海老原 直樹 院長の独自取材記事
海老原おとなこどもクリニック
(横浜市都筑区/センター北駅)
最終更新日:2024/04/23
センター北駅近くに「海老原おとなこどもクリニック」を2023年10月に開院した海老原直樹院長。内科、外科を問わず、全身を広く診ていきたいと考えたのが医師としての原点だったという。小児救急に携わりたいとの思いから、大学病院の3次救急の現場で研鑽を積み、子ども病院の集中治療科での診療を経験。培った知識や診療技術を臨床の場で生かしていきたいと開業した。ファミリー層の多い横浜市都筑区で、家族ぐるみで受診できる医療機関として開業当初から多くの患者が訪れている。2024年4月からは医師を増員して本格的に訪問診療もスタート。診療を断わらず、どんな症状や悩みも受け入れたいと語る海老原院長に、同院の診療の特徴や診療への思いを聞いた。
(取材日2024年3月18日)
子どもから高齢者まで、感染症から外傷まで幅広く対応
こちらは大人も子どもも幅広く診療するとのことですね。
救急の外来や子ども病院での診療経験を生かし、幅広い年代の方に来てもらえるクリニックにしたいと考え、内科、小児科、外科、小児外科、救急科など幅広い診療を行っています。もちろん予防接種や健康診断も行っていますし、訪問診療にも対応しています。発熱症状を専門に診る外来を設置しているのも特徴です。昨今の新型コロナウイルス感染症流行の影響でクリニックに対する意識も大きく変わり、咳をしている人と同じ待合室で待っていたくないという人が増えましたよね。ですから、発熱症状で感染症が疑われる患者さんと一般疾患の患者さんの待合室と診療室を分け、どちらも安心して受診していただけるようにしました。開院当初からインフルエンザや新型コロナウイルス感染症の流行期だったこともあり、風邪やアデノウイルス感染症、溶連菌を含めて感染症の方が多い傾向にあります。その他、外傷や生活習慣病など幅広い年代の多様な症状の方が来られています。
開業の際、こだわられたのはどのようなことでしょう。
まず、予約から受付、診療、会計までを円滑にすることですね。診療が終わっているのに、なかなか会計が終わらないのはストレスですよね。それを解消するために、医療のDX化には少しこだわりました。受付から会計までをシステム化しています。診療を予約し、事前にウェブ問診をしていただければ、受付から診療、会計までかなり早く終われると思います。感染症の検査機器も10台備え、多数同時受診の診療体制を整えることで、患者さんを断らないということにもこだわっています。直接のご来院も対応していますが、待ち時間が長くなることがあるので、事前予約をお勧めします。どんな症状でも相談いただいて、当院で対応できないものについては連携する病院に責任を持ってご紹介します。規模は小さく、できることは限られますが、内科や外科といった診療科にとらわれず、できるだけ対応する小さな救急の外来としての役割も担っていきたいと考えています。
開業するまでの経緯を教えてください。
高校までサッカー選手をめざしていたのですが、看護科の同級生たちと話をする機会があり、だんだん医療に興味を持つようになりました。大学卒業後は、内科・外科問わず幅広く診られる医師になりたいと考えるようになり、小児救急に興味を持ちました。そこで、大学病院の救命救急センターで研鑽を積み、国立成育医療研究センター集中治療科のPICU(小児集中治療室)や横浜労災病院の救命救急センターに勤務していました。やりがいのある職場ではありましたが、徐々に管理職的な仕事が増え、実際に患者さんを診る機会が減ってくる中で、今まで学んできた知識や技術を患者さんに還元したいと考えるように。それで開業を決め、昭和大学横浜市北部病院や横浜労災病院に近く、なじみのあるこの地域を開業地に選んだのです。
救急医療の経験を生かして、訪問診療にも取り組む
こちらで行われている訪問診療についても教えてください。
