蛭間 重典 院長、蛭間 真梨乃 副院長の独自取材記事
ひるま甲状腺クリニック 蒲田
(大田区/蒲田駅)
最終更新日:2025/06/27

「ひるま甲状腺クリニック 蒲田」の院長の蛭間重典先生と副院長の蛭間真梨乃先生は、ともに甲状腺疾患を専門として長年の診療経験を重ねてきたスペシャリスト。大学病院や甲状腺専門機関で磨いてきた知識と技術を土台に、患者一人ひとりに寄り添う医療を提供している。甲状腺疾患は特に女性に多い病気であることから、院内は「来院した瞬間から安心できる場所」であるようにと工夫を凝らし、スタッフは全員女性で構成され、やわらかい色合いの内装や丸みを帯びたインテリアが、緊張を和らげる温かな空間をつくり出している。「症状があいまいで受診をためらう方も多い甲状腺疾患だからこそ、不安な気持ちに丁寧に寄り添いたい」と話すふたりに、開業に込めた想いや、専門クリニックを受診する意義について話を聞いた。
(取材日2025年5月19日)
甲状腺疾患に特化した専門クリニック
まずは、開業した理由についてお聞かせください。

【重典院長】「患者さんを、自分の手で長く見守っていきたい」その思いが開業の一番の理由です。これまでは、大学病院や甲状腺の専門病院で診療を続けてきました。専門の外来では、症状が落ち着いた患者さんはかかりつけ医に引き継ぎ、再び調子を崩したときに戻ってきていただくという流れが一般的でした。もちろん、それ自体は医療体制として正しい形ではあるのですが、夜ふと「あの患者さん、今ごろ元気にしているかな」と気になることがよくありました。直接的なフォローができないもどかしさを感じることも少なくありませんでした。「もっと一人ひとりの患者さんに寄り添い、病状の波も生活の変化も含めて長期的にサポートできる場所をつくりたい」その思いから、このクリニックを開業することにしました。
蒲田にはもともとご縁があったのですか?
【重典院長】はい。私は東邦大学の出身で、学生時代からずっと蒲田にお世話になってきました。もう人生の半分以上を、この地域で過ごしていることになりますね。この土地には、学生時代からの仲間やお世話になった方々もたくさんいますし、これまでの恩返しもかねてと、開業の地として迷いなく蒲田を選びました。
【真梨乃副院長】私は大森病院に入局してから蒲田に住むようになりましたが、初めて来たときから「どこか懐かしくて落ち着く街だな」と感じていました。どの世代の方にも優しくて、肩の力を抜いて暮らせる、そんな雰囲気がとても好きです。
かわいらしい内装ですね。こだわったのはどんなところですか?

【真梨乃副院長】内装で特に意識したのは、「角をなるべく減らすこと」です。部屋の入り口にはアーチ型の装飾をつけたり、床材も直線ではなく丸みを帯びたデザインにしたりして、全体としてやわらかく温かみのある印象になるよう工夫しました。また、診察室や検査室の扉には、ちょっとしたイラストをあしらっています。私のお気に入りは、採血室の扉です。上下に大きな抜けのある、幼稚園などで使われているようなデザインを採用し、かわいらしいノブをつけました。ちょっとワクワクするような、“楽しいところに入っていく”気持ちになってもらえたらうれしいです。
専門病院で積んだ経験を患者に還元
お二人のご経歴について教えてください。

【重典院長】私も副院長も、臨床研修を修了した後、東邦大学医療センター大森病院の代謝内分泌科に入局し、さらに甲状腺疾患の専門病院として知られる伊藤病院で研鑽を積みました。伊藤病院では、学術顧問の吉村弘先生と内科部長の渡邊奈津子先生のご指導のもと、甲状腺学の基礎から実践まで、徹底的に学ばせていただきました。特に、バセドウ病や甲状腺がんの研究に携わる機会をいただいたことは、病態を基礎から深く考える貴重な経験となりました。
また現在は、金沢医科大学からのご依頼を受け、非常勤講師として3年生から6年生の医学生への甲状腺学講義を一任されています。学生との対話を通じて得られる新たな視点や問いかけには、私自身も常に刺激を受けています。こうした教育や研究で得た学びを、日々の診療に還元し、患者さんにより良い医療を提供していきたいと考えています。
なぜ甲状腺を専門にしようと思われたのですか?

