子どもの熱が3日続けば要注意
川崎病を疑い早めの受診を
うちやま小児科こどもクリニック
(高槻市/摂津富田駅)
最終更新日:2024/07/19
- 保険診療
発見者である医学博士の名前から命名され、子どもの後天性心疾患の代表としても知られる川崎病。1967年の発表から半世紀以上過ぎた今も年々増加傾向にあるという。「早めに治療をして後遺症を予防できれば、普通の子と何ら変わらぬ生活を送ることが望めます」と呼びかけるのは、「うちやま小児科こどもクリニック」の内山敬達(うちやま・たかみち)院長。一刻も早い治療につなげてほしいと、検査・診断に情熱を注ぐ。今回は、幼少期に自身も川崎病にかかった経験を持つ内山院長の解説で、親として留意すべきポイントを詳しく追ってみた。
(取材日2024年3月14日)
目次
最大のポイントは症状を見逃さず、早期診断・治療で合併症を防ぐこと
- Q川崎病とは、どのような病気なのでしょうか?
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A
川崎病は、乳幼児期によく発症する後天性心疾患の一つとされています。少子化が進む中にあっても年々増えており、常に関心を持って注視すべき病気といえるでしょう。主要症状は、発熱が5日以上続く、結膜が充血する、唇が赤くなり舌がイチゴの表面のようになる、原因不明の発疹が出る、手足が赤く腫れる、リンパ節が腫れるという6つ。そのうち5つあれば川崎病と診断されますが、中には2つ3つの症状があるだけで後遺症を残してしまう不全型と呼ばれる症例も存在します。川崎病のはっきりとした原因は現在も解明されていません。ただし治療法は確立されていますので、疑わしければエコー(超音波)検査などで積極的に確認することが重要です。
- Q川崎病にかかると、どのようなリスクが考えられますか?
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A
川崎病で一番の問題となるのは冠動脈瘤などの合併症で、治療後も生涯にわたる後遺症を残す子が一定の確率で存在します。冠動脈が詰まると狭心症や心筋梗塞を起こすリスクが高まるため、血栓を予防する目的の薬をずっと飲み続けなければならなかったり、心臓の状態によっては運動制限が必要となるケースもあります。川崎病の好発年齢は1〜4歳といわれ、それを外れると診断が難しく、他の病気と見誤っているうちに合併症を起こしてしまう例が後を絶ちません。発熱が数日間続く場合は、5日以内であっても要注意。川崎病を常に疑い、冠動脈瘤などをつくってしまう前に必要なアプローチを行っていくことがリスク回避の最大のすべといえるでしょう。
- Q具体的に、どのような治療を行うのでしょうか?
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A
川崎病の主病態は血管炎ですから、熱を下げて血管の炎症を抑え、血栓や冠動脈瘤を防いでいくことが治療の目標となります。急性期の治療ではアスピリン療法と免疫グロブリン療法が世界的なスタンダードで、免疫グロブリンは点滴なので入院による投与が必要となります。これらの治療により、冠動脈瘤の発症の抑制がかなり期待できます。しかし、1回だけの投与では対処できないケースも存在し、その場合は他の手法を用いることになり、その選択のマニュアルは医療機関や自治体によっても異なります。それだけ難しい病気といえますが、治療後に後遺症を残さないよう全力を尽くすことが私たち医師の大切な使命と考えています。
- Q入院治療を行った際の、退院後の通院について教えてください。
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A
病院で治療を受けて退院した後はクリニックに戻ってきていただき、定期検診によって再発や後遺症をしっかりチェックしていきます。診療はエコーや心電図などを用いた検査が中心で、症状や再発がない限り、基本的に投薬を受ける必要はありません。特に問題がなければ徐々に受診頻度を減らし、経過観察を5年続けて特に問題がないようなら、そこでフォローは終了となります。一方で冠動脈瘤ができてしまった場合は、心筋梗塞などを予防するために内服治療を続けていく必要があります。中には長期間にわたるケースもありますが、数年して正常化につながる可能性も考えられますから、主治医のアドバイスに従って根気強く続けていくことが望まれます。
- Q治療後は普段どおりの生活に戻っても良いのでしょうか?
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A
普段の生活に戻れるかどうかは、こちらも冠動脈瘤などの後遺症の有無に大きく左右されます。後遺症のない場合は特に運動を制限する必要はなく、乳幼児期に川崎病を発症したことのあるスポーツ選手もたくさん実在します。残念ながら冠動脈瘤が残った場合は、主治医とよく相談しながら治療の継続や生活のコントロールを慎重に行っていく必要があるでしょう。ちなみに新型コロナウイルス感染症の流行後、川崎病や、川崎病に類似した血管炎を発症する子どもが非常に増えたと報告されています。因果関係については定かではありませんが、日々の生活においては感染症などの病気をなるべく遠ざけ、子どもの健康状態に常に注意を払う姿勢が大切ですね。