波多野 和樹 院長の独自取材記事
はたのクリニック
(小牧市/小牧原駅)
最終更新日:2025/06/27

過疎地の病院で多くの大切なことを学んだという「はたのクリニック」の波多野和樹院長は、「病気だけでなく患者さんを診たい」という想いを抱いて2022年4月に開業した。当初は、一人で外来や内視鏡検査を行っていたが、かかりつけ医としてさまざまな年齢層の患者を幅広く診療していくために、医師やスタッフを増員。2025年の4月からは、通常クリニックでアイドルタイムとなっているような13時から16時も診療を受けつけている。「何科を受診していいのかわからないと困っている患者さんも、きちんと診療につなげたい」と穏やかに話す波多野院長。開業以来、めざす医療の形へと着々と進化を遂げているクリニックの診療内容について話を聞いた。
(取材日2025年5月22日)
大切なのは、病気だけでなくその人自身を診ること
医師を志したきっかけをお聞かせください。

幼い頃に通っていたクリニックの先生が、とても頼りになる存在だったんです。「なんでも診てあげるよ」と優しく接してくださって、困ったら何とかしてくれる、そんなイメージでした。本格的に医師をめざしたのは高校生の時。身内に医療関係者はいませんでしたが、家族もとても喜んでくれたので、高校卒業後は藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)に進学しました。先ほどの先生のような「地域を支えるかかりつけ医になりたい」と思っていたものの、やりたいことが漠然としていて進路は最後まで迷っていましたね。当時、指導を受けて親睦が深かった教授が同大学病院のリハビリテーション科医師だったこともあり、まずは同科に入局しました。リハビリはほぼすべての診療科に関係して、例えば誤嚥性肺炎の場合なら、幅広い疾患に対応しながらいかに誤嚥しないようにするかを考えます。リハビリテーション科の経験で、医師として幅広い知見が必要だと教わりました。
消化器内科を専門としたのはなぜですか?
大学病院から長野県飯田市にある輝山会記念病院に赴任したのですが、これが私の大きな転期でした。とにかくこの病院の医療に感銘を受けたんです。この病院では、患者さんが「先生に会いに来ている」という感じだったんです。先生たちも患者さんのことを本当に細かく覚えていて、患者さんもうれしいだろうなと思いました。先生方はとても感謝されていましたし、その姿に憧れを抱きましたね。飯田市はいわゆる過疎地域で、医師の数が少なかったんです。そのため、幅広くいろいろなことをしなければいけなかったのですが、「僕がやりたかったのはこれだ!」と思いましたね。開業したいというのを相談したら、本当にいろいろなアドバイスもいただきました。内視鏡治療も、この病院で数多く経験させていただいたんです。治療のことから患者さんとの関わり方まで、本当に多くを学びました。
内視鏡検査に注力されているとか。

当院は健診に力を入れていますが、中でも胃内視鏡検査・大腸内視鏡検査は重要な位置づけですね。大腸内視鏡検査では、AI技術が病変の発見をサポートしてくれる先進機器を使用しています。これは、検査のためというよりは「患者さんの安心のため」に導入した意味合いが大きいですね。実は、自分の若さは強みだと思う一方、患者さんにとっては不安要素かもしれないと感じているんです。自分の診断にはもちろん自信を持っていますし、AIの有無で結果が左右されることはありません。ただ、私以外の客観的な見解があることで、患者さんがより安心・納得できるのではないかと考えました。また、日々進歩しているこのような医療技術を、患者さんに還元したいという思いも強いです。内視鏡検査に抵抗がある人は多いとは思いますが、健診を受けられる機会を積極的に利用して、ぜひご自身の体の状態を知っていただきたいですね。
医師やスタッフ増員で、診療にゆとりと幅が生まれた
院長がお一人で診療していた開業当初から比べて、医師やスタッフさんが増えましたね。

