須田 潔子 院長の独自取材記事
千代田こころのクリニック
(千代田区/九段下駅)
最終更新日:2024/06/13
九段下駅、神保町駅からアクセスの良いビルに開院した「千代田こころのクリニック」では、「こころの調和を軸として」「バランスの取れた適切な治療法を」というフレーズを掲げている。アンティークが置かれた落ち着いた雰囲気のクリニックで院長を務める須田医師は、精神療法・精神分析系のトレーニングから精神科医としてのキャリアを始め、一般的な精神疾患の治療だけでなく、精神科専門病院での精神科救急、老年精神医学などの現場も経験してきた。現場主義を一貫してきた須田医師が自らの知見と経験を最大限に活かすべく開院したクリニックを取材した。
(取材日2023年7月7日)
「こころの調和を軸として」をポリシーに開院
クリニックのポリシーはどのようなものですか?
医師としてのこれまでの経験から、人のこころは個人差があるにしても、それほど強いものではないと思っています。日常の中でさまざまなストレスを受けていくと、こころが不調和を引き起こし、やがて心身に諸症状となって現れます。当院では「こころの調和を軸として」という一文を掲げており、まずは失われた「こころの調和」を取り戻すことを手始めとして、それによって諸症状の改善を目指しています。適切な治療法を見つけるために、診察の中でじっくりとお話を伺い、こちらからも質問をさせて頂き、こころの不調和の原因を教えてもらいながら進めていきます。その上で、「バランスの取れた適切な治療法」へと具体的に入っていきます。
どのような症状の方の受診が多いですか?
気持ちの沈みが続く。よく眠ることができない。不安で仕方がない。出社して仕事するのが難しい。心配事からイライラが積もる。どうしてもやる気が起きない。こうした一般的なこころの不調和を抱えた方が多いです。また、患者さんの層としては、九段下、神保町という立地から周辺のオフィス街で働く方々や、高校生などの親御さんからのお問い合わせも多くあります。これらを踏まえて、当院では診療対象を18歳以上から16歳以上へと変えさせて頂きました。最近では遠方から検索して来院される方も増えています。男性、女性の比率でいえばおおむね半々くらいだと思います。
「現場主義」を貫いたからこそ、できる医療を提供
医師としてのこれまでの歩みを聞かせてください。
卒業以来、精神科医として現場主義を貫いてきました。なるべく多くの現場を知り学ぶために、一つの病院で長く勤めるよりも、自ら望んで区切りごとに勤務先を変えてきました。最初は大学病院で精神療法・精神分析系のトレーニングを受け、一般的な精神疾患治療の経験を積み、次に大規模な精神科病院である都立松沢病院での勤務を望みました。そこでは、急性の症状に対応する精神科救急、重症と向き合う閉鎖病棟などで治療のあり方を深く学びました。次に都立府中病院へ移り、リエゾン診療、合併症医療などを経験し、両院で併せて10年勤務しました。その後は、主に老年精神医学を軸に経験を積み、高齢者の認知症、うつ病と向き合ってきました。勤務医としての最後の7年は、がんセンターで感染症指定病院でもある都立駒込病院で、がんや感染症を患う方の精神疾患対応、緩和領域のメンタルヘルスにもあたり、コロナ流行の時期には感染症病棟でも勤務しました。
その経歴からご自身の医師としての強みはどのようなものとお考えですか?
精神科医として歩み出す時の初期教育で、精神療法・精神分析系のトレーニングをしっかりと受けることができたのが自分の基礎になっています。このアプローチでは、決められた枠組みの中で患者さんと面談し、その記録をベースに患者さんにも自己洞察を促していきます。そして、患者さんが気づいていなかったこころの深い部分にある症状の原因を探求していくあり方を徐々に学べたのが医師として糧になりました。もちろん、この診療方法は万能というわけではなく、その後は独学も含めて学びを続けてきています。それから、精神科専門病院での勤務、リエゾン診療、老年精神医学などに広く従事したことで、一般的な精神疾患に対して医師としてより俯瞰して複合的に診る習慣が身につきました。これらの経験を、患者さんにとって適切な治療法を考えていく上で役に立てたいと思っています。
どのように診療を進めていきますか?
初診は1時間程度かけてお話をじっくりと伺いたく思います。リラックスして頂ける環境で話をしやすい部分から始めていきたいと思っています。治療法は、精神療法(1.支持的精神療法 2.行動療法 3.認知行動療法)、薬物療法と色々ありますが、どういったアプローチが適切かを見極めるのが肝心ですから、ここは慎重に考慮したいと思います。精神療法を適用する際には、理論を型通りに適用するよりも、患者さんにとって効果的で実際的な適用を心がけております。薬物療法の場合も、お薬の種類や適量を見極めて、服用開始、減薬、服用停止をどのような期間で達成していくかを意識したアプローチを心がけています。ただ、慌てず、焦らず、確実に治療を進めることが大切ですから、短い期間で服用を終わらせることばかりを目標にするわけではなく、あくまでも症状が改善されることを目指しています。
他にクリニックの特徴はありますか?
カウンセリングなどにも力を入れていく方針です。精神科・心療内科のクリニックで行うカウンセリングの場合、臨床心理士・公認心理士の資格を持つ方たちが行うことが多いですし、当院もそのアプローチを支持しますが、同時に、病院以外で働いてきた経験を豊富に持つカウンセラーの方たちにも担当をお願いすることがあります。特に仕事関係が原因となった精神疾患には社会や仕事の環境のことを十分に理解した上で、患者さんと話し合いができるカウンセラーの存在も大切だと当院では思っています。
こころの健康管理の手段としてクリニックを活用
「こころの調和」という言葉を大切にされているようですが、今の時代の精神疾患についてどう思いますか?
今の時代、社会や会社組織も複雑になり、個人が処理しなければいけない情報量も増えて、それを消化しきる前に次々と成果を求められていきます。そこには多くのストレスがかかりますが、ほとんどの人はそれでも頑張り続けようとします。ただ、個人差はありますが人のこころはそれほど強いわけではないと思っています。精神疾患の症状が重くなる前に対応していくのが大切だと考えています。クリニックの診察は個室ですし、医師には守秘義務もあります。そして、医師と患者さんの関係には個人的な利害関係があるわけではありません。そうした心理的安全性が確保されている環境で、患者さんが覚え始めている違和感(諸症状)を吐露することが、こころの深くにあるサインを知ることにつながると思います。ですから、まずは違和感を覚えた時、気軽に受診をされることで良いと思っています。
来院される方へのメッセージをお願いします。
精神科・心療内科が求められている役割も大きく変わってきていると思います。忙しい時代、忙しい人たちのために、精神科医もしっかりと学び、治療のためのアプローチを工夫し続けることが大切だと思っています。精神医学は万能ではありませんが、それでもこころの不調和を改善することの一助にはなると信じています。精神科・心療内科・メンタルクリニックのドアをくぐることに抵抗を覚える方も多いかもしれませんが、今の時代は気軽に来院されるくらいで良いと思っています。体の健康管理のために食事、運動、睡眠などに気を遣われるのと同様、こころの健康管理のためにクリニックに相談するといった気持とともに来院頂ければと思います。