長坂 俊幸 院長の独自取材記事
長坂歯科
(港区/田町駅)
最終更新日:2025/08/29

田町駅・三田駅に直結しているビルの2階、医療フロアーという好立地にある「長坂歯科」。1912年に開院した同院には、地域住民から近隣のオフィスに勤める社会人まで、さまざまな年齢・職業の患者が訪れている。一般的な歯科診療に加え、噛み合わせ治療による口腔内症状および全身症状の改善を図ることに高い専門性を持つ。4代目の院長に就任した長坂俊幸先生は「先代たちが築いた患者さんとの信頼関係を大切にしたい」と語る。長坂院長に同院の専門性や診療方針について話を聞いた。
(取材日2025年7月17日)
100年4代にわたり地域と信頼関係を築く
長坂歯科には長い歴史があるとお聞きしました。

現在の田町駅前のビルに移転したのは1971年ですが、曾祖父が歯科医院を開業した時期は1912年まで遡ります。私は4代目の院長として2020年に正式に就任しました。患者さんのなかには、曾祖父の代から3~4代にわたって来院いただいている患者さんやそのご家族の方々が多くいらっしゃいます。また田町で開業して40年以上になりますが、地域の方々や周辺オフィスに勤めるサラリーマンの方々にも来院いただいています。長い時間をかけ患者さんたちと築いてきた信頼関係を、これからも大事にしていきたいと考えています。
噛み合わせ治療に関する高い専門性が同院の特徴だと伺っています。
父の代から噛み合わせ治療に関する知見、データ、治療ノウハウを蓄積してきました。一般的な歯科診療はもちろんですが、耳の症状をはじめとする噛み合わせ由来の全身症状を主訴とする患者さんも多くご来院されます。耳鼻咽喉科や整形外科の先生からのご紹介も含め、全国各地から来院いただいている状況です。
なぜ噛み合わせ治療に注力することになったのでしょうか。

開業当時、歯科医師の治療の基本は抜歯することでした。しかし当院では、抜歯や神経を抜くことを極力避ける診療方針を取っていました。歯を残す治療に専念した結果、患者さんが全国から訪ねて来るようになりました。そのような治療方針を貫くなか、抜歯しないためには噛み合わせが重要であることに気づきました。また、噛み合わせと聴力の関係に関しても興味深い症例に出会い、そこから追求することになり、東京歯科大学や東北大学の先生方との共同研究を開始することにしました。そうして全身症状とのつながりが徐々に明らかになってきました。
抜歯しないことと噛み合わせへのこだわりには連続性があるのですね。
はい。歯はすべてそろってこそひとつの器官として機能します。一つでもぬけてしまうと、全体として役割を果たすことが難しくなります。安易に抜歯するよりも、抜かない状況を作っていくのが一番大事だと考えています。抜歯の原因は歯周病か歯根破折のいずれかがほとんど。そのふたつの症状は、過度にかかる咬合力をすべての歯で分散していけば起こりにくくなります。噛み合わせを整えて、抜歯を避け、患者さんの健康を長期間にわたり守っていくことが当院の方針となっています。
聴力測定と口腔内検査で症状の理由を探る
噛み合わせが悪化した場合、どのような症状が起きるのでしょうか?

噛み合わせが悪い時に出る症状は、口腔内症状だけでなく全身症状にもあらわれます。口腔内症状としては歯周病と、顎が痛む、口が開かない、口を開ける時音がするといった症状が出る「顎関節症」が多いです。全身症状としては、頭痛、首・肩の痛み、腕が上がらない、腰痛、難聴、耳鳴り、めまいなどの「咬合関連症」も悪い噛み合わせが原因で起こります。すべての歯を使って、万遍なく、バランスよく噛めるように治療することが良い噛み合わせを作ると考えています。
噛み合わせの良し悪しや全身症状との関連性はどのように調べるのですか。
まずは問診で口腔内症状の他、全身の症状についてもお伺いします。最近では紹介状も多いので、内容を拝見しながらこれまでの治療や、症状が出た理由を把握することに努めます。まず、聴力測定と全身のバランスのチェックを行います。またエックス線検査や歯周病検査など口腔内の検査を行います。噛み癖がある箇所は歯周病が進行している可能性が高いので、エックス線や歯周病検査でその場所を診断していきます。全身の症状と口腔内の症状を照らし合わせて、噛み合わせの診断をしていきます。
噛み合わせに問題があった場合はどのような治療を行うのでしょうか。

