適切な診断に必要な精密検査を受け
50代から骨粗しょう症ケアを
西尾久リウマチ整形外科
(荒川区/荒川車庫前駅)
最終更新日:2024/03/19
- 保険診療
骨粗しょう症の原因となる骨密度の低下は、早ければ40代後半から始まり、50代以降は加速度的に悪化するとされる。病気が進行すると、ちょっとした転倒やつまずきで骨折し、要介護の状態につながるケースも少なくない。地域の健康増進に力を入れる「西尾久リウマチ整形外科」の王興栄院長は、「骨粗しょう症は40代、50代でも静かに進んでいますが、この年代から適切なケアや治療を続ければ、進行を防ぐことがめざせるのです」と話す。ただ適切な診断には、血液検査やDEXA(デキサ)法という骨密度の精密検査などを総合して行う必要があり、王院長は「簡易的な検査では正しい骨密度が得られず、適した治療ができていない可能性も考えられます」と注意を促す。そこで、骨粗しょう症の早期発見に重要な検査やケアについて王院長に詳しく聞いた。
(取材日2023年1月26日)
目次
女性は50代から、男性も糖尿病や腎臓病があれば骨密度低下に注意。年1回は骨粗しょう症検査を
- Q骨粗しょう症検査の必要性や受け始める時期を教えてください。
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A
一般的に骨密度は50代から急速に低下し、男性に比べて骨量が少ない女性はそれが顕著です。男性も糖尿病や腎臓病がある方は注意が必要でしょう。自覚症状はありませんが、定期検査で骨密度の状態を確認できれば、必要に応じて食事や日常生活の改善、薬による治療で骨粗しょう症の進行を防ぐことがめざせます。骨密度低下が懸念される50代から年1回は骨粗しょう症の検査を受け、以後も続けていただきたいです。女性の場合、閉経によるホルモンバランスの変化で骨密度が低下することに加え、閉経前に卵巣や子宮の摘出を受けた方、抗がん剤による治療を受けている方などは、骨密度の低下が早まる可能性があるため、検査も早めに受けてください。
- Q骨粗しょう症の検査をしないと、どんなリスクがありますか?
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A
気づかないうちに骨粗しょう症が進行して、骨の強度が大幅に低下し、ちょっとした転倒、つまずきのほか、くしゃみなどの衝撃や自分の体の重みで骨折する可能性が高まります。骨折が起きやすいのは背骨や脚の付け根、手首などで、日常生活にもさまざまな影響が出てきます。例えば、体の重みで背骨に圧迫骨折が起こると背中や腰が曲がり、周囲の骨にも負担がかかります。脚の付け根を骨折すると歩行が難しくなり、治療する間に足の筋力が衰えて、そのまま寝たきり、要介護の状態になるケースも少なくありません。骨粗しょう症の検査をして、早めに予防することは寝たきりや要介護を防ぐことにもつながるのです。
- Qこちらのクリニックで行う検査について教えてください。
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A
骨粗しょう症の検査は、問診、画像診断、骨代謝マーカー検査も含む血液・尿検査、骨密度検査などを総合して行います。骨密度検査は、かかと部分から超音波で検査するQUS法、手のひらをエックス線で検査するMD法、特殊なエックス線診断装置を使うDEXA法の3種類があり、当院ではより精密とされるDEXA法を用いて行っています。日本骨粗鬆症学会のガイドラインでも、背骨の腰に近い部分と脚の付け根の2ヵ所で検査をするDEXA法が推奨されていて、適切な検査ができないと治療法の選択も誤ってしまう可能性があるため、私は検査精度は非常に重要だと思います。ただ、DEXA法は妊娠中の方は検査できない点は注意が必要です。
- Q骨粗しょう症にはどのような治療法があるのでしょうか?
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A
当院では薬での治療を中心に、食事指導や運動指導を組み合わせます。薬は症状などに応じて選ぶ必要がありますが、例えば骨を壊す細胞の働きを抑える目的のビスホスホネート製剤、骨を作る細胞を活性化させる目的の副甲状腺ホルモン製剤、カルシウムの吸収を促すビタミンD・ビタミンK製剤、不足しがちな栄養素を補うカルシウム製剤などはよく用います。骨密度の維持に欠かせないカルシウムは、骨粗しょう症の患者さんは食事で取る分と合わせて1日1000mgの摂取が望ましいとされ、予防には700〜800mg程度は摂取すべきとされています。また、骨は適度な刺激で強くなるので、無理のない範囲で生活に運動を取り入れることも大切です。
- Q生活面ではどのような点に注意するといいでしょうか。
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A
バランスの取れた食生活を心がけ、骨の生成に欠かせないカルシウムやビタミンD、ビタミンKを積極的に摂取するようにしましょう。こうした成分を多く含む乳製品や小魚、納豆などがお勧めです。スナック菓子やインスタント食品を頻繁に食べることや、アルコール、カフェインの多飲、喫煙は避けましょう。ウォーキングなど骨に適度な負荷をかける運動もいいですね。また、カルシウムの吸収を助けるビタミンDは、紫外線を浴びることにより体内でも生成されます。美容を意識して過度な紫外線対策を行うことは避け、適度な日光浴でビタミンDの生成を促す生活習慣を取り入れてください。