日帰りで受けられる
腹腔鏡を使った鼠径ヘルニアの手術について
鼠径ヘルニア日帰り手術 広島アルプスクリニック
(広島市東区/広島駅)
最終更新日:2025/01/28


- 保険診療
足の付け根(鼠径部)にピンポン玉ほどの大きさの膨らみが現れる「鼠径ヘルニア」。痛みなどの具体的な症状がなく、押すと戻るなど生活上の支障がないため、受診せず放置している人も多いという。「鼠径ヘルニアの治療方法は手術しかなく、大きくなると手術の難易度が上がり、術後の合併症のリスクも高くなります」と話すのは「鼠径ヘルニア日帰り手術 広島アルプスクリニック」の所為然(ところ・ゆきなり)院長。鼠径ヘルニアは早期に受診することで、忙しい人も受けやすい日帰り手術が可能になる疾患だ。日帰り手術はどのように行われ、どんなメリットがあるのか、同院で取り組んでいる「腹腔鏡を使った鼠径ヘルニアの日帰り手術」について話を聞きながら、手術前後のスケジュールや実際の手術の流れをレポートした。
(取材日2024年12月12日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Q鼠径ヘルニアの治療は手術が必要なのですか?
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A
人のおなかは外側から皮膚、皮下脂肪、筋肉、腹膜の構造で成り立ち、鼠径ヘルニアは腸管が筋肉の隙間から皮膚を押し出すように飛び出した状態です。鼠径部と呼ばれる太ももの付け根は筋肉の隙間が大きく、こうした状態になりやすいことが特徴です。また、加齢などで筋力が低下すると腹圧によって腸管が押し出されやすく、40代以降の男性に多く見られます。治療では筋肉の隙間をふさぐための手術が必要で、薬などによる治療はありません。手術には開腹手術と腹腔鏡手術があり、メッシュと呼ばれる人工素材を入れて隙間をふさぐよう図ります。開腹手術では鼠径部を10mmほど切開、腹腔鏡手術は下腹部に3~5mmの穴を3ヵ所開けて行います。
- Q腹腔鏡手術のメリットを教えてください。
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A
開腹手術では皮膚と皮下脂肪を切開しますが、腹腔鏡手術は手術に伴う傷が小さく、おなかの内側からアプローチして腹膜と皮下脂肪の間に直接メッシュを入れるような手術です。腹腔鏡手術では二酸化炭素でおなかをドーム状に広げる際、筋肉の緊張を緩めるための薬を使うため人工呼吸を行い、全身麻酔下で手術を行いますが、術後、麻酔が覚めてすぐの歩行、排尿も望めるため入院は不要です。腹腔鏡手術は体の負担が少なく、入院に要する時間や費用を抑えることができます。特に高齢者は入院によって認知症が進む懸念がありますから、不要な入院は避けたいところですね。手術の翌日からデスクワークも行えるので、忙しい方にも適しています。
- Q受診回数や手術のスケジュール、費用についても教えてください。
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A
受診回数は、診察と検査のための来院日と手術日の2回が基本です。検査結果に問題がなければ、患者さんのご都合と、当院が対応できる日時を調整し手術日を決定します。通常、血液検査の結果がわかるまで1週間程度必要になるので、1回目の来院と手術日は1週間ほど空きますが、ご希望によっては1週間以内での対応も不可能ではありません。術後は、当日、翌日、3日目に電話またはSNSを利用して体調などを確認します。合併症がないかなどを確認するため、手術後10日目頃に再診していただきますが、ご希望があればオンライン診療でも対応可能です。手術費用は、健康保険適用となり、高額療養費制度により負担が軽くなることもあります。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1診察の予約をして、初回の診察で手術の説明を受ける
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電話、ウェブ、SNSなどで来院日を予約。来院して医師の診察を受け、症状の確認やその他の疾患がないかをチェック。診察の結果、鼠径ヘルニアと診断され、手術を希望すれば手術日時を決定。その後、個々の患者ごとに作られた診療計画を記したクリニカルパスを用いて、治療方法の選択、必要な検査や手術、術後の流れや注意点について説明を受ける。鼠径ヘルニアに関する知識や手術についての内容をしっかりと確認しておきたい。
- 2手術に必要な検査を行う
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手術が決まれば、日帰り手術が可能かどうかを判断するための心電図検査、呼吸器検査、血液検査が行われる。必要があれば、心臓や肺の状態を確認するため、近隣の画像診断クリニックで胸部エックス線撮影を行うケースや超音波検査のみで不十分な場合は下腹部のCT検査を追加することも。検査の結果、日帰り手術が難しいと判断された場合は、入院による手術が勧められ病院の紹介も行われる。
- 3手術当日・全身麻酔による腹腔鏡手術
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手術前日は絶食、アルコールは厳禁。当日の朝は手術の2時間前までの飲水であれば問題ない。来院したら、個室のリカバリールームで手術着に着替え、診察を受けた後、手術室で麻酔を開始する。麻酔は吐き気などを極力起こさないよう調整され、術中に痛みを感じないよう手術は全身麻酔下で行われる。また、麻酔時の痛みを抑えるために痛み止めの薬が用いられ、手術中は神経ブロックを併用するなど痛みに十分配慮している。
- 4リカバリールームで休息
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術後はストレッチャーでリカバリールームへ移動し、麻酔が切れて帰宅可能になるまで休息を取る。不快な症状や不安を感じる場合は、院内の随所に設置されているベルを押してスタッフを呼ぶことができる。また、休息中には、麻酔からの回復を確認するため、氷水を飲んで嚥下(えんげ)状態を確認。吐き気の有無を確認するため軽食を取ることもある。歩行テストも行われ帰宅時の安全性を確認。来院からの所要時間は約4時間が目安。
- 5手術後の経過観察
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手術当日の食事制限はないが、術後3日程度アルコールは避けるようにしたい。手術当日、翌日、3日後にクリニックからの電話またはSNSで経過確認が行われる。術後10日目頃、都合に合わせた日程で再診。合併症がないことの確認、不安なことがあれば相談して診療終了となる。再診はオンライン診療でも対応可能。クリニカルパスには、手術後に注意すべきポイントも記載されているので、きちんとチェックしたい。