中度・重度の歯周病では、溶けた歯の周りの骨の成長を促す歯周組織再生療法などのアプローチも

Q歯周病治療は口腔全体を診て原因にアプローチされるそうですね。

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▲歯周病菌が全身疾患に影響することもあるという

歯周病は歯磨きが上手にできていないことが原因なのですが、当院の歯周病治療では、そもそもなぜ歯磨きができていないかに着目します。磨き方だけではなく、上顎と唇のひだの上唇小帯や歯並び、かぶせ物などの形状が原因で歯ブラシが届かない、もしくはフロスなどの補助器具が使えないというケースもあります。その場合はいくら歯磨きのスキルを上げてもうまく磨けません。そこで、上唇小帯の切除術、歯並びが悪い場合は歯列矯正、歯と歯の間に隙間がなくフロスが通らないかぶせ物をしている場合は補綴治療、というように、磨き残しが起きない口腔環境へと改善を図る必要があります。それが口腔全体を診て根本原因にアプローチする理由です。

Q歯周病が進行している場合、どのような症状が挙げられますか？

A

▲歯周病は軽度のうちに治療を行い、進行を止めることが大切

中度・重度になってくると、歯の周りにある歯槽骨といわれる骨が溶けてなくなります。歯槽骨は歯を支える役割があります。その歯槽骨がなくなると歯が動き始め、「歯が揺れる」といった症状が出てきます。その結果、歯並びが悪くなることから噛み合わせのずれを感じることも。そして、噛み合わせがずれると、これまで当たっていなかった箇所に歯が当たり出すので、痛みを感じるケースもあります。それがひどくなると、「咬合性外傷」といって、歯の亀裂や破折、知覚過敏、詰め物の脱落、かぶせ物のずれなどが生じてきます。歯を支えている周囲の組織にも大きな負荷がかかるため、歯周病の進行が加速しやすくなります。

Q中度から重度の歯周病になった場合の治療法を教えてください。

A

▲治療の過程は画像で確認できる

当院では、抜歯は最終手段のため、まずは歯の温存に努めます。歯茎を開いて、骨の成長を促したり、骨が不足している箇所に人工の骨を補ったりする歯周組織再生療法を講じます。しかし、骨がまったくない所に骨を再生させたり、補ったりすることは難しく、あまりにも重度になると治療ができなくなってしまいますので、少しでも早めの受診が大事です。歯茎が下がって食べ物や冷たいものがしみるといったケースでは、骨を取り戻すための手術ではなく、露出した歯をカバーするための手術を実施。残念ながら歯を失ったとしても、可能な場所は限られてきますがご自身の親知らずを移植する自家歯牙移植という方法もあります。

Qインプラント治療についても詳しく教えていただけますか？

A

▲治療後も定期的なメンテナンスや噛み合わせのチェックをしよう

歯を失った際の選択肢として、ブリッジ、入れ歯、インプラントといった治療が挙げられますが、長い目で見た時にインプラント治療は非常に有用な手段だと思っています。一番は健康な歯を削らずに済むことと、ほかの歯に負担がかからない点。ブリッジは両隣の歯を削って人工歯をかぶせますし、入れ歯も噛む力が弱く、歯茎やほかの歯への負担がかかってしまいます。その点インプラントは単独で機能しますので、ほかの歯への悪影響を及ぼしにくく、天然歯に近い状態で食事を楽しむことが期待できます。ただし、歯周病で骨が溶けている方は骨造成を行うこともあります。かなり重度の状態ではその処置も行えない場合があることもご留意ください。

Q中度・重度の歯周病の場合、診療で重視していることは何ですか？

A

▲マイクロスコープやラバーダムを使用し、細かい部分まで確認する

もちろん結果を出すことが一番大事ではありますが、重要なのはそこに至るまでのプロセスです。歯茎の検査、エックス線、3D画像が撮れる歯科用CTなどを用いて骨の状態を把握した上で立案する治療計画が鍵となります。当院には歯周病以外の分野を専門とする歯科医師も在籍しておりますので、各分野の歯科医師が集結し、さまざまな角度から精査、ディスカッションを行います。そしてその方に最も適した治療法を導き出します。さらに手術が終わった後も、大きな処置をした後、半年ほどかけてその経過をしっかり追います。こうしてその状態維持できるよう、じっくり評価するのです。