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身体・精神発達遅延のリスクも
採血なしで始める乳幼児の貧血治療

0歳からのこどもクリニック

(横浜市戸塚区/戸塚駅)

最終更新日:2023/06/30

0歳からのこどもクリニック 身体・精神発達遅延のリスクも 採血なしで始める乳幼児の貧血治療 0歳からのこどもクリニック 身体・精神発達遅延のリスクも 採血なしで始める乳幼児の貧血治療
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赤みを帯びた肌を持つ赤ちゃんだが、実は貧血状態にある子も多いことをご存じだろうか。「母体から受け継いだ鉄分も尽き、食事からの鉄分補給もまだ十分には行えない生後半年から1歳前後の赤ちゃんでは、2〜3割が貧血状態にあります」と話すのは、横浜市戸塚区で「0歳からのこどもクリニック」を運営する坂井みのり院長。いまだその実態が十分に知られているとはいえない乳幼児の貧血について、早期発見と継続的な治療に取り組んでいる。赤ちゃんにバランスの良い食事を取らせることの難しさを身をもって体験した育児経験から、無理なく続く方法をチーム一丸となって模索してくれるという。長く放置してしまうことで脳の中枢神経に作用し、身体・精神発達に影響を及ぼしてしまうリスクもあるという乳幼児の貧血について、詳しく話を聞いた。

(取材日2023年1月20日)

身体・精神発達遅延にもつながる乳幼児の貧血は、生後6ヵ月前後から急増

Q貧血は赤ちゃんでも起こるのですね。
A
0歳からのこどもクリニック 赤ちゃんの貧血の状態について丁寧に説明

▲赤ちゃんの貧血の状態について丁寧に説明

赤ちゃんは生まれる直前3ヵ月ほどの間に、母体から鉄分を受け取ります。その後、栄養補給が母乳やミルク中心から離乳食へと移行する時期、だいたい生後6ヵ月あたりから血液中のヘモグロビン値が低い、いわゆる貧血の状態となる赤ちゃんが増えてきます。誕生前に母体から受け取った鉄分の貯金が尽きてしまうことが大きな原因です。ミルクを飲んでいる赤ちゃんでもこの時期に貧血は起こるのですが、特に母乳栄養の赤ちゃんの場合は、母乳の鉄分含有量が少ないため、離乳食でしっかり鉄分を摂ることができないと鉄分不足になりやすいのです。こうした離乳期の鉄欠乏貧血のリスクは1歳頃まで特に高いことが知られています。

Q赤ちゃんの貧血はあまり知られていないように思います。
A
0歳からのこどもクリニック 「かくれ貧血」も多いという

▲「かくれ貧血」も多いという

母体からの鉄分は出生予定日近くに赤ちゃんに移行することから、早産の赤ちゃんは乳児期に貧血に陥ることは珍しくなく、NICUなどでは当たり前に対応しています。しかし、早産ではない赤ちゃんはそもそも採血する機会がなく、貧血なのに見つけられていない「かくれ貧血」が多いのです。胃腸炎などの急性疾患で受診した赤ちゃんに対して採血を行うと、ヘモグロビン値が低いと気づくことはよくあります。とはいえ、急性疾患の治療が優先となり、貧血への対応は後回しになってしまいます。生後6ヵ月から1歳では2〜3割程度、その後1歳を過ぎると少し割合が減りますが、5歳では10人に1人が貧血状態にあるというデータもあります。

Q早期に見つけられなかった場合のリスクを教えてください。
A
0歳からのこどもクリニック 回避したい、長期の貧血状態について語る坂井院長

▲回避したい、長期の貧血状態について語る坂井院長

一般に顔色の悪さや生気のなさなどが貧血の症状とされますが、赤ちゃんの場合はそうした症状から貧血が見つかることは多くありません。しかし、鉄欠乏状態が長く続くと、脳の中枢神経に影響があり、神経伝達物質の生成が低下することで、神経発達や知的機能に遅れが生じる可能性が指摘されています。もの覚えが悪くなったり、落ち着きのなさとなって現れたりするのです。そもそも日本人は赤ちゃんに限らず全世代で鉄分が不足傾向にあります。そんな中で乳幼児期に長く鉄欠乏の状態を放置してしまうことには、成長、発達面において大きなリスクがあるといえるでしょう。

Q診断方法や治療方法はどのようなものがありますか。
A
0歳からのこどもクリニック 血液検査の結果で診断が可能

▲血液検査の結果で診断が可能

診断は血液検査で行います。血液検査の結果、鉄欠乏性貧血の診断に至った場合、シロップ薬の処方や食生活のアドバイスにより、必要な鉄分を補給できるようにします。鉄分のシロップは少し甘苦いような味で、中には苦手な赤ちゃんもいますので、ビスケットやパウダー、ヨーグルトなど、食にこだわりのある赤ちゃんでも取り入れやすい鉄分添加の食品を紹介することもあります。鉄分は過剰摂取も良くありませんし、他の栄養素も含めてバランスよく食べることが重要。赤ちゃんの時期はただでさえ偏食に悩む親御さんが多いので、管理栄養士とチームとなり、それぞれに合うやり方を一緒に見つけていくことを大切にしています。

Qこちらならではのフォロー体制について教えてください。
A
0歳からのこどもクリニック 健康状態や気になる症状など些細なことでも、まずは相談を

▲健康状態や気になる症状など些細なことでも、まずは相談を

当院では赤ちゃんの体に針を刺すことなく血液中のヘモグロビン値を測定できる機器を導入しており、7ヵ月から5歳の乳幼児健診でいらっしゃるすべてのお子さんにスクリーニング検査を実施しています。この検査で数値が低かったり、母体の貧血が明らかだったりとリスクがあると思われた赤ちゃんには、あらためて血液検査を行い診断します。貧血と診断されれば、シロップ薬の処方と食生活へのアドバイスにより改善をめざします。数値の安定が見られるまで継続的にフォローしていきます。さまざまな情報を提供することにより親御さんの健康リテラシーを向上させ、将来的なリスクを下げることにも取り組んでいます。

ドクターからのメッセージ

坂井 みのり院長

一見健康な赤ちゃんでも、その元気の裏側に密かに貧血を隠し持っているケースはよくあります。鉄欠乏性貧血は、必要な鉄分を補えば改善が見込めます。早く治療すればそれだけ良い状態で成長する時間が長くなります。早めにご相談ください。赤ちゃんの食生活で悩む方は多く、私自身もせっかく用意した離乳食をまったく食べてもらえず悩んだ時期がありました。そんな食事ムラの大きい時期に食事からの鉄分補給を勧められても、実践が難しいことも実体験から理解できます。当院には子育て中のスタッフも多く、赤ちゃんとの生活においての悩みを共有できる環境です。現状の中で無理なくできることを、当院の医療チームと一緒に探していきましょう。

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