睡眠時無呼吸症候群は心疾患の一因
どんなときに何科へ行くべき?
川崎宮前平とくえ内科循環器内科クリニック
(川崎市宮前区/宮前平駅)
最終更新日:2022/07/20
- 保険診療
本人が気づかないところで発症し、毎日の睡眠を阻害する睡眠時無呼吸症候群。睡眠の質の低下は脳だけでなく心臓も疲弊させ、悪化すると不整脈や心不全の合併、さらに狭心症や脳卒中のリスク上昇につながるといわれている。しかし、こうした心疾患と睡眠時無呼吸症候群の関連性は、世間一般的には十分に普及していない。そこで啓発に努めつつ、専門知識を生かして診療に取り組んでいるのが「川崎宮前平とくえ内科循環器内科クリニック」の徳江政英院長。大学病院などで長年研鑽し、現在は開業医として、睡眠時無呼吸症候群がもたらす疾患の連鎖を早期に断ち切りたいと考えているそうだ。そこで徳江院長に、睡眠時無呼吸症候群に注意が必要な人や適切な受診先、具体的な治療法などについて聞いた。
(取材日2022年6月23日)
目次
早期発見のためには血圧が高い時点での検査が重要。適切な眠りのメンテナンスで心臓に優しい生活へ
- Q睡眠時無呼吸症候群の概要と、罹患しやすい人を教えてください。
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A
睡眠時無呼吸症候群とは、就寝時に気道が閉塞または狭窄することにより、血中の酸素濃度が繰り返し低下してしまう病気です。特に、舌の根元が気道に落ち込みやすい骨格をしているアジア人に多いといわれています。アジア人の中でも顎が小さい人や舌が大きい人、扁桃腺が腫れている人などはリスクが高いといえますね。生活習慣的な要因としては、肥満が無呼吸状態を引き起こすケースがあります。近年はコロナ禍で在宅ワークが普及し、それに伴い体重が増えて首の周りがむくみがちです。そのような人は、就寝中に足にたまった血液が心臓に戻ってきたときに首が絞めつけられ、気道が狭くなったり閉塞したりする恐れがあります。
- Q治療せずに放置すると、どのようなリスクがありますか?
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A
高血圧症から始まり、放置すると心臓に負担がかかって不整脈に発展する場合があります。不整脈も放置した場合は心筋梗塞や狭心症のリスクが高まりますが、これらには遺伝や体質などの要因も複合的に絡んできます。血圧が高いだけの段階では無症状の場合もあるため、多くの人は無視しがち。しかし、不整脈になって初めて心臓の病気を認識し、治療に取り組む印象がありますね。実際、不整脈の患者さんの半分には睡眠時無呼吸症候群が見つかるといわれています。睡眠医療に10年携わった経験上、高血圧症の先には不整脈があります。そのため、開業医は血圧が高い方に不整脈になる前に介入し、睡眠時無呼吸症候群の検査を行うべきだと考えています。
- Q睡眠時無呼吸症候群の疑いがある場合、何科を受診すべきですか?
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A
頭痛や眠気などの症状がある方は、睡眠専門のクリニックや耳鼻咽喉科が良いですね。耳鼻咽喉科では鼻や喉の通りを診れますし、扁桃腺が腫れているお子さんの場合は、無呼吸かどうかの診察もできます。さらに睡眠障害であれば、精神科の先生も介入します。多科で睡眠時無呼吸症候群の診療にあたっている状況ですので、症状がある場合はまずかかりつけ医にご相談ください。一方、無症状であるもののベッドパートナーにいびきを指摘されるケースにおいては、血圧の薬を3種類以上飲んでいる方に受診を強くお勧めします。薬が増えている理由は血圧のコントロール不良であり、そのような方の8割は睡眠時無呼吸症候群であるといわれているためです。
- Q治療法にはどのようなものがありますか?
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A
軽症の場合はマウスピースで顎を固定して気道を確保する方法や、減量・禁煙などの生活習慣の改善を行います。中等症から重症の場合は、マスクから空気を送り込み、その圧で気道を確保するためのCPAPがスタンダードです。マスクを4時間装着し続けていただきたいのですが、煩わしさから無意識に外してしまう場合もあります。そのため、必要な方には睡眠薬も補助的に使用します。また、CPAPを使えない人への代替治療として、舌下神経電気刺激療法が今後発展する可能性があります。これは体内に装置を埋め込み、呼吸が弱いときや舌根が気道に落ち込みそうなときに舌下神経を電気で刺激する方法です。
- QCPAPは装着をやめたら元に戻ってしまうのでしょうか?
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A
眼鏡と同じで、CPAPも装着をやめたら戻ります。中には、数日使わなくてもいびきをかかずに静かに眠れる方もおりますが、大半の方には該当しません。私は説明の際「CPAPは眠りのメンテナンス」とお伝えしています。お肌のメンテナンスを「いつまで続ければ良いのだろう」と疑問に思わず毎日行うのと同じで、必要な人は睡眠もケアしなければならないのです。CPAPは治療というより習慣ですので、こちらからも病気に対する考え方をアドバイスしたいと思います。マスクは購入も可能ですが、交換が必須な消耗品であり、患者さんに合うか否かも実際に使用しないとわかりませんので、基本的にはレンタルで対応しています。