長嶺 隆二 院長の独自取材記事
長嶺リウマチ・整形外科クリニック
(福岡市東区/香椎駅)
最終更新日:2023/06/21
JR鹿児島本線・香椎駅直結のビル内に、県内はもちろん全国、海外からも患者が訪れる「長嶺リウマチ・整形外科クリニック」がある。リウマチ疾患、一般整形外科疾患、スポーツ障害の治療や、人工関節置換術、リハビリテーションにも対応する町の身近なクリニックでありながら、専門的な治療も可能で、とりわけリウマチ疾患の治療に力を注いでいる。院長の長嶺隆二先生は患者の治療のみならず、若手医師の教育サポートや、日本人の骨や関節に合った人工関節の開発・研究にも従事するベテランドクター。これまでの知見を生かし、症状に苦しむすべての患者の改善をめざす。「老化は諦めるものではなく、治療できるもの。治療のためには心を若返らせることが一番大切」と語る長嶺院長に、同院の診療について話を聞いた。
(取材日2022年12月13日)
患者にハッピーになってもらうために
医師を志した理由、開業までの経緯を教えてください。
僕は沖縄県石垣島で生まれました。石垣島は離島で田舎。当時は医師が非常に少なかったです。そんな環境で父親が喘息で苦しんでいるのを見て、将来は医師になりたいと思うようになりました。その後、九州大学医学部に進学。当初は内科に行く予定でしたが、整形外科の教授の人工関節手術に衝撃を受け、整形外科の医師を志すようになりました。在学中に人工関節について学ぶためにアメリカに留学。以降、人工関節の手術やリウマチ治療についての講演活動を国や地域を問わず行ってきました。それがご縁で、東京や奄美大島などの他県やマレーシア、台湾といった海外からも患者さんが来られるので、空港や博多駅からアクセスが良く、西鉄貝塚線、JR香椎線も交わる香椎駅なら通いやすいのではと思い、この場所に開業しました。
一般整形外科で多い症例は何ですか? また、治療で大切にしていることも教えてください。
膝、腰、肩、首の痛み、骨折、捻挫などの症状が多く、小さいお子さんからお年寄りまでいらっしゃいます。僕は、患者さんにはハッピーになって帰ってもらいたいので、例えば、長く通われている患者さんは「お嬢さま」「先輩」とお呼びしているんです(笑)。すると患者さんも「もうっ、先生ったら」なんて笑って、笑顔で診療が始まります。子どもの患者さんを診察する時も、クイズを出したりして堅苦しくないようにしています。アメリカに留学した時、日本には医師と患者の間に上下関係があるということに気づいたんです。医師は偉いわけではないので、僕は対等に話ができる関係性を大切にしています。ほかにも、身体年齢や骨年齢の検査結果はファイルに入れて患者さんにお渡しするのですが、その時は何か一言前向きになれるようなメッセージも一緒に入れます。家に帰って結果を見た時、少しでも安心していただけたらいいなと思っています。
スポーツ整形外科にも対応していらっしゃいますね。
僕自身高校時代にサッカーをしていて、足を捻挫した経験があります。それから足の調子がおかしくて、そんな時にスポーツ整形外科の医師に診てもらっていたら、もう少しサッカーがうまくなっていたかなと思うんですよね。スポーツ整形に対応しているクリニックだと、専門の技術・知識で治療を受けられるメリットがあります。治療の中では、患者さんの目標に合わせた情報を提供し、より多くの人がスポーツの技量を上げ、年齢を重ねても続けていけるようにしたいと思っています。例えば、野球のキャッチャーをしていて膝を痛めた患者さんを検査した結果、これ以上キャッチャーを続けるのが難しいと判断した場合は、外野へコンバートする提案をするなど、どうすれば好きなスポーツを続けられるか、力を伸ばしていけるかを考えるようにしています。
人を見て心に寄り添う医療を
先生のご専門はリウマチだそうですね。
若い方でも発症するリウマチは、関節だけでなく全身に炎症が起こる病気です。当院では、各臓器の状態を注意深く観察しながら、薬の処方を行っていきます。また、患者さんのリウマチを治療することはもちろん、僕のもう一つの役割として若い医師への教育活動をしています。その理由は、きちんと関節を診られて、薬のコントロールができるリウマチ治療の専門家が少ないから。そこで、同じリウマチを専門とする医師たちとリウマチのセミナーの資料が閲覧できるサイトを立ち上げました。今はインターネットの発達でどこにいても勉強ができる環境があります。そんな中で若い医師の技術向上に貢献ができれば、病気で苦しむすべての患者さんの役に立てるんじゃないかなと思っています。
診療の際に気をつけていることは?
