保険適用が拡大した不妊治療
その範囲や条件、自由診療との違いは
桂駅前 Mihara Clinic
(京都市西京区/桂駅)
最終更新日:2024/08/29


- 保険診療
2022年4月から公的医療保険の適応が拡大された不妊治療。費用面でも取り組みやすい環境が整ってきたことで、治療を検討している人もいるだろう。とはいえ、自分自身が適用条件に含まれるのかよくわからないというカップルも少なくないようだ。「世界保健機関(WHO)をはじめとする医師の専門家団体が、不妊症は病気の一つであると定めています。ほかの病気と同じように、子どもを希望するなら早めに検査や治療を受けていただきたいですね」と穏やかに話すのは、京都の産婦人科病院「身原病院」の分院「桂駅前 Mihara Clinic」の北宅弘太郎(きたや・こうたろう)院長。大学院時代から不妊症に携わってきた不妊治療のスペシャリストだ。そこで今回は北宅院長に適用範囲が広がった不妊治療について話を聞かせてもらった。
(取材日2024年4月15日)
目次
年齢や治療回数に制限がある不妊治療の保険適用。受診のタイミングを逃さぬよう、まずは二人で確認を
- Q不妊治療はどこまでが保険適用の範囲となりますか?
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A
▲北宅弘太郎院長。不妊治療に長く携わってきたスペシャリスト
一般不妊治療であるタイミング療法や人工授精のほか、生殖補助医療である体外受精、顕微授精、男性不妊手術も保険適用の範囲内です。これまでは特定の検査や排卵誘発法などの治療法のみに健康保険が適用されていました。ですが、それ以外の治療法には保険が適用されず、不妊治療をするには高額な費用がかかるというのが一般的でした。そのため、子どもを望むカップルにとって大きな経済的負担となり、子どもを諦める原因の一つとなっていました。そこで、2022年より経済的な負担軽減と、出生率の増加を期待して、不妊治療の保険適用の拡大がスタートしました。これまで諦めていたカップルも治療に踏み切るのではと期待されています。
- Q年齢や回数など、保険適用になる条件はあるのでしょうか?
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A
▲どこまでの治療を望むかをしっかりと考えることが大切
あります。年齢は治療開始時点で女性の年齢が42歳以下であること。適用回数は女性が39歳以下の場合は子ども一人に対して最大6回まで、40歳~42歳以下の場合は最大3回までです。保険診療とはいえ、何度も治療を重ねると経済的負担は結局大きくなってしまうのではと不安に思う人もいるでしょう。不妊治療は高額療養費制度の対象でもあるので、さらなる経済的負担の軽減が見込めます。また事実婚のカップルでも保険適用は認められています。一方で、保険適用外となる治療もあります。例えば、先進医療も原則認められておらず、保険診療と併用する自由診療となります。
- Qどんな場合は自由診療ですか? 保険診療だけでもできますか?
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A
▲相談する際は加入している保険制度の確認もしておくと安心
ご年齢が43歳以上の女性や、保険診療の上限回数を上回る治療回数に達した方は自由診療になります。このように保険診療では治療する上でのさまざまな制限があります。不妊治療でも保険診療中に自由診療も行う混合診療は認められていませんから、制限を越えた治療を希望する場合にはすべて自由診療となります。ただし、先進医療の中には一部例外が認められているケースもありますので、詳しくは医師に確認してください。もちろん女性が42歳以下ならば、保険診療内だけの治療で進めていくことは可能です。まずは保険診療内でスタートし、その後どこまでの治療を望むかはパートナーと考えておくようにしましょう。
- Q自由診療になると、やはり妊娠しやすいのでしょうか?
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A
▲治療を始める際には患者が納得するまで説明を行う
そうとも言い切れません。確かに、女性の加齢とともに不妊治療の成績は下がっていくことが証明されています。妊娠を焦る気持ちはわかりますが、そもそも不妊治療の保険適用が拡大したのは、少子化対策のためです。不妊治療の保険適用要件の中に年齢や回数の制限を設けているのは、その数字に根拠があってのこと。いうなれば、この年齢でこの回数までなら十分に妊娠の可能性が期待できると予測されているということです。経済的負担も大きくなりますし、まずは保険診療内でスタートすることをお勧めしています。
- Q保険診療と自由診療とで、どのくらい費用が変わるのでしょうか?
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A
▲不安なことがあれば気軽に相談を
その方の加入されている保険にもよりますが、一般的な保険診療は3割負担で、自由診療は10割負担ですから、単純に計算しても高くなると考えられるでしょう。また自治体独自の助成を行っているところもあります。治療を始める前に、保険適用の治療と併用できるかどうか、どのような治療で助成があるのか、お住まいの自治体の制度を一度確認してみると良いですね。保険適用の範囲が拡大したことで、40代、30代だけでなく、20代のカップルでも挑戦してみようという人は増えています。もっとニーズが高まれば、適用範囲もさらに拡大することが予測されます。多くの人が出産に対して前向きに検討しやすくなればいいですね。