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河村 武人 院長の独自取材記事

みどりの森メンタルクリニック成城

(世田谷区/成城学園前駅)

最終更新日:2022/11/15

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城 main

成城学園前駅から徒歩約2分の医療ビル4階にあるのが、「みどりの森メンタルクリニック成城」だ。東海大学医学部付属病院精神科や丹沢病院で、軽症患者から入院を必要とする重症の患者まで、さまざまな心の病に悩む患者の診療にあたってきたという河村武人院長は、それらの経験を生かしながら、地域のクリニックだからこそできる一人ひとりの心に寄り添った診療を実践したいと2021年7月に開業。特に、精神的な理由で会社に行けなくなった人たちの社会復帰をサポートすることを大きな目標としているという。そんな河村院長に、クリニック開業の思いや診療の特徴などについて話を聞いた。

(取材日2022年9月14日)

精神的な理由で休職した人の社会復帰をサポートしたい

先生は、どのような思いでこのクリニックを開業したのでしょうか?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城1

最近では、これまで普通に働いていた人が、何らかの精神的トラブルによって会社に行けなくなった、あるいは、もう会社に行きたくないなどと悩んでいる人がとても増えています。特に都心部では、第一線で活躍していた人が仕事ができなくなるほど精神的に追い詰められているケースも多いと思います。私は、そういった心の病によって困っている方々がもう一度、社会に復帰できるようサポートしたいと思い開業しました。これまで、東海大学医学部付属病院や丹沢病院などの精神科で、外来や入院患者の診療を行ってきました。さまざまな患者さんと向き合う中で、最も重要なのは、患者さんとしっかり対話をすることだと感じています。心の悩みは、単に薬だけで解決するわけではありません。薬も大切ですが、その多くは対症療法に過ぎません。当クリニックでは患者さんとじっくりとお話をしていきながら、それぞれの症状に即した診療を行っていきたいと思っています。

会社に行けなくなってしまう、その原因はどんなことにあるとお考えですか?

大きな要因は、仕事量と人間関係にあると考えます。仕事量には個人の事務処理能力が、人間関係には本人の性格特性が影響します。一人ひとりの能力の内実には凸凹があり、それはその人の特性でもあるのです。例えば、外からの情報処理について、目からの情報処理が得意な人もいれば、耳からの情報処理が得意な人もいます。しかし、他人は凹凸の高い能力の部分でその人を判断することが多く、低い部分を見つけると怠慢だと非難してしまいがちです。環境適応のためには、自身の事務処理能力の特性について理解し、その上で対処方法を知ることが重要です。また、本人の性格も要因の一つといえるでしょう。性格特性は、さまざまな欲求への強弱、不安耐性の高さ、人との距離感の取り方、疑い深さの程度、攻撃性などたくさんの側面があります。ストレス時に、相手や環境のせいにする他責的な性格か、自分が悪いと考えてしまう自責的な性格なのかも関係してきます。

患者さんが自分の特性を理解するために心理検査を行っていると伺いました。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城2

当クリニックでは、臨床心理士が心理検査を行い、その人の特性、言い換えれば一人ひとりの心の癖を理解し、それぞれに即したオーダーメイドの治療を行っています。心理検査には、人格検査や知能検査などいろいろな検査がありますが、私が重視しているのがWAIS-IV(ウェクスラー成人知能検査)と呼ばれる知能検査と、MMPI(ミネソタ多面的人格目録性格検査)という人格特徴の検査です。WAIS-IVには10個の基本検査があり、結果は言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度の4つの指標で表され、そこから総合的なIQも算出されます。この検査によって4つの能力にどのようなばらつきがあるかがわかります。MMPIでは550の質問があり、マークシートで答えます。この検査は本人の性格特性を多面的に測定していくもので、初診でいきなり実施するのではなく、必要なタイミングで行っています。

一人ひとりの特性に沿ったきめ細かなフィードバックを

検査によって、具体的にどのようなことがわかるのですか?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城3

これらの2つの検査で、事務処理能力的な部分と性格がわかります。私は、この両方を組み合わせて患者さんを診ることが大切で、それで初めて人の心がある程度わかるのだと考えています。そして、仕事や社会生活は人と人との関わりですから、人間関係を円滑にするには、知的能力が仕事で求められる水準を満たさなくてもうまくいかないですし、心の部分で問題がある人もうまくいきません。ですから、まずは自分の能力や心の癖を理解して、周囲に認めてもらうことが重要です。当院では、これらの検査からわかったことをオリジナルの図にしてまとめたものを「あなたの取扱説明書」トリセツとして提示し、説明させていただきます。

結果はどのように診療に生かしておられるのでしょうか?