リウマチだけに限らず、すべての診療において言える話ですが、病気はもちろん、人も必ず見るということを一番大切にしています。例えば、「血液検査の結果がこうだから、この薬を出しておきます」で終わるのではなく、実際に骨や関節を触って診察し、顔を見て心理状態を確認します。手術に関しても、「手術しました。はい終わり」で、術後のリハビリテーションまで関知しないとしたら、それは「人」を見ていないと僕は思います。患者さんの中には30年以上診察している人もいますが、変わらずお互いの信頼関係を積み重ね、患者さんの言うことをよく聞き、病気を治しながら心のサポートをするということを大切にしていますね。
「心のサポート」について詳しくお聞かせください。
人を見るという中で最も大事なのが、患者さんをいかに若くしていくか。日本の現状は3人に1人が65歳。多くのお年寄りを少ない若者で支えています。お年寄りも若者もどちらにもより良い社会をつくっていくには、お年寄りを元気にすることが不可欠だと思っています。不調の改善と合わせ、心を若々しく前向きにすることが重要です。例えば85歳の人が痛みで病院に行くと「年齢だから仕方がない」と言われるんですよ。でも、痛みがあるのは年齢のせいではなく、痛くなる病気にかかっているから。だから痛みを取るには病気を治療する必要がありますし、動けなくなったらリハビリテーションで筋力を鍛える必要がある。それには心が前向きでないといけません。大事なのは心です。医学的にも老化は病気として捉えられている時代。症状だけを診るのではなく、人を見て心に寄り添う。それが僕のめざす医療です。
より良く年齢を重ねるために、医療ができること
スタッフとのコミュニケーションで心がけていることは?
「チーム長嶺クリニック」として、チームで治療に取り組んでいます。先ほどお話しした診療で大切にしていることにも通じるのですが、院長だから偉いというのは間違いで、僕はキャプテンなだけなんですよ。キャプテン1人じゃサッカーはできない、すべての人がチームとしてワンフォーオール、オールフォーワンじゃないとやっていけないと思っています。各部門のスタッフがチームとして何ができるか、いかに患者さんを満足させて元気にできるか、みんなの意見を聞いて良いものはどんどん実行していきます。今、リハビリテーションスタッフがリハビリテーションと運動を兼ねたオリジナルダンスを考えてくれているんですよ。これも近々患者さんに紹介できたらなと思っています。
今後の展望を教えてください。
沖縄ではゆっくりおしゃべりしながら集う、中休みできるような場所を「ゆんたくする場所」というのですが、院内もそんな場所にしたいと思っています。病院らしい病院ではなく、見ると気持ちが明るくなるような展示をしたり、症状に関する情報をまとめた資料を自由に持ち帰れるように準備したり。バリアフリー環境であることはもちろん、その先の居心地を大切にしています。院内以外での活動では、人種や文化に合った治療法、正しい知識を広めていきたいという思いがあるので、このクリニックを拠点に、いろいろな場所に病院を開いたり、提携したりと各地でより良い治療ができるように動いていきたいですね。
体や健康のことで悩んでいる人たちにメッセージをお願いします。
僕は、痛みや違和感などの問題を抱えている人に「もう年だから仕方ないよ」とは言いません。加齢と老化は違います。加齢は数字の積み重ね。でも老化は心と体の状態が大きく作用し、それによって起きるさまざまな不具合は、医療で改善が図れるものなんです。だから年齢は関係ない。症状を和らげる良い方法はきっとあるので、どうすればより良い状況に持っていけるか、前向きに生きる気力につなげていけるか、それを見つけて一緒に頑張っていきましょう。「頑張ってください」と一方的なお願いではなく、患者さんと一緒に頑張りたいんです。