守重 昌彦 理事長の独自取材記事
ぜんしん整形外科
(昭島市/昭島駅)
最終更新日:2024/12/13
昭島の緑豊かな住宅街の中にある「ぜんしん整形外科」。立川駅前でクリニックを営んできた守重昌彦理事長が、長年の夢をかなえて2024年9月に開業した有床診療所だ。目標としているのは診断から手術、リハビリテーションまでを高いレベルで提供すること。関節鏡視下手術をメインとして、肩・腰・背骨などのさまざまな疾患を根本的な解決がめざせるのを強みとしている。広々としたリハビリルームには理学療法士が常駐している。クリニック名をあえてひらがなにしているのは、5つの「ぜんしん」を大切にしているからとのこと。具体的には何を意味しているかなど、守重理事長に詳しく話を聞いた。
(取材日2024年11月14日)
診断から手術・保存療法・リハビリまでが院内で完結
まず、医師になったきっかけやご経歴を教えていただけますか。
祖父が立川で開業していて地域の方々のために働く姿を見て育ったので影響は受けていますが、子どもの頃は医師志望ではありませんでした。医学の道に進むきっかけになったのは、高校のソフトテニス部で味わった、半月板損傷により大事な試合のレギュラー入りを逃すという苦い経験でした。自分のように悔しい思いをする子をなくしたい一心で、医師というよりは「整形外科の医師」になろうと決意したのです。神戸大学卒業後は東京大学整形外科に所属し、系列の大規模病院に勤務。スポーツ障害に早期から注力してきた関東労災病院、武蔵野赤十字病院整形外科、神戸のあんしん病院などで、数多くの手術を経験し、2018年に立川に本院を立ち上げました。
なぜ、立川に続き昭島にも開業しようと思ったのでしょうか。
立川院を開業したのは、手術だけではなく診断・保存療法・アフターフォローに至るまで「患者さんを最初から最後までトータルで診たい」と考えたからでした。ただ、立川には手術室がなかったので、手術が必要になった患者さんは近隣の総合病院に入院していただき、私自身が出向いて執刀していました。整形外科では手術の多くは入院が必要ですからね。だからこそ、手術室と入院病棟があるクリニックを開業するのは長年の夢で、立川の患者さんも利用しやすい日野、国立、武蔵村山なども検討しましたが、ご縁があって昭島に開業することができました。手術を強みとしながらも、小さなけがでも地域の方々が気軽に利用できるかかりつけクリニックの機能も持つという2つの顔を大切にしていきたいです。
多職種のスタッフと連携してチーム医療に取り組まれているとか。
医師は常勤2人、非常勤3人がいて、それぞれ脊椎、肩・肘・膝、上肢、エコーによる難治性疼痛・しびれの治療、スポーツ障害、骨粗しょう症などが得意分野。お互いに連携しながら、広範囲にわたって専門性の高い治療を提供しています。一方、常勤の理学療法士は4人いて、広々としたリハビリテーションルームでエコーで筋肉の動きを確認しながらリハビリを行っているのも特色の一つといえるでしょう。また、整形外科領域で欠かせない画像診断に関しても、先進のMRIとCTを導入し、常時2人の放射線技師を配置するなど力を入れています。その他、看護部門や事務部門のスタッフ一人ひとりとコミュニケーションを密に取り、どの患者さんにとっても居心地の良い空間をめざしています。
関節鏡視下手術を中心に膝・肩・脊柱の疾患に広く対応
こちらではどのような手術が受けられるのでしょうか。
メインとしているのは関節鏡視下手術で、肩や膝の疾患を扱うことが多いですね。次によくあるのが肩腱板断裂で、外傷でも起こりますが、普通に生活していても損傷しやすい部位です。70代ともなると30%以上の方が断裂を起こしているというデータもあります。肩腱板に負荷をかけないよう肩甲骨をよく動かし胸椎を丸めないよう、日頃から注意してください。その他、脊柱を専門としている医師もいるので、脊柱菅狭窄症、椎間板ヘルニアなどの手術も可能です。もちろん、手術に抵抗がある方に無理に勧めることはありません。ただ、壊れている部分をそのままにしていては保存療法にも限界があります。整形外科において手術は根本的な解決を図れ、定型的な手術で解消が望める例も少なくないことを、ご理解いただければと思います。
町のクリニックで手術を受けられるのは便利ですよね。
整形外科の手術はよほどの難症例ではない限り、決まった手順がしっかりと確立されています。よくある症例に対する定型的な手術などは、クリニックのほうがむしろ得意ともいえるでしょう。大規模病院は例えるならば戦艦のようなもので、小回りが利きません。一方、われわれは身軽な巡洋艦なので、細かなニーズに柔軟な対応が可能です。大規模病院と比較して少ない手続きでスムーズに手術を受けられるのは、大きなメリットなのではないでしょうか。さらに、当院では全身状態のケアをする麻酔科の医師を院長として、患者さんにより安心していただける体制を整えました。
患者さんに接する時に何を大切にしていますか。
患者さんが何に困っているのかを正しく把握して、きちんと答えを出すことを大切にしています。手術に強みがあるクリニックではありますが、手術をすることだけを目的にしているのではありません。たとえ正確に人工関節を入れられたとしても違和感を訴える患者さんはいるでしょう。そのようなとき「きれいに入ってますよ。問題ないはずです」などと突き放すことはしたくありません。患者さんが求めるゴールに到達するまで寄り添い、できる限りのことをしていきたいと考えています。また、肩の痛みで来院した患者さんを診察してみると、膝の変形のほうがずっと大きな問題という例はしばしばあります。そのような場合も、患者さんの痛みを無視するのではなく、一番お悩みのところから順番に診ていくようにしていますね。
全身を診る診療を常に進化させ善の心で臨む
今後の展望についてお聞かせください。
現在、2つの手術室が稼働していますが、将来的にはもう1室増やしたいと考えています。幸い、手術室はこれまで勤務してきた病院と同じような十分な広さを確保できたので、今後も必要に応じて機器類を導入していきたいです。また、今後ともスポーツ障害には注力していきたいですね。部活動を頑張る子どもたちやアスリートだけではなく、スポーツを楽しむ中高年も増えている時代です。60代から新たなスポーツにチャレンジする人も珍しくありませんが、そうするとどうしてもケガのリスクも高くなります。たとえ、半月板や靱帯を損傷しても再建や縫合を行い、リハビリによって復帰をめざすことも十分可能です。たくさんの人が生涯にわたってスポーツを楽しめるよう、支えていきたいと思っています。
お忙しい毎日ですがリフレッシュ法などはありますか。
ランニングやスキーなどのスポーツでリフレッシュしています。地方のマラソン大会に参加することもありますが、私一人で遠征ばかりしていると家族に不評なので、ほどほどにしています。一方、医師になってから始めたスキーは子どもたちと一緒に楽しんでいます。私はなかなか1級から上に行けていないのですが、そうこうしているうちに小学生の息子が2級を取得。「今年は1級を受ける」と宣言しているので、抜かされてしまうかもしれません(笑)。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
「ぜんしん」というクリニック名には、「全身、前進、善の心、全幅の信頼、すべての心」という5つの意味が込められています。当院は局所ではなく全身を診て、常により良い治療を求めて前進するクリニックです。常に善の心に従って診療し、患者さんから全幅の信頼を得たいと思っています。また、現代日本は物質的に豊かになったにもかかわらず、心が満たされていない人が増えていますよね。すべての人の心が豊かになりますようにという祈りを込めて、日々、患者さんと向き合っています。痛みは心にもつながっていますし、どこか少しでも痛みがあるならば、気軽に相談に来てください。