服部 陽介 院長の独自取材記事
はっとり整形外科リウマチクリニック
(名古屋市中区/栄駅)
最終更新日:2024/09/24
栄駅の出口から徒歩2分ほど、広小路通に面したクリニックビルの8階にある「はっとり整形外科リウマチクリニック」。服部陽介院長は日本リウマチ学会リウマチ専門医で、これまで長年にわたって基幹病院のリウマチ科外来で経験を重ねてきた。また分子標的治療薬である生物学的製剤やJAK阻害剤など多くの治験にも関わり、生物学的製剤治療にも豊富な知識を持つ。また、関節リウマチの診療に詳しい看護師も在籍し、治療の進め方や薬のことなど気軽に相談することができる。類似疾患や合併症リスクの高い関節リウマチに対する取り組みや、ますます注目される地域医療の重要性や開業への思いを服部院長に語ってもらった。
(取材日2024年5月10日)
クリニックビル内の連携でスムーズな診療を
これまでのご経歴を教えてください。
私は大きな病院のリウマチ科外来で、長年勤務してきました。そこで、主に急性期の患者さんを診察し、手術などを行ってきました。また私は分子標的治療薬である生物学的製剤やJAK阻害剤の多くの治験に関わり、多くの患者さんに生物学的製剤治療を提供してきた経験もあります。
開業されたきっかけは何だったのでしょう。
勤務医として診療にあたる中で、特に近年では新薬の登場により症状の安定が図れる患者さんが増え、そういった患者さんは地域のクリニックで継続的に診察を受けることが理想的だと感じていました。一方で、リウマチ専門医として開業している人は少なく、患者さんを適切に紹介できる送り先が少ないという現状があります。私は患者さんと長く関わり、その経過を見守り続けることに関心がありました。そこで、患者さん一人ひとりにじっくりと向き合い、最適な治療を提供できる場を開業したいと考えるようになりました。医療が進歩した現在では、早期発見や適切な管理によって、クリニックで治療できるケースが増えており、地域医療の重要性が高まる中、そのニーズに応えたいという思いで開業に至りました。
なぜこの場所で開業されたのでしょうか。
当クリニックが入っているビルはメディカルビルなのでさまざまな診療科のクリニックが入っており、連携しながら取り組めることがとても良いと思っています。以前は同じ場所にリウマチ・整形外科のクリニックがあり、30歳くらい年上の先生が経営していました。ある時期、私はそのクリニックを週に1度お手伝いしていたことがあったんです。その先生が引退され、クリニックは閉院したのですが、その後、新型コロナウイルスが感染拡大。大規模病院の状況も大きく変化する中、私はクリニックでの診療に新たな可能性を見出し、開業を考え始めたんです。その時に思い浮かんだのがこの場所でした。ビル内には健診施設や糖尿内科の他、リウマチに関わる疾患を扱う診療科のクリニックもそろっているので、お互いに支え合いながら診療できるのではないかと考えたのです。開業するなかここしかないと思いました。
リウマチに関わる疾患にはどのようなものがあるのでしょう。
リウマチの薬の副作用で風邪をひきやすくなり、肺炎になるリスクがあります。そのような場合は、呼吸器内科の医師に相談しています。また、腎臓の機能が弱い場合は投薬にも慎重になるため、腎機能を維持・改善するために腎臓内科への通院を勧めることもあります。さらに、リウマチによる手指のこわばりといった症状は、更年期の症状に類似していることがあります。更年期が疑われる場合は、婦人科でホルモンの数値を測ることも可能です。大きな病院でもこのような連携は行われていますが、このクリニックレベルでも包括的な治療が可能な環境が整っています。
経験豊富なスタッフが一対一で患者に向き合う
診療で心がけていることは何ですか?
