薬物治療と外科手術、食事や運動指導
肥満症のチーム治療
六角田中クリニック
(京都市中京区/烏丸駅)
最終更新日:2024/12/11


- 保険診療
肥満は、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、冠動脈疾患、脳血管障害、睡眠時無呼吸症候群、膝の関節変形など運動器の疾患、月経異常、不妊などさまざまな健康障害を引き起こし、大腸がんや乳がんのリスクを上げるとされる。さらに、肥満が進行して、高度肥満症になると、突然死のリスクも高まると言われる。そこで、肥満症治療の専門家である「六角田中クリニック」前田和久理事長に、肥満・肥満症診療について取材した。前田先生は、大学病院や米国で培ったノウハウを生かし、 小太り程度の肥満から、薬物や手術が必要な高度肥満症まで、さまざまな治療法に取り組む。管理栄養士をはじめとする専門職と連携したチーム医療で、患者とともに根気強く適正体重をめざす前田先生の診療について知ってほしい。
(取材日2023年10月27日)
目次
さまざまな健康リスクを高める肥満。命にも関わる肥満症。 医師と専門職が連携した治療や、生活指導が重要
- Q まず、肥満や肥満症の違いや、リスクについて教えてください。
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A
▲肥満症治療の専門家である前田理事長
肥満は、体脂肪量の指標であるBMIが25以上の状態です。肥満になると、高血圧症や脂質異常症、糖尿病などの病気になりやすく、大腸がんや乳がんのリスクも高まると言われています。そして、肥満症とは、肥満であることに加え、肥満に関わる健康障害があるか、そうした健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、疾患として減量治療を必要とするものとなります。肥満症では、高尿酸血症・痛風、睡眠時無呼吸症候群、膝の関節疾患などの整形疾患、腎臓病、肝動脈硬化症なども起こりやすくなります。さらにBMIが35以上の場合は、高度肥満症とされ、心不全や呼吸不全など突然死につながる病気の危険性が高まります。
- Qどのような治療を行うのですか。
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A
▲患者の生活習慣や病態に合わせ、食事や運動指導を実施
肥満、軽度の肥満症に対しては薬物治療ではなく、運動や食事による減量をめざしますが、高度肥満症には食欲抑制剤を用いた治療を行うことができます。食欲抑制剤は、体への負担を考えて1回14日分処方で、連続投与は3ヵ月間で終了し、再開までは最低6ヵ月間あける必要があります。いろいろな制約があり、患者さんにとっては使い勝手の悪い面もありますが、2週間に1回受診することになり、薬だけに頼らない減量治療が行えることはメリットでもあると思います。当院では、薬物治療の休止期間もそれぞれの患者さんの生活習慣や病態に合わせて、医師と管理栄養士などの専門職が連携して食事や運動指導を実施しています。
- Qこちらでは手術前後の病診連携もされているんですね。
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A
▲病院と連携を取りながら、患者のフォローを行う
そうです。肥満外科手術とは、胃を切除して小さくして肥満改善をめざす抗肥満外科手術(腹腔鏡下スリーブ状胃切除術)で、当院では、JCHO滋賀病院の減量・代謝改善部門や大阪大学医学部附属病院消化器部門・内分泌代謝部門と連携した治療を行っています。手術適応と診断された患者さんに対しては、薬物療法を含めて適切な体重管理を行った後に、連携先の病院で手術を受けていただき、手術後は減量治療、リバウンド予防のためのフォローを継続して行うという流れです。できる限り、内科的な治療で減量できるようにすること、患者さん自身の減量や健康管理へのモチベーションを高めて、維持することをめざしてチームで取り組んでいます。
- Qこちらのクリニックの肥満症治療の特徴を教えてください。
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A
▲フットケア、漢方診療など多方面からも肥満の問題に取り組む
院長の田中紀實先生は、循環器内科を経て大阪大学附属病院で糖尿病・肥満診療の研究に取り組んできた医師ですし、また、多くの肥満外科手術を手がけてこられた滋賀病院の山本寛先生の診療日も設けるなど、専門的な肥満症治療や健康を取り戻すサポートを行うことができます。また肥満症治療の専門性を生かし、肥満や肥満予備軍であるメタボリックシンドロームの患者さんに対しても実践的な治療や指導を行っています。その他、フットケア、漢方診療などさまざまな面から、肥満の問題に取り組んでいることも特徴です。京都の中心地という地の利もあり、日曜診療など忙しい方にも通いやすいように配慮していることも知っていただきたいですね。
- Q日常的にどのようなことに注意したら良いのでしょうか。
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A
▲自ら進んで食事や運動の変革に取り組むことが大切と語る理事長
高度肥満症についても、薬物治療や外科治療によって改善が望めるようになりました。肥満症予防やメタボリックシンドロームへの取り組みも進んでいます。大切なことは、患者さん自身がご自分の現状や問題に気づき、自ら進んで食事や運動の変革に取り組むこと。そして、定期的に健診を受けて、問題があれば内科を受診して治療を受けること、治療を中断せず通院を継続し、また減量後のリバウンドにも注意することなどです。当院では、毎回、体重組成を測定した上で適切な食事指導を行います。絶食や極端なダイエットではなく、良質のタンパク質を積極的に摂るなど正しい食事療法と、適切な運動療法で減量をめざしていただきたいと思います。