内山 敬達 院長の独自取材記事
うちやま小児科こどもクリニック
(高槻市/摂津富田駅)
最終更新日:2024/04/08
高槻市富田丘の町に完成したばかりのクリニックモールの2階で、2024年に産声を上げた「うちやま小児科こどもクリニック」。真新しい院内に足を踏み入れた途端、誰もがあっと声をあげてしまうのが、床から天井まで貫くようにそびえ立つ大樹のオブジェ。そして落ち着きあるリビングのような内装が、ここを訪れた親子を優しく出迎える。そんなユニークなスペースを用意したのは、大学病院での長い勤務や海外留学など、小児循環器などの分野で豊富な経験を持つ院長の内山敬達(たかみち)先生。軽快で明るい語り口の中に、子どもたちへの深い愛情や医師としての使命感が見え隠れする。そんな魅力たっぷりの内山院長に、自身のクリニックに込めた熱い思いをじっくり語ってもらった。
(取材日2024年3月14日)
日々の小児診療から難しい循環器疾患まで幅広く
まずは待合にあるオブジェについてお聞かせください。
ここは十分な広さがあり、せっかくなので子どもたちが喜ぶ何かを用意したいと考えたのが始まりです。れんがの家という案もありましたが、私が通った小学校の校庭には樹齢何百年という立派なクスノキの大木があり、みんなのシンボルだったことを思い出したんです。それからデザインを構想し、テーマパークやデパートのディスプレーを手がける造形会社に製作を依頼して、半年かけて完成したのがこのオブジェです。内部は大人も入れる空洞になっています。すぐ横にキッズスペースがあるにもかかわらず、子どもたちはみんな絵本やおもちゃを持ち込んでわざわざ木の中で遊びます。単なる遊具というより、一つの空間なんですね。人をあっと言わせる以上の効果があり、やってみて良かったと実感しています。
小児科としてはずいぶん落ち着いた内装ですね。
多くの小児科クリニックは託児所や保育所のような雰囲気ですが、連れてくるのは親御さん。子どもだけでなく保護者も落ち着いて過ごせる環境も大事と考え、ちょっぴり大人なリビング風にしてみました。待合には荷物や上着を収納できるロッカーを設置し、トイレはおむつ交換台つきの広々設計です。使用済みのおむつを自動でパックする回収器も好評ですね。また、当院では診療室を通常の患者さん用と発熱のある患者さん用に分けていますが、すべての診療は待合と同じ本革風のソファーの上で行います。座面が低いので小さいお子さんも安心ですし、リラックスしてもらえるのではないかと思います。こうしたアイデアは勤務医時代から温めていたもので、「診察する場所なの?」と不思議そうに親御さんを見上げる子を見ると、まさにしてやったりという気分です。
子どもの診療で大切なことは何ですか?
小児診療で大切なのは、とにかく子どもを泣かせないこと。私は心疾患が専門で、聴診で異常を見つけるのは得意中の得意です。ところが泣かれてしまうと、もう何も聞こえずお手上げなんですね。異常の見逃しを避けるためには、何より子どもにリラックスしてもらわなければなりません。この院内の雰囲気にはそれなりの理由があるわけです。とはいえ、私にとってクリニックでの診療は未体験ゾーン。日常的な診療から小児循環器、予防接種まで幅広く対応するために、スタッフは直前に勤めていた高槻病院から即戦力として来てもらいました。内覧会ではご近所の皆さんが大勢来てくださって、「小児科ができるのを待っていました」というお声を多数いただきました。そんなご家族のためにこれまでの経験を生かし、自分の持てるものをすべて出しきるのが当面の目標です。
「99%なら安心」ではなく、残る1%にも全力を注ぐ
ご開業までの先生の経歴を教えてください。
私は関西医科大学の出身で、大学院を出てからは関連病院で研修医や医員、助教として務めたり、心臓血管外科の研究でアメリカのコネチカット州立大学に留学したりしました。国立循環器病研究センターに勤めていた時期もあります。2015年に大学を辞めて高槻病院に移り、小児科や小児循環器科の主任部長を務めました。開業しようと思ったのは、私もベテランの域に足がかかり、病院勤務の仕事に年齢的、体力的な限界を感じ始めたこと。そろそろ後輩にポジションを譲らなければという考えもありましたね。ただ、これまで診てきた患者さんと完全に離れてしまうのはあまりに切なく、高槻市内であればまた診る機会があるかもしれないと、ここでの開業に踏みきりました。