総合内科や呼吸器内科、循環器内科、泌尿器科、感染症内科、救急科など、基幹病院勤務の先生方が非常勤で手伝ってくれています。同じ内科系の診療分野でも、各専門の医師が診療することによって、大きな病院へ紹介したほうがいいのかどうかの判断やどういった検査をするべきかなど、細かい部分が精査できます。患者さんにとっても、大きな病院の受診というのは負担でしょう。開業当初から検査体制はしっかり整えていたので、医師を増員して患者さんの負担を少しでも減らせるよう、当院で対応できることはしていきたいと考えました。地域のかかりつけ医としていろいろな症状の患者さんに対応するには、幅広い診療が必要になってきます。私にとっても、基幹病院で新しい治療を実践している先生方から得られる知識は貴重ですし、患者さんにも先進の治療を還元できるので、各スペシャリティーの先生が診療に加わっていることは心強いですね。
スタッフ増員で具体的にどんな変化がありましたか?
一人で診療していた時は、13時から16時までの時間は内視鏡検査に充てていたので外来診療はお休みでしたが、スタッフの増員で診療時間も増やすことができました。それまでは私が検査に入ってしまうと、外来が滞ってしまうというジレンマがあったのですが、時間に余裕ができたので、予約の患者さんもスムーズに、そして急患が入っても診ることができています。13時から16時という時間帯は、通常のクリニックではお休みのところが多いのですが、子どもの習い事の送迎があるお母さん、自営業の方などがよく来院されていますね。おかげで、外来や検査などの混雑も少しずつ緩和されてきました。
スタッフさんが多いと患者さんへの対応もより行き届きそうですね。

患者さんに良い医療を提供するためには、スタッフの労働環境も大切です。診療時間を延ばしたことで昼休憩が短くならないよう、きちんとシフトを組んでローテーションをしています。自分が優しくしてもらえない環境で人に優しくすることはできません。スタッフが気持ち良く働けるからこそ、患者さんに快適な治療を提供できる。スタッフが「ここで働き続けたいな」と感じられるようなクリニックにすることで、患者さんに心地の良い医療を提供できるようになると考えています。
「何科へ行けばわからない」も相談できるクリニックに
先進の医療機器も導入されていますね。

CTがあると、予想外の病変が見つかる可能性があります。病気の早期発見にもつながりますし、より丁寧に患者さんの体を診ることができます。先にお話しした長野の病院で、たいへんお世話になった放射線科の先生がいらっしゃるんです。とても高度な知識・経験をお持ちで、技術の精度が高いだけでなく、「この所見があるから、内科的にこういう疾患を疑うのはどうか」など、深いレベルの診断をされるんです。その先生を見て「開業するなら、このレベルの画像診断を患者さんに提供したい」と強く思うようになりました。開業にあたり、その先生とは「遠隔画像診断」というかたちで連携し、当院の患者さんのCT画像を診断してもらっています。信頼できる放射線科の先生と連携を取りながら、精度の高さにこだわった検査を患者さんに提供し続けていきたいですね。
今後の展望について伺います。
11月からは糖尿病内科を専門とする医師がまた1人増えて合計8人の医師で、チーム医療を進めていきます。めざすのは、大きな病院と地域のクリニックの中間ぐらいの中規模クリニック。気になる症状があった時、地域のクリニックでも検査や専門の医師の診察ができて一通り完結できるようにしていきたいのです。基幹病院の精密検査が必要なのか、当院の専門の医師のもとでの通院で様子を見ることができるのかを振り分け、基幹病院での検査後の経過観察もしていきます。当院のコンセプトは、「何科を受診したらいいのかわからない患者さんを適切な医療につなげる」ということ。今後も、患者さんの負担を少しでも減らせるような体制をめざします。
最後にメッセージをお願いします。

「何科に行けばいいのかわからない」という方は、迷わずにまずはご来院ください。「何科に行くか」は患者さんが悩むことではないと思っています。その先どうするかを考えるのは医師の役目。当院には、幅広い視点で診療を行う総合内科専門の医師が在籍していますし、さまざまな診療分野を専門とする医師がいますので連携して「患者さんにとって最善の方法」をお探しします。また、患者さんにはどんなことでも気軽に話してほしいです。患者さんの背景を深く理解した上で診療することを、ずっと大切にしていきたいですね。