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松田 博光 院長の独自取材記事

ひろ訪問クリニック

(福岡市城南区/七隈駅)

最終更新日:2026/06/24

松田博光院長 ひろ訪問クリニック main

福岡市城南区、西鉄バス「神松寺一丁目」停留所のそばに「ひろ訪問クリニック」はある。2026年5月に開院した訪問診療専門のクリニックだ。院長の松田博光(ひろみつ)先生は、鹿児島大学小児外科関連病院で13年間研鑽を積んだ後、福岡で肛門外科にも従事。その後は訪問診療部門の立ち上げにも携わり、豊富な経験を積んできた。約8年間の在宅医療の経験を経て、理想の医療を形にすべく開院に踏み切った。院名は「松田先生」が呼びづらいという声から、下の名前の「博光」にちなんだもの。そんなエピソードにも、穏やかな笑顔で常に患者に寄り添う先生の温かな人柄がにじんでいる。「医療に正解はない。だからこそ、その人が望む医療を届けたいんです」と語る松田院長に、在宅医療への思いや診療の特色について聞いた。

(取材日2026年5月29日)

新たな分野に飛び込み続けた先にあった訪問診療

先生が医師をめざしたきっかけと、歩みについて教えてください。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック1

祖父が医師だったこともあり、物心ついた頃から医師への憧れがありましたね。大分大学医学部卒業後は、鹿児島大学の小児外科関連病院に進みました。大学時代はテニスに打ち込む体育会系で外科系に興味があったことに加え、子どもが好きだったことから、外科の中に小児外科という分野を見つけて飛び込みました。以来13年間、食道閉鎖症やヒルシュスプルング病といった赤ちゃんの手術を中心に研鑽を積みながら、大人の胃がんや大腸がんの手術にも携わりました。鹿児島の他、宮崎や東京、神奈川と医局の異動で各地の関連病院で経験を重ね、日本外科学会外科専門医と日本小児外科学会小児外科専門医を取得しました。

その後も多分野で研鑽されたと伺っています。

ええ。小児外科はドクターの数が少ない分野なので、毎日、勤務時間外も呼ばれて駆けつけるような日々が続いていました。新たな可能性を模索していたところ、大学の先輩に声をかけていただき、福岡の山王病院に移ることになったんです。そこには肛門疾患を専門にされる先生方がいらっしゃって、「それなら痔の手術を教えてください」と飛び込みました。小児外科で手術の技術は身につけていたものの、肛門外科はまったく新しい世界で新鮮でしたね。イボ痔やあな痔といった痔疾患の手術や治療に加えて便秘治療にも幅広く取り組み、日本大腸肛門病学会大腸肛門病専門医の資格を取得しました。新しい分野に出会うたびに一から学ぶことの面白さを感じた、充実した時期でもありました。

では、どのような経緯で訪問診療に携わるようになられたのでしょう。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック2

2018年に勤務先の病院で訪問診療部門が立ち上がることになり、手を挙げました。手術や外来とはまったく違う世界で、保険の仕組みや記録の書き方、ケアマネジャーさんとの連携まで一から学ぶ日々。ただ、すべてを自分に任されるという責任感とやりがいは大きかったです。約8年間の経験を積む中で、理想とする医療を形にしたいという思いが強くなり、2026年5月に訪問診療専門の当院を開きました。対象エリアは城南区・西区・早良区で、すぐ駆けつけられる範囲に絞っています。クリニック名は「松田先生」が言いづらいという声から、下の名前「博光」にちなんで名づけました。外来にも対応はしていますが、完全予約制となっております。

外来でできることは自宅でも。看取りまで寄り添う

訪問診療ではどのような医療を受けることができますか。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック3

基本的には、これまで外来で受けてきた医療をそのままご自宅で受けられるとお考えください。例えば認知症の方であれば定期的な血液検査や転倒時の外傷処置を行いますし、骨折が疑われる場合は専門の医療機関をご紹介します。寝たきりの方には褥瘡(床ずれ)の処置を行う他、胃ろうや気管切開、人工肛門、尿道カテーテルといった各種管理にも対応しています。さらに胃がんや大腸がんなど消化管がんの術後管理や、終末期の緩和ケアも行えます。心電図やエコー検査はご自宅でも実施可能で、エックス線を除けばほぼ外来と同等の医療を届けることができます。加えて肛門外科の経験を生かし、痔疾患への助言や便秘の治療にも幅広く対応しています。

