妊娠・出産を望むならば
まずは甲状腺ホルモンをチェック
ひるま甲状腺クリニック 蒲田
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2025/07/09


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バセドウ病や橋本病は女性に多い病気。そう聞くと、妊娠や出産への影響が気になる人も少なくないだろう。実際、甲状腺ホルモンは多すぎても少なすぎても、流産や妊娠合併症のリスクを高め、子どもの成長後の知能の発達に影響することがある。だからこそ、妊娠を考えるなら、まずは自分の甲状腺の状態を把握しておくことが重要だ。機能に異常がある場合は、事前にコントロールしておく必要がある。今回取材したのは、「ひるま甲状腺クリニック 蒲田」の蛭間重典院長と蛭間真梨乃副院長。甲状腺疾患が妊娠・出産にもたらす影響とは何か。そして、そのリスクにどう立ち向かうべきか。同院が取り組む治療とサポートについて話を聞いた。
(取材日2025年6月19日)
目次
妊娠・出産に影響するバセドウ病や橋本病。安心して出産に臨むために、まずは甲状腺の状態を確認
- Q甲状腺ホルモンの病気について教えてください。
-
A
▲女性特有の症状をきめ細かに診察する蛭間副院長
【重典院長】甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールする重要なホルモンです。その分泌が過剰になりやすい体質に「バセドウ病」、逆に分泌が低下しやすい体質に「橋本病」があります。ホルモンが過剰だと、動悸、息切れ、体重減少、イライラ感といった症状が現れます。逆にホルモンが不足すると、意欲の低下や抑うつ、物忘れ、むくみなどが見られます。どちらの場合も、共通して「疲れやすさ」を訴える方が多いのが特徴です。
【真梨乃副院長】発症には男女差があり、当院の患者さんの約8割は女性です。軽度で自覚症状のない方も含めれば、女性の約10人に1人が橋本病といわれるほど。見逃されやすいけれど、実はとても身近な病気です。
- Q女性に多いのですね。妊娠・出産に影響しますか?
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A
▲エコー検査など、予防や早期発見のために幅広い検査に対応する
【重典院長】はい。甲状腺ホルモンの値が高すぎても低すぎても、流産のリスクが高まるだけでなく、さまざまな妊娠合併症に影響を及ぼすことが報告されています。例えば、バセドウ病の母体では、甲状腺に対する自己抗体が胎盤を通過し、胎児の甲状腺を刺激して、一時的に“バセドウ病のような状態”を引き起こすことがあります。一方で、母親が服用しているお薬も胎児に届きますが、その影響の程度を測る方法はありません。重要なのは「母体のホルモン値が安定していても、胎児が同じとは限らない」という点です。母親の甲状腺機能だけを見て安心するのではなく、胎児の甲状腺機能を推定し、それに応じた慎重なコントロールが必要なのです。
- Qこちらでの、妊娠中の治療やサポートについて教えてください。
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A
▲必要に応じて採血などの検査も可能
【重典院長】妊娠中は、患者さん自身の健康と胎児への影響の両方を考慮して、ホルモン剤や抗甲状腺薬を繊細に調整する必要があります。それには薬の特性への深い理解と、精密な検査データに基づく判断が欠かせません。当院では、妊娠中や産前産後の甲状腺機能管理について多くのデータを集積している伊藤病院と同等の検査機器を備え、綿密な治療体制を整えています。
【真梨乃副院長】妊娠中は、どなたでも気持ちが不安定になりやすいものです。当院では受付や医療スタッフが全員女性で、プライバシーに配慮しながら、温かく丁寧な対応を心がけています。院内は全体的に丸みのあるデザインで、リラックスできる空間づくりを大切にしています。
- Q甲状腺ホルモンの病気は、出産後の体調にも影響しますか?
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A
▲安心して相談できる雰囲気づくりを大切にする
【重典院長】はい。橋本病の場合、産後は甲状腺に炎症が起こってホルモンが漏れ出てしまう「無痛性甲状腺炎」や、橋本病からバセドウ病へ病気が切り替わってしまうリスクがあります。一方でバセドウ病の方は、妊娠中は免疫力が落ちることによって自己免疫性疾患であるバセドウ病の病勢はやや落ち着く傾向にありますが、産後はその状態が元に戻るので、一見すると増悪したかのように感じるかもしれません。しかしながら事前にこの一連のリスクを知っておいていただければ、産後の体調変化に過度な不安を感じることはないでしょう。いずれにしても産後1年間は甲状腺ホルモンの状態が変化しやすいため、しっかりと経過を診ていく必要があります。
- Q自分のホルモンの状態を知っておきたいのですが……。
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A
▲女性患者が気軽に来院できるよう内装にもこだわっている
【真梨乃副院長】最近では産婦人科でも妊娠を希望する方に甲状腺疾患の検査をされていて、そこでバセドウ病や橋本病の体質だと初めてわかる方も多いです。その場合、産婦人科の先生と協力しながら治療を進めていくことになります。また当院でも甲状腺の精密検査を行っていますので、気になることがあれば、些細なことでも気兼ねなくご相談ください。
【重典院長】もしホルモン値が高かった場合、治療の選択肢は、飲み薬、甲状腺の委縮を図るための放射線、除去手術の3つです。妊娠した際の赤ちゃんへの影響を考えると、事前に放射線治療や手術を受けて「妊娠中に甲状腺が暴れださないように手を打っておく」というのも方法の一つですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは甲状腺精密検査/1万円~