体のバランスや健康にも影響
股関節疾患は専門家の診断と治療を
はしもと整形外科リハビリクリニック
(西宮市/西宮駅)
最終更新日:2022/12/02
- 保険診療
股関節は人の体の中で最も大きい関節構造で、体重を支えながら、体を動かす起点となっている。周辺の靱帯や筋肉とも協調し合って働くため、股関節に疾患が起きると、途端に日常生活のさまざまな動作がつらくなってしまうのだ。変形性股関節症や寛骨臼形成不全(かんこつきゅうけいせいふぜん)などがよく知られるが、それ以外にも「股関節や体幹から体の不調につながる疾患は多いです」と話すのが、「はしもと整形外科リハビリクリニック」の橋本慎吾院長。肩凝りや腰痛、膝痛なども、実は股関節機能と関わっていることも多いそうだ。シンスプリントや椎間板ヘルニア、外反母趾なども幅広く診療している橋本院長に、股関節の専門家が行う治療方法やリハビリテーションについてじっくりと聞いた。
(取材日2021年10月13日)
目次
まずは股関節の痛みの根本をしっかり把握し、保存療法やリハビリテーションを駆使してQOLの向上をめざす
- Q股関節の疾患が全身に及ぼす影響について教えてください。
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A
股関節に痛みがあると骨盤が動きにくく、腰の動きが制限されます。すると背中の動きが小さくなり、肩も上がりづらくなって肩が凝り、肘にも痛みが波及します。このように痛みや不具合が広がるのは、股関節が体幹の中心となる大きな関節だからです。そこが動かないとほかの関節で代用しようとするため、すぐ近くの膝や背骨に負荷がかかるのです。日本人の股関節疾患で特に多いのは変形性股関節症です。これは中高年以降に増加し、加齢によって骨が変形して痛みが出ます。また、欧米人に比べ骨盤が小さく骨の被覆が浅いため、寛骨臼形成不全になる人も多いです。スポーツなどの同じ動作の繰り返しで疲労骨折や軟骨損傷を起こすこともあります。
- Q股関節疾患を専門とするドクターに診てもらうメリットは?
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A
私の場合は、画像診断で特に異常が見つからなかった場合も「安静にしておきましょう」では終わらせず、きっちりと診断をして理由づけをします。お子さんに多い大腿骨頭すべり症やペルテス病は、すぐに治療に移らないといけない疾患ですから、疑いがある場合は股関節疾患に詳しい医師に診てもらいましょう。また、10代後半ぐらいから始まる寛骨臼形成不全や股関節インピンジメントも最初の診断が肝心で、寛骨臼形成不全の場合は、早期に人工関節にならないよう、適切なリハビリや必要に応じて手術まで導いてあげることが重要です。治療方法や選択肢、手術の時期も、その方の生活や状況に合った提案ができることが専門家の強みだと考えています。
- Q股関節疾患にはどんな治療法があるのでしょうか?
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A
私はスポーツ選手たちの体のケアを行う、チームドクターをしていた経験があります。その時に心がけていたのは、基本的に手術は確実に選手生命を延ばせる、あるいはレベルアップできると判断した時で、そうでなければフィールドに戻れる状態になるまで、できるだけ注射や筋膜リリース、リハビリテーションなどをメインに行っていました。これは一般の整形外科疾患の患者さんを診察する場合も同じです。変形性関節症などの関節障害や頸椎、腰椎のヘルニアにもリハビリテーションは有用ですし、体のバランス調整を行うためにインソールを作製したり、漢方を処方したりと、当院では手術のほかにさまざまな保存的アプローチもご提案しています。
- Qインソールとはどのようなものですか?
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A
靴の中敷きです。お子さんの足の痛みは「成長痛」で片づけられがちですが、状態をつぶさに診ていくと足のバランスを崩す原因が見えてくるので、それをカバーするためにインソールを活用しています。お子さんの成長痛以外にも、扁平足やシンスプリント、オスグッド病、一般的に多いO脚やX脚、外反母趾のほか、関節変形症や膝関節症、スポーツ障害など幅広い症状に用いることができ、当院でもこだわりを持ってインソールの提供に取り組んでいます。まず私が診断をつけて専門の義肢装具士に来てもらい、症状や用途に合わせたインソールの作製。すぐに希望されない方には、足底のアーチを支えるテーピング方法を理学療法士がアドバイスしています。
- Qこちらで行っているリハビリテーションの特徴は?
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A
当院ではお子さんからご高齢の方まで、一人ひとりに合わせたリハビリテーションを行っています。まずは痛みを取ることを目標に、痛みの根本をしっかりと捉えていきます。単に除痛をめざすのであれば注射や飲み薬、何なら「安静にしていてください」と言うだけで済みますが、単なる痛みへのアプローチにとどまらず、生活指導と自宅でもできるエクササイズ指導を理学療法士が行っています。当院では週に1度、私と理学療法士、看護師が集まり、リハビリカンファレンスを開いています。状態の改善が芳しくない人や経過をシェアしたい人に関しては、みんなで画像を見ながら情報共有を行っています。