田中 紀實 院長の独自取材記事
六角田中クリニック
(京都市中京区/烏丸駅)
最終更新日:2023/10/11
烏丸通に面し、ビジネスやショッピング、観光で大勢の人が行き交う市内有数の一等地。そのエリアにあるビルの1階に2023年8月に開院した「六角田中クリニック」は、糖尿病や内分泌疾患、肥満症などの診療に特化した内科クリニックだ。院長を務めるのは、医学博士であり日本糖尿病学会糖尿病専門医でもある田中紀實(たなか・よしみつ)先生である。大学での研究を含む糖尿病・肥満に関する豊富な知識と経験を生かしつつ、漢方診療に尽力してきた父とともに独自のステージをめざしている。地元である京都でどのような医療提供を目標としているのか。患者との向き合い方から西洋医学と東洋医学の統合的アプローチまで、クリニックに寄せる思いをじっくりと語ってもらった。
(取材日2023年9月8日)
糖尿病や肥満などの生活習慣病患者を総合的にサポート
烏丸御池と四条烏丸のちょうど中間。抜群の立地ですね。
この近所に父がやっていた「六角田中医院」があり、今回はそこからの移転開院になります。六角の地は昔から京都の中心といわれており、父もこの地での開業にこだわっていましたので、この場所に空きが出たのは非常にラッキーと感じています。私は京都生まれの京都育ちで、大学も京都でした。卒業後は出身大学である京都府立医科大学の付属病院や関連病院に10年以上勤めました。専攻医時代は循環器内科を中心とした急性期医療に従事し全身管理を勉強。その後糖尿病内科を志し、専門的なトレーニングを受けたのです。また、大阪大学大学院にて糖尿病・肥満に関する基礎研究に励み、この分野についての知識を深めてまいりました。その一方で、父が長年やってきた漢方診療も学びたいと考え、今回の開院に至ったというわけです。
こちらのクリニックの診療内容を教えてください。
糖尿病や高血圧症、肥満症などの生活習慣病の治療や漢方治療など、多様な診療を提供しています。院内で実施できる検査は血液検査や尿検査から、心電図、超音波、体組成測定まで幅広いのが強みです。また、診療では患者さん一人ひとりの物語に耳を傾け、ゴールに向かいともに歩んでいく姿勢を大切にしています。そのために、これまで培ってきた知識・経験を総動員して対応させていただいているのです。例えば糖尿病の治療の際、血糖値をただ下げれば良いと考えるのではなく、血糖値が上がるに至った病態や合併症の程度、生活環境なども考慮して目標を決めさせていただいています。数値を下げることだけを目的として、生活を楽しめなければ意味がありませんからね。
現在、診療体制はどうなっていますか?
当院では私と父を含め、5人の医師が決められた曜日や時間帯に診療を担当しています。理事長である前田和久先生、糖尿病専門医の安部倉竹紗先生、日本の肥満外科の黎明期から多くの肥満外科手術に携ってこられた山本寛先生、そして漢方内科を担当する父とともに力を合わせてまいります。スタッフは全員が新規での参加ですが、全員優秀で何事にも前向きに取り組んでくれていますね。私自身、地元で診療するのは初めての経験で、それだけにチャレンジのしがいがあります。総合病院や大学病院との連携もどんどん進めていますので、多くの患者さんに来ていただけるよう頑張りたいです。
先進の血糖値測定器を導入。肥満の改善にも力を注ぐ
糖尿病治療には特に注力しているそうですね。
糖尿病患者さんのサポートは、当院の第一の目標でもあります。以前だとインスリンが必要な場合は入院が必要でしたが、この十数年でデバイス・薬剤の進歩により外来での対応も十分可能となりました。また、血糖値の自己測定機器も便利かつ安全性の面でも進化しています。24時間モニタリングできるデバイスを私も試しに装着していますが、センサーをかざすだけで即座に血糖値がわかる上に、数時間、数日間の推移もひと目でわかる便利なものです。血糖値がいつ変動したのか、自分の状態を理解するにはうってつけといえるでしょう。またインスリン製剤の進化により、人間本来の分泌パターンにより近い状態を再現できるようになり、より安全性に配慮され精緻な血糖管理につなげられる時代になってきています。条件を満たせば保険を適用できるので、従来の糖尿病治療で不便を感じている場合はぜひご相談ください。
糖尿病患者さんに対するアドバイスはありますか?
