蛭間 重典 院長、蛭間 真梨乃 副院長の独自取材記事
ひるま甲状腺クリニック 蒲田
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2026/06/17
「ひるま甲状腺クリニック 蒲田」の蛭間重典院長と蛭間真梨乃副院長は、ともに甲状腺疾患を専門として研鑽を積んだスペシャリスト。東邦大学医療センター大森病院や甲状腺疾患を専門とする伊藤病院で培った知識と技術を生かし、患者一人ひとりに寄り添う医療を提供している。甲状腺疾患は患者の多くを女性が占めることから、来院した瞬間から安心できるよう空間づくりにもこだわった。内装にはやわらかな色合いや丸みのあるデザインを取り入れ、緊張を和らげる温かな雰囲気を大切にしているという。「症状があいまいで受診をためらう方も多いからこそ、不安に丁寧に寄り添いたいと思っています」と、語る重典院長と真梨乃副院長に、開業の経緯や診療の様子、地域での役割などについて話を聞いた。
(取材日2026年3月30日)
橋本病やバセドウ病など甲状腺疾患専門のクリニック
2025年の開業だそうですね。

【重典院長】はい。「患者さんを自分の手で長く見守っていきたい」、その思いが開業の一番の理由です。開業前は大学病院や甲状腺疾患の専門病院で診療し、症状が落ち着いた患者さんはかかりつけ医へ引き継ぐのが一般的でした。医療体制としては正しい流れではありますが、その後の様子が気になっても直接フォローできないもどかしさを感じていました。患者さん一人ひとりにもっと寄り添い、病状の波や生活の変化も含めて長期的に支えられる場所をつくりたいと思い、開業を決意しました。
【真梨乃副院長】院長も私も、東邦大学医療センター大森病院で長く診療してきましたので、ここ蒲田エリアにとても愛着を感じています。どこか懐かしく、肩の力を抜いて暮らせるような優しい雰囲気のあるこの街で、より良い医療を提供していきたいと思っています。
お2人とも甲状腺の病気を専門とされているのですね。
【重典院長】甲状腺は首の前側にあるチョウのような形の臓器で、代謝を調整する甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺の病気には、ホルモンの分泌が低下して代謝が下がる橋本病や、逆に過剰に分泌されて代謝が高まるバセドウ病などがあります。この他、しこりができる甲状腺腫瘍もあり、多くは良性ですが悪性の可能性もあります。甲状腺の病気は珍しくありませんが、症状が特徴的ではなく、この分野を専門とする医師も少ないため、他の病気と間違えられたり見逃されたりすることもあります。当院では私と副院長がともに甲状腺を専門に研鑽を積んできました。また、副院長は細い針でしこりの細胞を採取し、良性か悪性かを調べる「穿刺吸引細胞診」という検査のスペシャリストでもあります。専門性の高い診断・治療を行っておりますので、気になる症状があればぜひご相談ください。
どのような症状で受診される方が多いですか?

【重典院長】甲状腺のしこりや腫れの他、疲れやすさや気分の落ち込みなど、はっきりしない不調で来院される方が多いです。他にも動悸やむくみ、体重の変化など症状が多彩なため、更年期や自律神経の乱れ、うつ病、心臓や腎臓の病気などを疑って他科を受診し、なかなか診断がつかずつらい思いをされている場合もあります。ただ最近は、生成AIで症状を調べて甲状腺の病気の可能性を指摘され、他科を経由せず当院を直接受診される方も増えています。
【真梨乃副院長】大学病院からの紹介で、一般内科では対応が難しい遺伝子異常の患者さんや下垂体手術後で複数のホルモン補充が必要な方の診療も行っています。また、専門の医師が少ない分野のため、青森や広島など遠方から通院される方もおられます。身近なクリニックで専門の医師が2人在籍する施設は限られているため、少しでもお役に立てればと思っています。
女性のライフステージに寄り添う診療を展開
クリニックの特徴を教えてください。