私と同じように救急科出身の医師を中心に、ケアマネジャーを含めた介護の専門職や訪問看護ステーションの方々と連携してチームで診ていきます。診療面では内科、外科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科などの分野での対応が可能です。めざすのは、住み慣れた家でご本人が望む時間を過ごし、人生の最期の時を迎えるために必要な手助けをする、そんな訪問診療ですね。全身管理をしながら、できるだけご本人が望む生活が送れるように、またご本人が望まれない治療は行わないように、ご家族と話し合いながら取り組んでいきたいと考えています。
どうして訪問診療に取り組もうと思われたのでしょうか。
3次救急の現場では、一定数の方が心肺停止状態で搬送されるため、人の最期の場面に遭遇することがとても多かったのです。しかも、突然そうした状態になってしまった方が多いので、延命治療をどうするかというようなリビングウィル、つまり生前の意思がわからないことも多いのですね。搬送されてきたら、私たちはできる限りの救命措置を行いますが、亡くなられてから、あの治療は必要だったのかと思うことも少なくなかったですし、ご家族が混乱されてしまって、ご本人が望まないかたちで蘇生処置が行われることも。そうした場面を多く経験して、ご本人とご家族が納得したかたちで最後を迎えられる手助けをしたいと思うようになり、訪問診療を始めることにしたのです。
診療方針について伺います。
受診された患者さんは、皆さん何かしらの異常、気になっていることがあって来られているので、その訴えを突き詰めていくようにしています。一方で、患者さんが気づいていないけれど介入が必要なケースもあるので、訴えの裏にあるものも見落とさないように気をつけています。スタッフには、自分がミスしたことは他の人もミスするかもしれないので、助け合いながらカバーすること、ミスは共有して次のミスを防ごうと伝えています。あとは、患者さんと接する時は、同じ立場になって親身になって対応していこうと話しています。救命救急やPICU経験のある看護師もいますので、私もとても頼りにしているんですよ。
外傷に対応する小児外科も設置。断らない診療をめざす
専門的な立場から、今気になっていることはありますか?
このエリアのファミリー世帯は、共働きの家庭が多く、お父さんもお母さんも仕事も子育ても忙しくて、自分のためだけにクリニックを受診できる人が少ないのではないかと思います。時間に追われて、ご自分の健康はおろそかになっている方も目立つ気がします。例えば、子どもを小児科に連れて行くために自分自身の受診時間が取れなかったり、子どもの送り迎えで仕事の行き帰りに寄れなかったり、突然のけがも我慢をせざるを得ないことも。私も子育て中で状況はよくわかります。当院はスピーディーな診療を心がけていますし、ご家族での同時受診も可能ですので、個別に受診するよりはかなりの時間短縮になるのではないかと思います。花粉症や生活習慣病の診療なども気軽にご相談ください。
今後の展望についてお聞きします。
都筑区は都会的なイメージがありますが、高齢の方も多く、多様な方が住まわれているなと実感しています。地域的に発熱症状の方の受け皿が不足していたようで、当院には、開業当初から多くの患者さんが来てくださり、「新型コロナウイルス感染症が流行した時は受け入れてくれるところが少なくて困った」「ここができて良かった」と言ってくださる方がとても多いのです。ですから、断らない、なんでも受け入れる診療はぜひ実践していきたいですね。クリニックとしては、内科的な疾患から外傷まで幅広く診ていくことに加え、さらに医師を増員して外来の専門性を持たせて診療の幅を広げていくことや、訪問診療を拡充させていくことをめざしたいと思っています。
最後に読者にメッセージをお願いします。
当院は、感染症を含め、内科的な疾患から外傷まで対応し、診療科にとらわれず、どんな症状や悩みも受け入れることを目標としています。開業以来、親子で来てくださる患者さんがとても多く、また訪問診療も行う中で、3世代でかかってくださるご家族もいらして、とてもうれしく思っています。一緒に来てくだされば一緒に診ますので、ぜひ、お子さんとご自分の健康を守るために活用していただければと思います。また、小児科、小児外科を設けているのも当院の特徴です。お子さんのけがの場合、一般の小児科では受け入れてくれないことも多いと思います。転んで頭を打ったり、高いところから落ちたりというような場合もぜひ受診していただきたいですね。