2型糖尿病は生活習慣に原因があるイメージが強いですが、膵臓の老化やストレスなどの影響で発症する場合もあります。現代人であれば誰もがなり得る病気ですから、不養生を恥じたり負い目を感じたりする必要はまったくありません。前向きに治療を受けて、きちんと管理・改善していくことが大切です。なぜ病気になったのか、なぜ薬が必要なのか、それをしっかりとご説明することで負のイメージは払拭できますし、注意すべきことも実感できるでしょう。
肥満症の治療についても教えてください。
BMI35を超える高度肥満症の治療には、食欲抑制剤の処方をしています。この薬、世界的には普及しておらず、日本やメキシコなどわずかな国でしか扱っていない側面がありますが、当院の医師は長年取り扱ってきた経験があるので安心してご利用いただけるでしょう。また肥満症の治療として、胃を切除して小さくし肥満改善をめざす、肥満外科手術が有名だと思います。当院の場合、手術自体は連携先の医療機関で受けていただきますが、術前・術後は内科的管理の経験豊富な前田理事長と肥満外科手術のエキスパートである山本先生が中心となり適切なサポートを実施。これらの保険診療以外に、漢方治療も提供しています。減量に漢方治療が有用な場合もあるんですよ。ちなみに新たな治療法として、日本でも近い将来、処方可能となる薬が増えれば、肥満症治療に選択肢が増えると期待しています。
西洋医学と東洋医学が合体した新たな医療のかたち
先生は漢方などの東洋医学に大きな期待を寄せているそうですね。
漢方は種類が多く、かなり広範囲なことに使えるため、西洋医学をカバーするポジションとしてもっと注目されるべきだと私は考えています。父は長年にわたって漢方を研究し、臨床にも応用して実績を上げてきました。私も今後は本格的に勉強していきたいと考えています。体に起こるさまざまな現象を、森羅万象の一つとして説明するのが東洋医学のコンセプトです。それを西洋的な合理主義やロジックと合体させることで、一歩踏み込んだ医療のかたちが見つかるのではないかと思います。昔から息づいている伝統や習慣に、新たな文化を取り入れていく。ある意味、非常に京都らしいアプローチといえるかもしれません。
ところで、先生が医療の道をめざしたきっかけは?
私の家系は特に医療の家系ではなく、医師は父が初めてです。私も進路を決めるにあたってはいろいろと迷いましたが、いざ医学部の受験勉強を始めてみると、これがとても難しいんですよ。無理かもと思った瞬間に逆にファイトが湧いてきて、人のためになる仕事だから人生を懸けても悔いはないだろうと心を決めた次第です。ちなみに父は本当は僧職に就きたかったそうで、昔は護摩行などをやっており、私も大学時代に経験したことがあります。東洋医学を突き詰めていくと、最終的には心の持ちようや生き方に行き着くんですね。困っている方に手を差し伸べていく点で、仏の道も医療の道も通じるところがあるように思います。もちろん、診療でいきなり精神論を諭すことはありませんので(笑)、そこは安心してください。
最後に、読者へ向けたメッセージをお願いします。
場所柄、お仕事の帰りなどに立ち寄られる方が多いでしょう。開院したばかりで不慣れな部分もありますが、スムーズに診療できるよう励んでいるところです。将来的には健康づくりの一環としてヨガなども取り入れ、より身近なところで皆さんをサポートできるよう努めていきたいとも考えています。父と一緒に診療ができるのは、私にとって本当に幸せなこと。いろいろなご縁があって今の私があるので、その感謝の気持ちを忘れずに、皆さんとも末永くお付き合いできればと思います。糖尿病や肥満はもちろん、ちょっとした体の不調でも構いません。多くの方に気軽に受診していただくことを心待ちにしています。ちなみに、待合室に大きなベンジャミンがあるでしょう? これは六角田中医院にあったもので、当時のクリニックの精神が宿っていると思っています。今後も見守ってほしいと願い運んできました。受診された際はぜひご覧になって、癒やされてみてください。