に確認しながら、発作の出ていない状態でも、繰り返し診察を行います。「何もなくて良かった」という安心を積み重ねていくことで、発作ゼロの状態を1年間続けることが最終目標です。喘息に限らず、アレルギー疾患の治療で最も大切なのは頻繁なフォローアップで、慢性疾患だからこそ、頻繁な診察が重要なのです。たとえ大きな病院にかかっていたとしても、診察が数ヵ月に1回であれば意味がありません。その間に発作が起きてしまえば、またゼロベースからのスタートに戻ってしまいます。細かな管理を徹底することが、「いかに少ない薬で済むか」につながるのです。中には喘息を軽く考えている親御さんも見受けられますが、大人になるまで症状が続いてしまうことを避けるためにも、子どもの時にしっかり管理しておきましょう。

アトピー性皮膚炎についてはいかがですか?

実は、欧米ではアトピー性皮膚炎という診断名は使われておらず、「湿疹」として治療を行っています。そもそもの始まりは乳児期の湿疹で、皮膚のバリア機能の低下、アレルギー体質、皮膚感染症が主な原因です。当院では、本来5段階の強さに分類されるステロイド剤をさらに8段階に細分化し、3種類の保湿剤とともに炎症の度合いや箇所によって細かく使い分けています。また、最近新たに登場した非ステロイド系の薬も、ステロイド治療後の長期管理に使用しています。さまざまな薬を活用し、当院では症状が出た時に薬を塗るのではなく、一見改善したかのように見えても薬を塗って再発の防止をめざす、プロアクティブ療法を行っています。

薬の塗り方も細かく指導しているのですね。

長田厚院長 長田こどもクリニック4

そうですね。場所ごとに薬の種類、塗る量、回数などを細かく指示しています。左の頬にはこの薬をこの量で、右の頬にはこの薬をこの量で、おなかには、右の薬指には、というようにお伝えしています。細かい治療計画を立てないと、良い結果が得られないのです。当院のカルテでは、体のイラストにびっしりと手書きの情報を書き込んでいて、これが電子カルテを導入できない理由になっています。親御さんも一生懸命メモを取ってくださっていますが、あまりの細かさに途中でお疲れになってしまうこともあるようです。そんなときには、いったん大まかな塗り方をお伝えして、気持ちが立ち直ったらまた細かく塗り分けるというように、親御さんの気持ちに寄り添いながら臨機応変に対応しています。

「テイク・ホーム・メッセージ」で適切な情報を

診療の時にはどんなことを心がけていますか?

長田厚院長 長田こどもクリニック5

親御さんたちがこれまで知らなかった情報、安心できる情報を何か一つでも持って帰れるよう「テイク・ホーム・メッセージ」の発信を大切にしています。皆さん、小児科には何らかの安心を得るために来られているのですから、そこにお応えしなくてはと思っています。一番に考えているのは、どのようにしたら理解してもらえるか、どんな言葉で話したらわかってもらえるかという点です。人によって知識や理解度も異なりますし、中には間違った情報に固執してしまっている方もいらっしゃいます。そういった方々にも、子育てを快適にするための情報、ためになる情報を何か一つでも持って帰ってもらえたらと考えています。

これまでたくさんの子どもたちを診てこられたと思いますが、印象に残っていることはありますか?

アレルギー疾患の治療は長期化してしまうことも多いのですが、それだけに、子どもたちの思い出はたくさんあります。診療デスクの上に飾ってある折り紙のクワガタは、勤務医時代に担当したある男の子が作ったものです。そのお子さんを診療していた当時は、喘息の治療法が未熟な時代で、1年に何度も長期の入院が必要になることもありました。そんな中、折り紙を入院中の楽しみにしていたその男の子が、ある日クワガタを作って持ってきてくれました。完成させるには120くらいの工程が必要らしく、熱心に説明してくれたことを覚えています。この折り紙は、喘息の治療を決しておろそかにしてはいけない、という自身への戒めとして今も飾っているんですよ。

最後に、読者へのメッセージをお願いいたします。

長田厚院長 長田こどもクリニック6

子どもといっても一人の個人ですから、客観的に見ることも大切だと思います。子どものことに熱心すぎる方は少し距離を置くように、逆に無関心すぎる方は関心を寄せるように、とニュートラルゾーンに持っていくための声かけやアドバイスをすることは、小児科の医師の一つの醍醐味だと感じています。心配なことも多いと思いますが、ある程度の年齢になったらお子さんの自立心を育てることも重要です。不確かな情報に左右されず、科学的データに基づいた適切な情報を持つことで、子育てというかけがえのない体験を大いに楽しんでいただきたいですね。

Access