小児喘息は慢性の炎症性疾患
発作ゼロを1年間続けることが目標
長田こどもクリニック
(杉並区/荻窪駅)
最終更新日:2024/04/19
- 保険診療
咳が止まらなかったり胸がゼーゼーしたりといった症状が出る小児喘息。呼吸がスムーズにできずにいる子どもの姿を見るのは保護者にとっても、つらく心配だ。長く小児の救急医療や呼吸管理、小児喘息の治療に携わってきた「長田こどもクリニック」の長田厚(おさだ・あつし)院長は「小児喘息は単に発作を抑えるだけでなく、発作ゼロの状態を続けることが最も重要です」と指摘する。発作が治まればケロっとして元気になるため、自己判断で薬をやめてしまい、結果、再び発作を繰り返すケースも多いという。小児喘息の症状や原因、治療方法、治療において重要な点について長田院長に話を聞いた。
(取材日2024年1月5日)
目次
発作の出ていない時の継続的な治療・管理が大切
- Q小児喘息とはどのような病気ですか?
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A
小児喘息という疾患名はなく、正しくは小児の気管支喘息です。空気の通り道である気道に炎症が生じそれによってけいれんが起きて気道が狭くなることで発症します。また気道の粘膜が腫れて痰が出て呼吸が苦しくなったりします。主な症状は、ヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴(ぜんめい)や激しい咳き込みです。特に息を吸う時より吐く時のほうが苦しいのが大きな特徴です。1日の中では夜中から明け方3~4時頃に多く、時期としては5月初めから梅雨明け、台風シーズンから秋雨の頃など季節の変わり目に多く見られます。一般的な風邪症状の咳は寝入りばな、寝起きに出ることが多く、気管支喘息の咳とは時間帯が異なります。
- Qなぜそのような症状が起こるのでしょうか。
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A
小児の気管支喘息の90%はアレルギー疾患が原因といわれています。遺伝的なアレルギー素因を持つ子どもに多く、さまざまなアレルゲンに反応して気管支に慢性のアレルギー性の炎症が生じ、気管支が敏感になります。そこに風邪などの感染症や煙の吸入、気圧・気温の変動、激しい運動、カビ、動物の毛などさまざまな要因が合わさって発作が起こります。また、乳児期の湿疹から食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症と次々とアレルギー症状が出るアレルギーマーチの一環として引き起こされることも多いです。気管支喘息は発作時の状態だけを見ていると急性疾患と思いがちですが、実は慢性の炎症性疾患なのです。
- Qどのタイミングで受診したらよいですか?
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A
咳の症状が出た時、特に夜中3~4時頃に急に咳き込む、あるいは呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという喘鳴がある場合は早いタイミングで受診しましょう。最近では早期介入、アーリーインターベンションといって、できるだけ早期から治療を始めて、発作を予防することが重要視されています。発作の回数が少ない、症状が軽いからといって治療を怠っていると炎症が進行し、やがて気管支の構造が変化して修復不可能な状態になり、難治性の気管支喘息になってしまうことも考えられます。ですので、症状が見られたら早期に受診してください。特に食物アレルギーやアトピー性皮膚炎を発症している場合は注意が必要です。
- Qその治療について教えてください。
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A
気道の炎症を鎮めるためのコントローラーと呼ばれる長期管理薬を使い、発作の予防を図ります。コントローラーには、ロイコトリエン拮抗薬や吸入ステロイド薬があり、症状によって使い分けたり組み合わせたりします。重症の場合はさらに気管支拡張薬を用いる場合もあります。喘息症状の診断、評価方法においては呼気一酸化窒素濃度検査などがありますが、当院では聴診器による聴診、呼吸の速さ、呼吸時の呼吸筋と腹筋の動き、肋骨間のへこみの有無、心拍数の変化などを重視し、それらを総合的に見て診断・評価しています。治療の最終目標は発作ゼロを1年間継続することです。1年間発作ゼロが続けば、多くの場合寛解が見込めるとされています。
- Q普段の生活で気をつけてほしいことはありますか?
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A
1年間発作ゼロを達成するために当院が大切にしているのが、頻繁なフォローアップです。発作の出ていない時でも頻繁に呼吸症状や気道の粘膜の状態などを繰り返し確認していくことを重視しています。忙しい保護者の方には負担になるかもしれませんが、2週間に1回は受診するようにしてください。何の制限なく日常生活を送れるようにすることも治療の目的ですので、きちんとコントロールできていれば特に気をつけることはありません。ただ、煙だけは注意してください。仏壇のお線香や花火遊びなどの煙が発作の引き金になります。また、発作が出る前にサラサラの鼻水が出ることが多いので、鼻水が出たら早めに治療を受けるようにしましょう。