【重典院長】医師としての技量が、患者さんの症状に直結するという点に強くやりがいを感じたからです。甲状腺の治療薬は、薬の特性を深く理解しなければ、治療に大きな差が出る可能性があります。「もっと早く先生に出会いたかった」と言っていただけることが何よりうれしい一方で、甲状腺を専門とする医師の需要に対して供給が追いついていない現状をいつも痛感させられてきました。
【真梨乃副院長】私が甲状腺を専門に決めたのは、甲状腺疾患が女性に多い病気であり、女性として共感できる部分が多いと感じたからです。生理の変化、妊娠・出産、更年期といったライフステージの中で、甲状腺の働きが体調に与える影響は大きく、けれども見過ごされがちです。「なんとなく不調だけど、誰に相談していいかわからない」と感じる方に、同じ女性として寄り添い、気持ちに共感しながら診療できることに大きな意味があると感じています。
高い専門性を持つからこそできるオーダーメイド治療
甲状腺を専門とする医師にかかるメリットは何でしょうか?

【重典院長】私たちの一番の強みは甲状腺診療に関する豊富な経験により、患者さんごとに最善の選択肢を提案できる判断力だと考えています。薬の量を調整するタイミング一つとっても、患者さんの体調やホルモン値の動き、生活背景などを総合的に判断する必要があります。また、バセドウ病の治療で使用する抗甲状腺薬には多彩な副作用が出ることも。教科書的には副作用が出た時点で投薬中止ですが、そうすると放射線治療や手術しか選択肢がなくなってしまいます。副作用の重症度合を見極めて、他の薬で副作用を抑えながら投薬を継続するのか、それとも撤退するかの判断が重要になります。これは、机上では学べない「臨床のさじ加減」です。そして、その判断を支えるのが、これまで診てきた多数の症例経験だと思っています。甲状腺を専門とする医師として、患者さん一人ひとりに最も適した治療方針を丁寧に見極めていくことが、私たちの役割だと考えています。
診療では、お二人とも「患者さんに寄り添うこと」を大切にされているそうですね。
【重典院長】はい。まず何より大切にしているのは、わかりやすい説明です。甲状腺疾患は長く付き合っていく必要のある病気です。だからこそ、患者さんご自身が病気のことを理解し、自分の状態を把握しておくことがとても大切になります。医学的な説明が難しく感じられるときには、身近なものに例えてお話しし、少しでも「わかる」「納得できる」と感じていただけるよう工夫しています。
【真梨乃副院長】私が大切にしているのは、患者さんが話したいことをすべて「置いて帰れる」診察室であることです。「ちょっと気になること」「誰にも言えなかったこと」なども、安心して話していただける雰囲気をつくりたいと思っています。そのためには、診察室に入ってこられたときの表情や動作、声のトーンなどをよく観察しながら、こちらの話し方やスピードも自然と変えるように意識しています。
今後、どのようなクリニックをめざしますか?

【重典院長】何よりも、この蒲田の地で、患者さんの人生に長く寄り添っていくことが目標です。甲状腺疾患は一時的な治療で終わる病気ではなく、ライフステージに応じて変化していく体の状態を継続的に見守っていく必要があります。だからこそ、長く通っていただける信頼の場でありたいと思っています。
【真梨乃副院長】私も、地域の方々に長く愛されるクリニックに育てていきたいという気持ちがあります。「ちょっと気になるから寄ってみた」と気軽に来ていただけるような、患者さんとの距離が近いクリニックが理想です。今はまだ診療日が限られていますが、将来的にはもっと多くの患者さんと関わり、女性ならではの視点や共感を生かした診療を続けていけたらと思っています。いずれは、私たち自身がおじいさん・おばあさんになっても(笑)、変わらず2人で並んで診療を続けていけることが、私たちのめざす未来です。