不妊治療は保険診療で受けられる時代に
制度の仕組みを詳しく解説
桂駅前 Mihara Clinic
(京都市西京区/桂駅)
最終更新日:2025/05/27


- 保険診療
かつては費用的な負担が大きかった不妊治療。少子化対策の一環として2022年4月から公的医療保険の適用が拡大されたことで、「桂駅前 Mihara Clinic」の北宅弘太郎院長は「不妊治療に取り組むカップルは増えていると思います」と印象を語る。大学院時代から不妊症の研究に携わり、同クリニックの本院である「身原病院」と連携しながら不妊治療に注力する北宅院長。不妊治療では女性の年齢が治療の成果を大きく左右するため、「年齢など科学的な根拠に基づいた治療が保険診療で受けられる現状は、世界的に見ても素晴らしいことです」と話し、「桂駅前 Mihara Clinic」ではさまざまなケースにも対応できるよう、幅広い治療選択肢を備える。そこで保険制度や費用面を中心に、不妊治療の現状を北宅院長に説明してもらった。
(取材日2025年3月24日)
目次
保険適用が拡大した不妊治療。年齢や治療回数の規定を知り、ライフプランと相談しながら治療を考えて
- Q不妊治療が保険診療の適用になる条件を教えてください。
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A
▲北宅弘太郎院長。不妊治療の経験が豊富なスペシャリスト
不妊治療の保険診療としては、一般不妊治療であるタイミング療法や人工授精のほか、生殖補助医療である体外受精、顕微授精、採卵、胚凍結保存、胚移植、また採精など男性不妊手術も保険適用範囲に含まれます。ただ保険適用になる条件として、治療開始時点で女性の年齢が43歳未満であること、適用回数は女性が40歳未満であれば子ども1人に対して通算6回まで、40~43歳未満の場合は通算3回までと決まっています。また保険診療でも回数を重ねると費用負担が気になりますが、不妊治療は高額療養費制度の対象になっていますし、さまざまな助成金制度を設けている自治体もあります。事実婚のカップルの不妊治療も、保険適用になります。
- Qでは、自費診療に当てはまるのはどのような場合ですか?
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A
▲どこまで治療を望むかをしっかりと考えることが大切
女性の年齢が43歳以上の場合や、43歳未満でも規定回数の上限を超えた不妊治療は自費診療になります。保険診療には制約があり、保険診療と自費診療を同時に行う混合診療は不妊治療でも認められていません。ただ先進医療は評価療養として定められており、自費診療ですが保険診療との併用が認められています。なお2024年6月から保険診療で行う体外受精の精子凍結保存が選定療養となり、保険と併用して自費診療として受けられるようになりました。男性が仕事などで採卵当日に精子を提出できない場合、事前に凍結しておいた精子を使うことができます。その他一部の先進医療には例外が認められているものもあるので、医師に確認してください。
- Q保険診療と自費診療で、治療の成果に違いはありますか?
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A
▲保険診療と自費診療の特性について説明する北宅院長
不妊治療の成果では、年齢が大きな要因になります。不妊治療が保険診療になる以前は、かなり高齢の方も自費診療で体外受精などに取り組んでいました。しかし保険診療では43歳未満という期限が設けられたこともあり、現在は43歳未満で治療を始める方が増えています。このような背景から、保険診療と自費診療の成果をシンプルに比較することは難しいですし、保険診療の成績は向上していると感じています。ただ、年齢や治療回数のために保険診療の適用にならない方でも、自費診療で治療を続けることはできます。自費診療があることで、患者さんの要望や希望に応じて治療の幅を広げることができます。
- Q保険診療で不妊治療を行うデメリットはないのでしょうか。
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A
▲不妊治療の専門家によるカウンセリングも
ほかの領域での自費診療には「質の高い材料や技術で高い成果が期待できる」というイメージがあるかもしれません。しかし今の不妊治療での自費診療は、基本的に「保険診療が適用されない方のための治療」と考えてもらえればよいと思います。先進医療などを除けば、「同じ内容の治療が保険適用になるか自己負担になるか」ということです。ですから、年齢や治療回数が該当すれば保険診療で不妊治療を始めることが一般的ですし、実際に今は保険診療で不妊治療をされている方がかなり多いです。ですのでデメリットはないといえるでしょうし、逆に保険診療を利用して、多くの方が治療に適した年齢を逃すことなく、妊娠をめざしてほしいと思います。
- Q費用面では、どの程度の違いがあるのか気になります。
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A
▲地域によって使用できる制度もある。納得してから治療の開始を
一般的には自費診療が10割負担であるのに対して、その方が加入している保険にもよりますが、保険診療は3割負担になることが多いです。単純に見れば、自費診療での金額は保険診療の約3.3倍といえるかもしれません。ですが年齢やそのほかの要因で使う薬剤や技術は異なりますし、保険診療では費用面でも細かな規定があります。詳しくは、ぜひ医師にご相談ください。最近では、保険診療の自己負担分、保険適用の制限回数を超えた治療費、通院交通費等に対して独自の助成制度を設ける自治体がありますので、お住まいの自治体(都道府県と市町村)を調べてみてください。また不妊治療に対するニーズが高まれば、適用範囲の拡大も期待できます。