慢性腎臓病の早期発見のために
eGFRに注目を
はたなかクリニック
(堺市西区/富木駅)
最終更新日:2024/05/09


- 保険診療
テレビCMなどで耳にする機会が増えた「eGFR(推算糸球体濾過量)」。この数値は、血液検査で得た情報をもとに腎臓機能を数値化したものだ。しかし、この数値を読み解き、腎臓病への危機感を募らせている人はそう多くないだろう。大阪府堺市にある「はたなかクリニック」の畑中雅喜院長は、そんな現状を受けて腎臓病の啓発に取り組む腎臓内科が専門の医師。これまで透析治療に苦労する多くの患者を見てきた経験から、慢性腎臓病の予防に情熱を注いでいる。透析治療が必要となる「慢性腎臓病」とはどんな病気か? 予防するためには何が必要なのか? 改めて畑中院長に解説してもらった。
(取材日2023年12月2日)
目次
eGFR59以下と尿の異常を確認したら、早めに腎臓内科の受診を
- Q慢性腎臓病とはどのような病気ですか?
-
A
▲日本腎臓学会腎臓専門医・日本透析医学会透析専門医の院長
腎臓は背中側の左右にある小さな二つの臓器で、身体中を巡る血液から不要物を取り除き、不要なものを尿として体外に排出するろ過装置のような働きをしています。同時に血圧や水分、ミネラルの調整など、体全体のバランスを整える役割も果たしています。慢性腎臓病は、腎疾患や糖尿病、慢性腎炎、高血圧などを原因として、腎臓の機能が低下し十分な働きができなくなった状態を指します。初期は自覚症状がないまま進行し、やがて慢性腎不全になって透析治療が必要になることも。また、循環器疾患の原因にもなりかねません。最近では成人の約8人に1人が腎臓病にかかるともいわれており、新たな国民病として注目が集まっています。
- Q健康診断ではどのような数値に注意すべきですか?
-
A
▲わかりやすい説明で患者に寄り添う
健康診断で注目してほしいのは、血清クレアチニン値です。クレアチニンは体内にできる老廃物の一つで、腎機能に異常があれば対外に排出されなくなるため数値が上がります。この数値に異常があれば、体に老廃物がたまっているということ。注意して確認しましょう。次に、このクレアチニンを用いて計算するeGFR(推算糸球体濾過量)に注目します。これは腎臓機能の働きを数値化したもので、正常な場合を100として、腎機能の働きがどれくらい保たれているかがわかります。例えばこの数値が80であれば、腎機能が80%まで落ちているということになります。尿検査を受けていれば、尿たんぱくなどの異常がないかも注目すると良いでしょう。
- Qどんなタイミングで受診したら良いですか?
-
A
▲専門的な視点から適したアドバイスを行う
eGFRの数値が59以下の場合には、速やかに腎臓内科を受診してください。また、尿検査で異常が見つかったときにも受診が必要です。特に尿たんぱくや尿潜血が認められた時は、腎臓機能に異常が起きている可能性があります。痛みや違和感がなかったとしても受診して再検査を受けていただきたいです。さらに糖尿病や高血圧など、生活習慣病があれば、専門家のアドバイスのもと食生活をはじめとする生活習慣の改善に取り組んでほしいと思います。腎臓は働き者の臓器で、かなり悪くなるまでわかりやすいサインを出しません。初期なら改善が望めますが、ある程度まで機能が低下すると改善は困難です。自分のために、早めの受診を心がけましょう。
- Q慢性腎臓病を防ぐために、何を心がけたら良いでしょうか。
-
A
▲無理をせず一つ一つ改善することが大事だと話す院長
慢性腎臓病を未然に防ぐためには、食生活や生活習慣に注意することが大切です。塩分・脂質の取りすぎに注意してバランスよく食べ、適度な水分補給と排泄を心がけましょう。適度な運動やストレスの解消、質の良い睡眠も大切。お酒は適量を心がけ、できれば禁煙を。どれも特別なことではなく、一般的に言われる「健康に良いこと」ですが、結局はこれらを心がけるのが一番です。また高血圧や糖尿病、脂質異常などの生活習慣病がある場合は、定期的に診察を受けてしっかりと管理していくことも大切です。身についた習慣を変えるのは、誰にとっても大変なこと。無理をしたら続けられないので、まずは自分にできることから始めましょう。
- Qこのクリニックではどのような治療が受けられるのでしょうか。
-
A
▲一人ひとりに合った医療を提供する
私は腎臓内科を専門として研鑽を積み、病院で腎臓病患者さんを担当してきました。これまでに得た知識と経験を生かして、腎臓機能の低下を防ぎ、透析治療の予防に努めたいと考えています。適切な薬物治療を行うことはもちろんですが、在籍する管理栄養士とともに食生活の改善にも積極的に取り組んでいます。また、病気に関することや生活改善に役立つことをフリーペーパーとして配布し、正しい情報の提供にも努めています。透析が必要な患者さんへは腹膜透析も実施していますので、気軽に相談してください。いずれにせよ、腎臓病の治療は患者さんと手を取りながら進めていくもの。患者のライフスタイルを大切に、寄り添った医療を提供したいです。