検査・診断に情熱を注いでいらっしゃるそうですね。
当院は性能にこだわった超音波検査器や心電計といった、先進の検査機器をそろえています。中でもこだわっているのが超音波検査器で、通常の診察から難しい心疾患の診断まで、機会を見つけては重大な病気が潜んでいないかを確認しています。重大な病気ではない確率が99%だったとしても、残る1%のために全力を注ぐ。これが私の診療における最大のテーマです。こだわりの原点は高校生の頃。母校がカトリック系で、毎朝の祈りで先生が聖書の一節を紹介するのですが、唯一覚えている羊飼いの話からです。100頭の羊を連れて放牧し、夕方になって帰ろうとしたけれど、そのうちの1頭がどうしても見つからない。諦めて99頭だけを連れて帰るのではなく、1頭を探し続けることが大切というのがその日の教えでした。それから何年もして医師になり、小児医療に関わるようになった今も、その教えを診療の基本として実践しています。
親御さんに対して配慮しているポイントは?
診療では時間をかけてなるべく丁寧に説明を差し上げるのですが、なかなか覚えられないというのが親御さんの正直なご感想でしょう。そこで当院では「TAKE HOME MESSAGE」というカードをお渡しし、必要事項にチェックするだけで症状と受診の目安がわかるようにしています。また、子どもの薬に関するメッセージカードも同時にお渡しし、私なりの見解を提案しています。薬というのは、それが必要な子に必要最小限を届けるのが基本で、それ以上の物を飲ませる必要はないと考えます。ちなみにアレルギーに関しては、1滴の血液から最大で41種類のアレルギーが判定できる検査を当院でも導入しています。30分ほどで結果が出て治療薬が決定できますので、まだのお子さんはぜひ一度受けてみてください。
良質な地域医療で子どもたちを見守っていきたい
先生は何代も続く医療家系の出身とお聞きしました。
私の故郷は熊本県の人吉市で、曽祖父から始まる医療家系にあって私で4代目です。父は晩年に大病を患い、大がかりな治療を受けましたが10数年前に亡くなりました。その葬儀に「先生のお棺の中にぜひこれを」と手紙を持ってきてくださった方がいて、読んでみると昔近所のお子さんが一酸化炭素中毒になり、それを父が救急対応したエピソードと感謝がつづられていました。手紙を持ってきたのはその子の親御さんだったんですね。その話はずいぶん昔に父から聞いたことがあって私も覚えていましたが、まさに医師冥利ですね。そんな医療を届けたいという目標となり、それが父が私に残してくれた最大の遺産と思っています。
クリニックとしてどのような存在をめざしていますか?
やはり良質な地域医療をお届けする小児科であることです。クリニックの常識にとらわれることなく、できないのは放射線検査と入院手術くらいという次元にまでレベルアップさせていきたいですね。街のクリニックとして専門的な知識が及ばない部分は専門の先生に委ねることも大切ですが、病診連携といいつつも、単に専門の医療機関へと道案内しているだけでは、私個人としては医師としての使命を果たせていないようにも感じます。病院の下位にクリニックがあるのではなく、病院の分室のような形で存在することが理想です。診療できる範囲のことはしっかりと診療して、地域の人たちにとって良い形を模索していくことが何より重要ではないでしょうか。
最後に、地域の親御さんに向けてメッセージをお願いします。
大勢の子どもたちに来てもらうのはもちろん大歓迎ですが、何より「あそこに行けば間違いない」と言われることが一番の目標です。近所にあるから便利なだけでなく、信頼して通えるクリニックでなくてはなりません。そのためには「私を信頼してください」とお願いするのではなく、客観的かつ視覚的に、リアルな画像や数字を重層的に示しながら肉厚な結論を提示する必要があるでしょう。とにかく不安を解消してあげることが私たちの使命。ぜひ頼っていただいて、一緒にお子さんを見守っていければと願っています。当院の今後に、どうか期待していてください。