スタッフが一丸となって支える
QOLを重視した透析治療
南池袋診療所
(豊島区/池袋駅)
最終更新日:2024/08/23
透析患者は糖尿病性腎症を基礎疾患として持つことも多く、動脈硬化が進みやすく心不全リスクも高い。毎日、約10種類の薬を飲み、3日置きに通院して約4時間の人工透析を受けなければいけないなど、当然のことながらストレスは少なくない。だからこそ「スタッフ一丸となって患者さんのQOL向上をめざしたい」と透析クリニック「南池袋診療所」の伊藤緑院長は力を込める。同院では看護師長の井戸田昭子さん、臨床工学技士長の尾澤勝良さんなど勤続20年以上のベテランも活躍中だ。どのタイミングでどのような問題が起きがちなのかも熟知している。まさに、透析人生の水先案内人といっても過言ではない。クリニックのスタッフが全員で力を合わせて支える透析治療とはどのようなものなのか、3人に詳しく話を聞いた。
(取材日2024年1月9日)
目次
透析は3日おきの通院が必要だからこそスタッフは家族のように迎えきめ細やかな配慮が欠かせない
- Qこちらではどのようなスタッフが働いていますか。
-
A
【伊藤院長】看護師3人、臨床工学技士3人がいずれも常勤で働いています。透析ベッド19台というこぢんまりとした規模なので、患者さんとスタッフの距離が近いのも特徴です。 【井戸田さん】20年以上お付き合いのある患者さんも少なくないですね。定年を迎えて予約時間も夕方から午前中になるなど、生活の変化とともに透析スタイルが変わっていくのも数多く見てきました。 【尾澤さん】透析クリニックはどうしても患者さんとのお付き合いは長くなります。だからこそ、患者さん一人ひとりの思いや考えをきめ細やかに拾っていきたいと思っています。
- Q看護師チームが大事にしているのはどんな点ですか。
-
A
【井戸田さん】まず、透析後の体調の変化、家庭や会社で感染症が出ていないかなど健康状況を詳しく聞くことを大切にしています。健康以外のことでも、患者さんが何かしらの困難に直面していることがわかれば、できる限りの配慮はしたいですね。もし、穿刺や脱血がやりにくくなっていたら、透析の出入り口であるシャントに不具合が起きている可能性もあるので、ただちに医師に報告します。当院のベッドはレザータイプなので患者さんごとにしっかりと拭いて消毒できますが、感染症対策にも注意し続けています。会話を楽しみたい人、そっとしておいてほしい方、患者さんの個性に応じて接するようにもしていますね。
- Q臨床工学技士チームはどんな仕事をしているのでしょうか。
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A
【尾澤さん】臨床工学技士とは生命維持装置の操作や保守点検を仕事としています。人工呼吸器、体外循環装置(人工心肺)同様に人工透析装置も生命を維持するために欠かせない装置なので、透析クリニックで働く臨床工学技師も少なくありません。当院でも臨床工学技士は人工透析装置の操作やメンテナンスの他に、透析水の水質管理や排水管理なども行っています。透析患者さんは男性も比率が高く、同性のスタッフのほうが気兼ねないという人も結構いらっしゃるんですよ。臨床工学技士でも透析のための針を入れる穿刺ができるので、われわれが対応することもできます。
- Q患者さんと接する時に気をつけていることは何ですか。
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A
【井戸田さん】どの患者さんとも2〜3日後はまた顔を合わせることになるので、お互いが気持ち良く過ごせるように気をつけていますね。家族のことなども積極的にしゃべりたい人、プライベートにはふれてほしくない方、それぞれのお気持ちを最優先するようにしています。 【尾澤さん】透析を導入して10年、20年と経過するうちに患者さんの生活も考え方も変わっていきますから、臨機応変に対応できるようにしていきたいですね。長い間、透析人生に伴走してきたからこそ、できることかもしれません。これまでの経験を後輩たちとも共有して、より良い透析をめざしていきたいです。
- Q今後の目標などありましたら教えてください。
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A
【井戸田さん】最近、透析中に運動を楽しんでもらえるよう提案することに力を入れています。透析中に20分ほどの運動をしていただくというものなのですが、エルゴメーターやゴムバンドを使用したレジスタンス運動などのメニューがあります。今後とも力を入れていきたいですね。 【尾澤さん】下手をしたら自分の子どもよりしょっちゅう会っている患者さんもいるかもしれません。「近所のおじちゃん」のように親身になって、一人ひとりをサポートしていけたらと思っています。これからも、スタッフ同士でしっかりと情報共有しながら患者さんのQOLを向上させることができるよう尽力していきたいです。