心不全や脳卒中のリスクも
ガイドラインに沿った高血圧治療
川村内科ハートクリニック
(岐阜市/西岐阜駅)
最終更新日:2023/01/17


生活習慣の偏りによって引き起こされる高血圧症。身近な名前の病気だが、ほとんどの場合自覚症状がないため、自分が高血圧だと気づかない人や、知っていても治療に前向きに取り組まない人も少なくない。しかし高血圧を放置すると、心臓や脳の血管にも悪影響を与え、命を縮める病気の原因にもなりかねない。「川村内科ハートクリニック」の川村一太院長は、長年循環器内科の医師として、心不全などの患者と向き合ってきた。命に関わる心不全や脳卒中にならないためには、血圧の管理が非常に重要だ。そこで川村院長に、高血圧の実態やその健康リスク、さらに治療の進め方について話を聞いた。
(取材日2022年3月14日)
目次
適切な薬の調整で高血圧症をコントロールし、健康リスクを軽減させていく
- Q高血圧症とは、どんな疾患ですか?
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A
▲高血圧症はその多さから国民病ともいわれる病気である
診察室での血圧が140/90mmHg以上、または家庭血圧が135/85mmHgを超える場合を高血圧症と言いますが、75歳未満の方や糖尿病などの病気を合併している方は血圧の目標値がより厳しく設定されています。多くの場合は塩分の取り過ぎや運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣が原因ですが、ホルモンの分泌異常や睡眠時無呼吸症候群などが原因の二次性高血圧もあり、詳しく調べる必要があるかもしれません。高血圧症は痛みや違和感といった自覚症状がほとんどないため、治療せず放置してしまいがちです。また、途中で通院をやめてしまったり、薬をしっかり内服しないなど、きちんと治療を継続しない人も少なくありません。
- Q高血圧症を治療しないと、どんなリスクがありますか?
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A
▲心エコーで精密検査を行う場合も
高血圧の状態が続くと血管が硬くなって動脈硬化が進み、心筋梗塞や心不全といった循環器疾患、さらに脳卒中など命に関わる病気が引き起こされる恐れがあります。こうしたリスクにもかかわらず、すべての人がきちんと治療に取り組んでいるわけではありません。一説には日本にいる高血圧症患者のうち、治療によって適切に血圧のコントロールを行っている方はわずか30%といわれています。治療しているもののコントロールが不十分な方、自分が高血圧と気がついていない方もそれぞれ30%、残りの10%は高血圧と認識しながらも放置しているといわれています。まずは自分の血圧を把握し、血圧が高めであれば医療機関を受診することが重要です。
- Q心不全や循環器疾患とは、どんな病気ですか?
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A
▲院長の川村先生は日本循環器学会循環器専門医
心不全は、さまざまな心臓病が原因で心臓が悪くなり、息切れがしたり、肺に水がたまったり、足がむくんだり(浮腫)することがあります。さらに病状が進行すると入退院を繰り返し、全身状態も悪くなって活動度も低下し、徐々に寿命を縮めてしまいます。心不全の原因となる心臓病には心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症、不整脈など数多くありますが、多くの疾患において高血圧が関係しています。心不全の治療はいかに状態を悪化させずに保てるかが重要で、そのためにはきめ細かな薬の調節や心臓リハビリテーションなどの非薬物治療など、多面的な管理が必要です。
- Qこちらではどのように高血圧症の治療を進めていきますか?
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A
▲生活背景も考慮し診察を行っている
まずは治療の必要性を丁寧に説明し、ご自分の体の状態と将来のリスクについて理解していただきます。同時にそれぞれの患者さんの年齢や併存疾患などを踏まえて血圧の目標値を定め、ガイドラインに沿って適切な薬を処方していくようにしています。長年高血圧の治療をしていてもなかなか血圧が下がらない患者さんの場合、その方の現在の病状に薬の内容が合っていない可能性があります。そういった場合にも、専門的な知見を生かして適した処方を考えていきます。高血圧の治療では生活習慣の改善も重要ですので、当院では岐阜ハートセンターなどと連携して、管理栄養士による栄養指導を受けていただくことも可能です。