不妊治療の保険適用が拡大
適用には年齢と胚移植の回数に制限も
日浅レディースクリニック
(福岡市中央区/赤坂駅)
最終更新日:2023/02/08
- 保険診療
高額な費用がかかるといわれていた不妊治療が2022年4月より保険適用となった。これまで子どもを希望しながらも、経済的な理由で治療を断念していた患者は多い。それだけに、受診を踏みとどまっていた人々の背中を押していることだろう。「日浅レディースクリニック」の日浅佳奈院長も「20代、30代の方の来院が増えました」と患者層の変化を実感する一人。とはいえ、無条件ですべての治療が保険適用されるわけではなく、治療法や年齢、回数に条件があるという。これから安心して不妊治療を受けるためには、どのような場合に保険が適用されるのかを知っておくことが重要な鍵に。適用となる時期を逃さないでほしいと切に願う日浅院長に、不妊治療の保険適用条件や受診するタイミングなど、一歩踏み込んだ話を聞いた。
(取材日2022年12月19日)
目次
不妊治療の保険適用には年齢や回数に制限があるため、受診のタイミングを逃すことのないよう計画を
- Q不妊治療が2022年4月より保険適用となりましたね。
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A
これまでの不妊治療では、子宮内膜症や子宮筋腫といった不妊症の原因を調べる検査とその治療のみが保険適用でした。2022年4月からは人工授精、体外受精、顕微授精も保険適用になり、ずいぶんと治療へのハードルが低くなったといえるでしょう。しかし保険診療と自由診療の併用は基本的には認められておらず、保険診療中に自由診療を併用する場合はすべてが自由診療扱いで10割負担となります。例外的に先進医療として厚生労働省が認めた医療技術に限り、保険診療との併用が可能です。また、1ヵ月の医療費の自己負担限度額を超えた場合は高額療養費制度も適用されます。こうした制度を正しく理解して治療を受けることが重要です。
- Qそれぞれどのような治療なのか教えてください。
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A
まず人工授精については、女性の排卵期に合わせて採精したパートナーの精子を子宮内に注入する方法です。受精して、子宮内膜に着床するまでの経過は自然妊娠と変わりません。体への負担が少ない方法だといえるでしょう。人工授精での治療が6周期を超えると、受精やその後の過程での問題が考えられるほか、精子の所見が人工授精では難しいケースもありますので、その場合は体外受精へステップアップします。これは、採取した卵子と精子を体外で受精させ胚盤胞まで培養して凍結し、その後の移植周期で子宮に胚移植する方法。精子の数や運動率に問題がある場合は、運動が良好な1つの精子を針で直接卵子内へ注入する顕微授精を選択します。
- Q不妊治療の保険適用には何か条件があるのでしょうか。
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A
人工授精は年齢や回数に制限はないのですが、体外受精になると治療開始の時点で女性が43歳未満であることが条件。しかも、40歳未満の場合は子ども1人に対して胚移植できるのが6回まで、40歳から43歳未満では3回までとされています。つまり、治療開始時期が39歳と40歳ではチャレンジできる回数が大きく変わるため、まさに時間との勝負。妊娠や不妊治療を希望されているすべての方に適用されるわけではないことをご存じない方もいますので、そこはしっかりとお伝えしたいです。保険適用になったことで気持ちに余裕ができた方もいらっしゃるかと思いますが、時間に限りがあることを心にとどめておいていただきたいですね。
- Q受診のタイミングについて教えてください。
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A
福岡市はAMH(抗ミュラー管ホルモン)といって卵巣に残っている原子卵胞数を調べる検査が500円で受けられるクーポンを30歳の女性に配布しています。通常は5000円前後かかる検査なので、結婚や妊娠希望の有無を問わず、ご自身の体を知るために受けていただきたいです。万が一、自分の数値が低いとなったときに、今後の人生設計を考えるきっかけになると思うんですね。特に何も症状がない場合は婦人科に行く機会がないと思うので、クーポンを機にかかりつけ医を見つけていただきたいです。また、婦人科疾患をお持ちの方や35歳を過ぎて結婚された方は不妊治療の保険適用条件もありますので、早めに受診されてください。
- Qこちらではどのような流れで治療を進めていますか?
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A
初診、検査、治療という流れの中で、不妊症の検査は月経の周期に合わせて行うため、検査が完了するまでは月に数回の通院が必要になりますが、必ずしも続けて行う必要はなく、お仕事やご家庭の都合に合わせて予定を組みます。また、不妊治療を希望される場合は検査と治療を並行して行うことも可能。40歳を過ぎての体外受精はお時間がかかる場合もあります。年齢や治療内容によっても治療期間が異なりますが、保険適用の条件もありますので、40歳前の治療開始を検討できる体制を心がけています。