リウマチの患者さんは、手指だけでなく体の至るところに痛みを抱えていることが多いです。そのため、患者さんの苦痛を迅速に和らげるため、診療ではまず、一番症状が重い場所を特定し、特に痛みのある部分から順に治療を進めることを重視しています。また、貧血や発熱がないかなど、内科的な問診も欠かせません。体の一部ではなく全体を診ることが大切だと考えています。患者さんの訴えが診療の鍵となるため、私が診察する前に、看護師が一対一でゆっくりと時間をかけて問診を行うようにしています。
勤務されている看護師さんについて教えてください。
長い付き合いの看護師もおり、リウマチについての知識が豊富な人を集めています。そのため問診も的確で丁寧です。また薬についての説明や相談なども可能です。説明は図や表などを利用しながらわかりやすい言葉で伝えることを意識してもらっています。重症のリウマチの場合には薬が高額になるケースもあるため、不安や疑問の残らないようにメリット・デメリット含めてしっかりとお伝えしています。
クリニックの設備について教えてください。
先ほどお伝えした看護師との問診の利用や、足腰を痛めている方が焦らずに利用できるように診察室を2つ用意しました。また、景色の良い窓際をリハビリルームにしました。このビルで運動療法ができるクリニックを求める声も多かったため、開放感のある広々とした空間を意識しました。医療機器ではエコーを先進の機械を導入しています。リウマチの診療ではエコーで炎症を診ることが重視されています。長年の経験から触診でもある程度はわかるのですが、エコーでは細かい炎症にも対応できるため、早期発見につながります。小さなクリニックではありますが、当ビル内には健診施設があるため血液検査やエックス線撮影などはそちらにお願いしています。
重症化を防ぐ鍵は、早期発見と早期治療
リウマチは高齢になって発症する疾患というイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。
リウマチの発症年齢は40〜50歳が多く、特に女性の割合が高いです。リウマチは人口の約1%に見られる疾患ですが、高齢者においては発症率がさらに高まり、60歳以上では約5〜6%の人々がリウマチを患っています。リウマチは根治することができない病気ですが、早期発見し早期治療を行うことで、症状を安定させることが見込めます。また、重症化を防ぐのに有用な新薬も開発されました。一方で、リウマチは進行性の病気ですから、症状が重くなるにつれて強い薬や手術が必要になってきます。強い薬は高額になることもあるため、早期治療は経済的な負担軽減にもつながります。もし手指のこわばりや痛み、違和感を覚えたら、すぐに専門の医療機関を受診してください。ちょっとした違和感は見過ごされがちですが、なるべく早く受診することが大切です。当クリニックでは、紹介状がなくても受診できますので、お気軽にご相談ください。
受診の目安はありますか?
リウマチは進行性の病気ですので、違和感が続いたら受診してください。まだリウマチになっていない段階から検査をすることで、症状が出たタイミングを医師が把握しやすくなるため、適切な治療につながります。また、リウマチは類似疾患の多い病気なので、他の病気が潜んでいたり、逆にリウマチを疑っていたのに別の疾患だったり、というパターンもあります。例えば、リウマチは手指のこわばりのイメージが強いのですが、腰の痛みが出る場合もあります。老化による腰痛だと自分で判断してしまって受診しないケースも多いのですが、リウマチである可能性もありますし、別の炎症性の疾患である場合もあります。また、先ほどお伝えした更年期による手指のこわばりも類似疾患です。発症時期が重なるため、自分で判断することは難しいと思いますので、受診をお勧めします。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
リウマチは予防できる病気ではないため、いかに早期に発見するかが今後の治療を左右する鍵になります。そのためちょっとした違和感や、不安がある場合は遠慮なくすぐに来院してください。そうすることで発症の手前や超早期の段階から診療することができるので、発症のタイミングを医師が把握することができます。また血液検査をされている方も、その結果だけでは判断がつかない場合が多いので、触診やエコーを継続的に行い、経過を観察することが重要です。症状がなくても1年に1回は検査を受けに来るという方も多いです。また、当院では整形外科も診療していますのでリウマチ以外のことでもご相談ください。お一人お一人の体質や生活に合った治療をご提案します。