在宅でのお看取りに不安を感じるご家族も多いかと思いますが、実際はいかがでしょう。

在宅でのお看取りに携わる上では、苦痛の少ない穏やかな最期をめざすことを大切にしていますので、ご安心いただければと思っております。眠っているのか、呼吸が止まっているのかわからないほど、静かに旅立っていただけるよう努めています。ご家族には「一晩中交代でそばにいる必要はないですよ」とお伝えしています。夜は普通にお休みになって、翌朝おはようと声をかけたときに静かに息を引き取っていたとしても、それはご本人にとって穏やかな最期だったということ。病院のように心電図モニターで何時何分と時刻が決まるのではなく、ご家族が気づいたときに確認するような自然なお別れです。ですから、例えば看取りのあとにそばでは涙を流されることはあっても、少し離れると笑顔が見られるような、和やかな空気になることもあると思います。

お仕事を続けながらでも在宅での介護は可能なのでしょうか。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック4

十分に可能です。ご家族が普段通り朝出勤して夕方帰ってくる生活の中で、日中は訪問看護やホームヘルパーなどのサービスが入れ替わりで対応しますので、介護のために生活を大きく変える必要はありません。独居の方でも、行政や地域の支援を組み合わせれば在宅療養を続けることができます。老老介護の世帯や一人暮らしであれば、医療面だけでなく生活の中の困り事の相談にも乗りながら、家族に次ぐ家族のような存在であることができれば、と。小児外科の頃はお母さんと密に接する機会が多かったのですが、その経験が今の患者さんやご家族との向き合い方にも生きていると感じます。スタッフが少ない分、ケアマネジャーさんや訪問看護師さんとの連携もスムーズに進むと感じています。

医療に正解はない。その人が望む医療を届けたい

診療において大切にされていることを教えてください。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック5

これまでたくさんの経験を積んできて思うのは、「医療に正解はない」ということです。一人ひとり望む医療は違いますから、患者さんやご家族が求める医療を届けることが、その方にとっての最良だと考えています。ですから、こちらから「絶対にこうした方がいい」と押しつけることはまずありません。ご本人とご家族の意見が異なる場面では、それぞれのメリット・デメリットを丁寧にお伝えし、双方が納得できる方向を一緒に探していきます。例えば終末期に「最後までお寿司が食べたい」とご本人がおっしゃるなら、できる限りその思いをかなえて差し上げたい。多職種との連携でも、私はチームを引っ張るというよりも、ご家族や看護師、ケアマネジャーさんなど皆さんの意見をまとめる役割でありたいと思っています。

大切にされていることや、思い描くクリニック像はありますか。

自分が診られる範囲で、すべての患者さんに直接関わり続けていきたいというのが一番大切にしていることです。エリアを広げたり医師を増やしたりするのではなく、クリニックと自宅の間ですぐに駆けつけられる距離を保ちながら、一人ひとりに丁寧に寄り添う医療を深めていきたいと考えています。大きな組織で幅広く診るというよりも、顔の見える関係の中で患者さんの暮らしごと支えていけるクリニックでありたいですね。加えて、元小児外科医としての経験を生かした小児在宅医療にも関心を持っています。この分野はこれから携わっていきたいと考えている分野ではありますが、気管切開や胃ろうの管理など対応可能な処置もありますので、ご相談いただければぜひお力になりたいと思っています。

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

松田博光院長 ひろ訪問クリニック6

元気なうちに、どのような最期を迎えたいかをご家族と話してみてください。30代でも40代でも、決して早すぎるということはありません。かしこまって、「人生会議をしましょう」と構える必要はなく、普段の会話の中でさりげなく「もしものときはどうしたい?」と聞いてみるだけで十分です。一度決めたことも、状態の変化に応じてその都度変わっていいですし、何度でも更新していけばいいと思います。ご自宅での療養にご不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんが、訪問診療を上手に活用すれば在宅で療養生活を送ることは十分に可能です。迷われている方がいらっしゃれば、まずはお気持ちをお聞かせいただければと思います。