噛めていない部分を調べて見ると、以前治療した部分に問題があったり、治していない歯があったりしますね。治療が必要な歯があった際、すべての歯でバランス良く噛めるように、詰め物やかぶせ物、義歯などを使って治療を行います。ただ、悪くなった部分だけを治したとしても顎のバランスや姿勢は崩れたまま。そのため、患者さんにも噛み合わせの状態を知ってもらい、根本原因である噛み癖を治していきます。具体的には、噛めていない場所で、チューブを用いた噛み方のトレーニングをご自宅で行ってもらいます。歯の高さや位置を調整していくことで噛み合わせ改善を図るので、顎を切る、歯を抜くなどの外科処置は行いません。その場限りの治療ではなく、悪くなった原因を突き止め再発を防ぐことに重点を置きます。
噛み合わせと関連して最近ではどのような症例が多いのでしょうか。
最近では、歯ぎしり・くいしばりが原因で、顎が痛い・歯がすり減るなどの症状を訴える方がおられます。また、矯正歯科や審美歯科の治療後の噛み合わせ不調を相談に来る患者さんが増えています。これまでも受診後に何かしらの症状に悩むということはあったのでしょう。ただ近年では患者さんのリテラシーが向上したことで相談してくださるケースが増えているのだと思います。そもそも、噛み合わせと歯並びの定義は曖昧にされる傾向があります。噛み合わせは動的な状態を指す言葉であり、患者さんの顎の動きや噛み癖に着目します。一方で歯並びは形であり静的な状態を指します。並び方や見た目が良いからといって、噛み合わせが良いとは限りません。中にはアバウトな診断方法で噛み合わせの状態が決められてしまうこともあるので、症状が出て不安になる患者さんも多いと推測しています。
人を知ることが歯の健康を守るための第一歩
院内に技工所も併設されているそうですね。

昨今の歯科医院ではかぶせ物や詰め物を外部に発注することが普通ですが、以前は院内に技工所があることが当たり前でした。当院はそのシステムをそのまま残しています。私個人としては、患者さんがどういう人か、あるいはどのような噛み癖があるのかを知らないと、適切なかぶせ物や詰め物をつくることは難しいと考えています。模型だけでなく、しっかりと人を見てかぶせ物を作ることが、結果として噛み合わせの改善や歯の健康につながるというのが私たちの信念です。患者さんをよく理解できるように、当院では歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士など全員が患者さんの口腔内の状況を常に把握できる環境を整えています。
地域の検診にはどのように参画されているのでしょうか。
当院は20歳以上の港区民全員を対象とした成人歯科健診「お口の健診」や、「口腔がん検診」、4~6歳児を対象とした「すこやかちゃんフッ素塗布」の実施歯科医療機関に指定されています。最近では口腔がん検診を受診される方も増えています。口腔がん検診は実施している自治体がまだそれほど多くありません。気になる方はぜひ検診にいらしてください。お口の健康の基本は、検診、早期発見、初期治療が大切です。痛みなどの症状が無くても定期的に検診を受けて頂きたいです。3~4ヵ月に1回、歯石除去など歯のクリーニングをする事も重要です。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

噛み合わせや全身症状を総合的に診る歯科医師は、まだそれほど多くありません。お困りの患者さんが非常に多いと実感していますので、悩みや不安に応えていきたいです。また噛み合わせの悪化を予防する取り組みも重点的に行っていきたいです。患者さんのなかには状況を悲観している方も多くいらっしゃいます。ただ、すべての歯を使って噛めるように治療し、正しい噛み方を実践できれば、悩みの改善を図れるケースは多いです。一般的な歯科診療から噛み合わせの専門治療まで幅広く対応いたしますので、お気軽にご相談いただきたいです。
自由診療費用の目安
自由診療とは聴力測定を含む噛み合わせ診断/8800円 (初診時のみ)
セラミックを用いた補綴治療/6万6000円~
金属床義歯/27万5000円~