心理検査によって明らかになった事務処理能力や心の癖を理解した上で、臨床心理士と一緒に、患者さんが円滑に社会生活を送るためのアドバイスをしています。例えば、AからB、BからCと関連づけして3つのことを行う場面。知覚推理が苦手な人は、AからBで止まってしまい、次のBからCができないことがあります。その場合、「Bが終わった段階で、次は何をすれば良いですかと周りに質問しましょう」とアドバイスしています。教えてもらえれば、問題なく次に進めるのです。また、目からの情報処理が得意な人には、耳から入ってくる情報をメモして目の情報に変換することを勧めています。一人ひとりで対処方法が異なりますので、個人に合わせた治療方法を考えていきます。ここで勘違いしてほしくないのは、薬の治療も大切なこと。心理検査やアドバイスだけで解決できるというのは間違いで、これらと薬はあくまで自転車の両輪のようなものだと思っています。

診療の際に心がけていることは何ですか?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城4

自動販売機のような機械的な診療は、決してしないと心に決めています。短時間の診察で薬だけ出して終わりということはせず、患者さんとの対話を大切にしています。患者さんがなぜそのような状態になったのか。背負っているものは何なのか。その方のバックグラウンドまでよく理解した上で診察するよう努めていて、初診には30分以上、再診では10分程度かけて患者さんとお話しするようにしています。クリニックは、患者さんが心の奥にたまった膿(うみ)を吐き出す場所だと思います。最初は話しにくいと思いますので、できるだけ話しやすい雰囲気づくりにも配慮しています。時間をかけて話をしていく中で信頼関係を築いて、患者さんがどんな心の膿でも心置きなく吐き出せるクリニックになれればと思っています。

何かおかしいと思ったら早めに受診を

どんなときに受診すると良いのでしょうか?

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城5

仕事に行きたくない。会社に行こうと思うと吐き気がする。夜眠れない。食事が喉を通らないなど、ちょっとおかしいなと感じたら早めに受診してください。これらの症状は表面に現れたもので、その下に何があるのかを掘り下げることが大切です。脳が長くストレスにさらされ続けると神経がそれだけダメージを深め回復機能が失われてしまいますので、早めの受診をお勧めします。

先生はなぜ医師をめざしたのですか?

若い頃、長期にわたり体調を崩したことがありました。その時、たまたまかかった病院の医師に処方してもらった薬が自分に合っていたんです。その医師にとても感謝しましたが、治療を継続するうちに機械的な診療になり、疑問も感じ始めました。そんな体験から、自分が医師となって、患者さんの話を親身に聞いてあげられる診療を行いたいと考えるようになったことがきっかけです。そして、私が得意とする「人の話をじっくり聞く」ことを生かしながら、一人ひとりの患者さんに合った診療を一緒に考えていけるのを魅力に感じて、精神科を志しました。

では最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。

河村武人院長 みどりの森メンタルクリニック成城6

精神的な理由で社会から離れてしまった方々を社会復帰させたい。一人ひとりの心の癖を理解してサポートしていきたい。それが、私の働くエネルギーです。いつもと少し違う、心が弱っていると感じたら、抱え込まずに、気軽に当クリニックにいらしてください。精神科に行くことがまず1つ目のハードルだと思いますが、どうしたら良いか悩んでいる場合は、お電話でお問い合わせいただいても大丈夫です。当院のスタッフ一同が、患者さんの力になりたいという気持ちで対応をさせていただいています。心の癖を整理して、少しでも早く社会に戻れるようお役に立ちたいと思っています。

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