出口 孝史 院長の独自取材記事
うぐいす内科クリニック
(福岡市城南区/高宮駅)
最終更新日:2026/07/01
下長尾バス停から徒歩5分。白を基調とした外観の「うぐいす内科クリニック」は、2026年5月に開院した。1階が外来、2階が透析治療を行うフロアという構成で、内科と透析治療の2本柱で地域の健康を守っている。院長の出口孝史先生は長崎大学卒業後、九州大学病院をはじめ、複数の総合病院で腎臓内科医として約20年にわたり研鑽を重ねてきた。「患者の状態に合わせて人工透析の条件を調整する」と話し、厳しい食事制限に頼らない新しい透析治療の形を追求する。穏やかな語り口ながら、理想の医療を実現しようとする意志が伝わる出口院長に、開業の経緯や診療方針、チーム医療への思いを聞いた。
(取材日2026年5月26日)
腎臓内科ひと筋20年、理想の医療を形にする
クリニックを開業された経緯をお聞かせください。

腎臓内科医として20年近く、福岡県内を中心に複数の総合病院で経験を積んできました。その中で、理想とする透析治療や腎臓病の治療の形が自分の中に少しずつできあがっていったのですが、勤務医の立場ではなかなか具現化が難しいと感じる場面もありました。自分の手でクリニックを持ち、思い描いてきた医療をしっかり形にしたいという思いが開業の一番の原動力になりましたね。場所を決めるにあたっては、透析治療を行う施設の分布を地図にすべてプロットして調べました。透析治療は1日おきに通院が必要な治療ですから、近くに施設があるかどうかは患者さんの生活に大きく関わります。この地域には施設が少なく、ここにクリニックを開くことが地域のためになると考え、2026年5月の開院に至りました。
医師を志されたきっかけや、腎臓内科に進まれた経緯を教えてください。
子どもの頃からパズルやプラモデルが好きで、運動よりも読書や勉強のほうが性に合っていました。親の勧めもあって医師の道を選んだのですが、転機になったのは医学部の病棟実習です。腎臓は体液のバランスを司る臓器で、点滴の量を変えると体内のミネラルにも影響が出ますし、薬を使うと体重にも変化が現れます。そうした計算や組み立てがたいへん興味深く、学生のうちに腎臓内科へ進もうと決意しました。卒業後は福岡出身ということもあり九州大学病院で初期研修を受けました。その後は大学医局の人事で製鉄記念八幡病院や聖マリア病院、宗像医師会病院、浜の町病院、山口赤十字病院と、複数の総合病院の腎臓内科で研鑽を積んでいます。
クリニック名の由来や、施設づくりで工夫された点を教えてください。

当院の名前は、あえて自分の名前を冠さず「うぐいす内科クリニック」としました。決して自分の独りよがりではなく、患者さんのため、地域の方のため、そしてスタッフのためのクリニックでありたいという思いからです。ウグイスは福岡県の県鳥であり、山も近く自然が豊かなこの土地の雰囲気にもなじむと考えました。施設は1階が外来、2階が透析治療スペースで、透析治療用のベッドは半個室40床と感染症対応の完全個室1床の計41床を備えています。透析治療は1回あたり4~6時間ほどかかりますので、各ベッドにモニターを設置し無料の無線LANも完備しました。また、チェアベッドも採用し、透析中も仕事をしたいビジネスマンや腰痛持ちの方にも治療の時間を快適に過ごしていただけるよう環境を整えています。
厳しく制限せず「食べて・動いて・透析治療」をめざす
先生がめざす透析治療について詳しくお聞かせください。