【重典院長】バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患は女性に多く、月経異常や不妊、流産の原因となることもあります。妊娠を希望される方や妊娠中の方にとって、甲状腺ホルモンの適切な評価と管理はとても重要です。近年はブライダルチェックや妊婦健診で甲状腺機能検査の機会も増えており、当院でも精密検査に対応しています。また、妊娠・授乳期はホルモン環境の変化により内科疾患のリスクも高まるとされています。私は慢性疾患を持つ女性の妊娠や妊娠合併症の診療についても学んでおり、妊娠・周産期における甲状腺機能管理にも力を入れています。
【真梨乃副院長】生理の変化や妊娠・出産、更年期といったライフステージの中で、甲状腺の働きが体調に与える影響は大きいものの、見過ごされがちです。「なんとなく不調だけれど、誰に相談すべきかわからない」と感じる方に同じ女性として寄り添い、共感しながら診療できることに大きな意味を感じています。
甲状腺専門の医師にかかるメリットは何でしょうか?
【重典院長】私たちの一番の強みは甲状腺診療に関する豊富な経験により、患者さんごとに適切な選択肢を提案できる判断力だと考えています。薬の量を調整するタイミング一つとっても、患者さんの体調やホルモン値の動き、生活背景などを総合的に判断する必要があります。また、バセドウ病の治療で使用する抗甲状腺薬には多彩な副作用が出ることもあります。教科書的には副作用が出た時点で投薬中止ですが、そうすると放射線治療や手術しか選択肢がなくなってしまいます。副作用の程度を見極めて、副作用を抑えるための薬を併用しながら投薬を継続するのか、それとも撤退するかの判断が重要になります。これは、机上では学べない「臨床のさじ加減」です。そして、その判断を支えるのが、これまで診てきた多数の症例経験だと思っています。
その他にもクリニックの強みはありますか?

【真梨乃副院長】甲状腺には内科と外科があり、バセドウ病や橋本病などのホルモン異常は内科が、しこりや腫れなどの腫瘍は外科が診療することが一般的です。当院では甲状腺内科としてきめ細かなホルモン管理を行いながら、腫瘍の診断にも対応しています。私は穿刺吸引細胞診の専門家であり、院長は甲状腺専門病院で数多くのしこりの画像を読影するなど画像診断に関しても研鑽を積んできました。内科・外科の領域を横断して診療できる点も当院の強みだと思っています。
患者との距離が近い、長く愛されるクリニックに
近隣の不妊治療クリニックとも連携されているそうですね。

【重典院長】はい。妊娠を望む女性には甲状腺刺激ホルモン(TSH)の評価や管理が重要なため、ガイドラインの改訂など新たな知見が出た際には、近隣の不妊治療クリニックと情報を共有し、患者さんの不安軽減に努めています。また、更年期など女性ホルモンの不調と甲状腺疾患は症状が重なることも多く、一般内科や婦人科の医師からの相談にも対応しています。さらに、甲状腺医療全体の質向上にも貢献していきたいと考え、勉強会や講演会の他、金沢医科大学の非常勤講師として医学生への甲状腺学講義を担当するなど、さまざまな活動に取り組んでいます。
他に力を入れている取り組みはありますか?
【真梨乃副院長】当院は福島県の県民健康調査における甲状腺二次検査に対応しています。これは東日本大震災当時に子どもだった世代の健康を長期的に見守る公的事業です。二次検査の結果、穿刺吸引細胞診を提案されることもありますが、細胞診を行える医療機関は全国的にも限られています。進学や就職で関東に移る方も多く、東京でも検査を受けられる医療機関の存在は重要で、社会的意義の大きい取り組みとして今後も継続していく予定です。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

【重典院長】甲状腺疾患と糖尿病はいずれも内分泌代謝疾患ですが、当院はあえて糖尿病は扱わず、甲状腺領域に特化しました。専門の医師として患者さん一人ひとりに適した治療を丁寧に見極めることが私たちの役割だと考えています。現在は副院長の外来は週1回ですが、今後は副院長の外来日を増やし、より多くの患者さんに対応できる体制を整えていく予定です。難しい内容もわかりやすく説明いたしますので、気になることがあれば遠慮なくご相談ください。
【真梨乃副院長】「ちょっと気になるから寄ってみた」と、気軽に足を運んでいただける、患者さんとの距離が近いクリニックが理想です。患者さんが話したいことをすべて「置いて帰れる」ように、どんなことでも安心して話せる雰囲気づくりを大切にしています。地域の方々に長く愛されるクリニックに育て、私たち自身が年を重ねても、変わらず2人で並んで診療を続けていきたいと思っています。