従来の透析治療では、たんぱく質や塩分はもちろん、カリウムを多く含む野菜や果物も厳しく制限するのが一般的でした。当院ではその考え方を見直し、まずはしっかり食べてもらうことを大切にしています。栄養やビタミン、食物繊維をきちんと取った上で、体にたまった毒素をしっかり取り除くために、食べた分に応じて人工透析の量を調整します。先に透析治療があるのではなく、患者さんの状態や食事の量に合わせて透析治療の条件を後から変えていくというのが当院のコンセプトです。体格が40キロの方と100キロの方とでは、当然ながら透析治療の条件も変わるべきだと考えています。「食べて、動いて、透析治療」の3つを柱に、一人ひとりに合った治療を心がけています。
透析治療に加えて、内科診療への思いもお聞かせください。
透析治療が必要な状態にならないことが、患者さんにとっては一番です。私は腎臓内科医であると同時に生活習慣病全般を専門としていますので、その知識や経験を予防にしっかり生かしていきたいと考えています。腎臓病の根本には動脈硬化があります。高血圧や糖尿病、コレステロールや尿酸の値が高い状態が続くと血管が硬くなり、血流が落ちて腎機能が低下し、透析治療が必要な状態に至ることも……。さらに透析治療を始めてからも動脈硬化は進行し、脳梗塞や心筋梗塞といった合併症のリスクが高まります。つまり透析治療の前も後も、動脈硬化の予防が共通の大きな柱なんです。だからこそ内科も専門的に提供する場所にすると決めました。風邪や腹痛といった日常的な不調にも対応しながら、80歳、90歳になっても自分の足で歩ける体を一緒にめざしていきたいと思っています。
患者さんのために工夫されていることがあれば教えてください。

透析治療を受ける患者さんとは1日おきに顔を合わせますので、親戚よりも会う回数が多いくらいです。それだけ長く深いお付き合いになりますから、医療の話に限らず、日々の悩み事やちょっとした世間話まで何でも気軽にお話しいただけるよう、話しやすい雰囲気づくりを心がけています。設備面では院内に手術室を設けており、シャントと呼ばれる透析治療用の血液の通り道を腕に作るための手術や、狭くなった血管を広げるための「PTA」という処置を日帰りで受けていただけるようにしました。20年近くかけて総合病院で培ってきた技術を生かし、入院の負担なく対応できる体制を整えています。通院のみで済むことは、透析治療と向き合う患者さんにとって大きな支えになると思います。
疾患の予防のため内科にも注力。地域のかかりつけ医に
一緒に働くスタッフの方々について教えてください。

本当にいいスタッフに来ていただきました。私の思いも理解してくれる上、患者さんともよく接してくれていて、心から助かっています。現在は看護師が5人、臨床工学技士が4人、事務スタッフが4人というチーム体制です。半数以上は透析治療に携わった経験を持つスタッフで、知識や技術の面でも頼りになる存在です。クリニックを設計する際にはスタッフルームやバックヤードもしっかり確保しました。患者さんのためだけでなく、スタッフにとっても働きやすい環境を整えることが、クリニック全体の温かい雰囲気につながると考えています。院内外にある掲示板は元保育士のスタッフが季節感のある飾りで彩ってくれていますので、来院された方に気持ち良く過ごしていただけるのではないでしょうか。
今後の展望や、地域に向けた取り組みについてお聞かせください。
この地域に「うぐいす内科クリニック」がなくてはならない、そう思っていただけるクリニックに育てていきたいと考えています。地域の皆さんの健康を支えることはもちろんですが、それだけにとどまらず、町の活性化にも何かお役に立てることがないかと模索しているところです。具体的な取り組みの1つとして、私自身が医療コラムを作成し、患者さんに手渡したり院内外の掲示板に掲示したりしています。テーマは頭痛や不眠、頻尿、骨粗しょう症、動脈硬化、塩分や水分の取り方など幅広く、数十種類を用意しました。透析治療を受ける方にも内科を受診した方にも、それぞれの状態に合った内容をお渡ししています。今後は健康診断にも対応しながら、予防の段階から地域の皆さんの健康を一貫して支えていければと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は動脈硬化の予防に力を入れています。若々しく健康的に年を重ねていきたい、病気を未然に防ぎたいとお考えの方には、ぜひ症状が出る前の段階からご相談いただければと思います。動脈硬化はなかなか自覚症状が現れにくいのが特徴で、気づかないうちに進行していることも珍しくありません。だからこそ健診を定期的に受けていただき、何か異常が見つかったら自覚症状がなくても早めに受診していただきたいのです。症状が出てからでは遅い場合もありますから。風邪や腹痛といった日常的な体調の変化はもちろん、生活習慣が少し気になり始めたという段階でも構いません。気軽に相談していただける身近な存在でありたいと考えています。

